【90分で古事記⑥】大国主の出雲神話 因幡の白兎と根之型州国のあらすじ内容を解説!

 
   
 
90分で古事記 6/9回目(約5300字)
古事記上巻のあらすじ内容を9回でご紹介!
大国主神の出雲神話 因幡の白兎 八十神の迫害 根之型州国の訪問
 
今回は 前回のスサノオの時代からかなり時が経過し、 主役はスサノオの6代目の子孫オオナムヂ(後のオオクニヌシ)になります。スサノオとは全く対照的な英雄です。破天荒でパワフルな スサノオに対し、 優しく頭脳解決のオオナムヂ。問題行動と追放を繰り返すスサノオに対し、 いじめられるが愛されるオオナムヂ。このような構図になると思います。
 
兄達にいじめられる「オオナムヂ」が、 根之堅洲国(ねのかたすくに)のスサノオにしごかれ成長し、やがて兄たちを退治するという成功物語になります 「オオクニヌシ」は後にスサノオにもらう名前になります。
 
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〈大国主神(オオクニヌシノカミ)〉

先に大穴牟遅(オオナムヂ=大国主神)について少し説明をしておきます。オオナムヂスサノオクシナダヒメの6代目の子孫になります。彼は後に葦原中国(日本)の「国作り」を完成させ、高天の原(アマテラス)に「国譲り」を行うことになりますが、 当時皇位継承権が認められたのは、皇子の5世代目の子孫までとされており、この6代目という数字が 政治的に重要な意味を持つことになります。
 
 
つまりオオクニヌシはアマテラスの親戚であるのと同時に、 正式な統治権を持たない存在であることも意味します。「国譲り」の正統性と融和を図る、絶妙の人材設定と言えるのかもしれん。次回(国譲り編)に改めて説明しますが、この系譜によって「古事記が何を言いたいのか」を少し意識しておいてください。
 
 

因幡の白兎

 
心優しいオオナムヂが傷ついたウサギを助け、 見事にヤガミヒメをものにするが、ヤソガミの激しい嫉妬と迫害を受け、スサノオの元へと逃れていくお話になります。
各エピソードの後に、 詳しい動画を配置しています。 よろしければご覧になってみてください。
 
 
登場する神様
オオナムヂ(スサノオとクシナダヒメの6代目の子孫)
ヤソガミ(性格の悪いオオナムヂの兄達)
ヤガミヒメ(オオナムヂを選ぶ稲葉の女神)
ウサギ(実は神様です)
 
 
※ ある程度割愛していますが、概ね古事記の原文に沿ったあらすじを載せてあります。
 
 
大穴牟遅(オオナムヂ=後のオオクニヌシ )には大勢の兄神である八十神(ヤソガミ)がいました。
(八十は実数ではなく、大勢のといった意味になるようです。)
 
 
八十神はみな、稲葉に住む八上姫(ヤガミヒメ)に惚れ込み求婚に出かけます。
 
 
大穴牟遅(オオナムヂ)は、兄神達の荷物を背負わされて、従者として最後尾を歩かされました。
(つまり完全に兄達のいいなりです。)
 
 
そこに毛を剥ぎ取られ、痛みに苦しむウサギが現れます。
 
 
八十神たちは兎に「 海水にあたり潮風に当たって伏しなさい」とウソを教えました。
(このヤソガミ相当性格悪いです。)
 
 
言う通りにしたは風で皮膚が破れ、痛みで苦しみ泣いています。
 
 
最後に通りかかったオオナムヂが「 どうして泣いているの?」と聞くと、
 
 
は「和邇(ワニ=サメと解釈されています)の数を数えてあげるから並んでごらん。と騙してワニの上を渡り、隠岐島からこの地へ渡ってきました。しかしあと一歩のところで「お前は騙されたんだよ」とばらしてしまい、最後のワニに毛皮を剥ぎ取られてしまいました。八十神たちが「 海水にあたり潮風に当たって伏しなさい」と教えたので、 教えた通りにすると全身傷だらけになってしまいました。」と言いました。
 (話を聞く限り、この兎も「善」ではないようです。「善」はオオクニヌシだけと思っていいかもしれません。)
 
 
 
オオナムジは「体を淡水で洗い、ガマの穂の花粉を敷き詰め、その上で寝転がれば傷は治るよ」 教えてあげます。
(ガマの穂は古くから血止めの薬として使われており、古代において医療の知識は王の資格とされました。 つまりオオナムヂは王になる資格があると古事記は言いたいようです。)
 
 
教えた通りにすると、ウサギの体は元通り治りました。
 
 
 
実はこのウサギは兎神でした。
 
 
そしてオオナムヂに対し「 ヤソガミは八上比売(ヤガミヒメ)を得られず、あなたが娶ることになるでしょう」と予言します。
(これが予知能力なのか、女性を惚れさせる神通力なのかは分かりません。)
 
 
ヤガミヒメヤソガミに対し「 私はあなた達の言うことは聞きません。オオナムヂの神と結婚します」 と言いました。
(ヤガミヒメは正妻ではありません。 後にスセリビメの嫉妬を恐れて実家に帰ることになります。)
 
 
 
● 因幡の白兎のエピソードをもっと詳しく見てみたい方はこちらの動画をどうぞ。
世界 ミステリーチャンネルさん 5分51秒
動画の方が詳しいですですが、ご覧にならなくてもこの先の理解には支障はありません。
 
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〈因幡の白兎は日本発祥の話ではない?〉

実はこのエピソード、 東南アジアに猿がワニの上を渡るという、似たような伝承がいくつかあります。古代に南国と何らかの交流があったことが伺えますが、 日本にはワニはいないので、 発祥は日本ではないと考えるべきなのかもしれませんね。
 
 

〈因幡の白兎は日本書紀にはない〉

オオナムヂの出雲神話の大きな特徴は、「日本書紀」ではほとんど語られないことです。オオナムヂは後に「国譲り」という形で自らが作った国を失うことになりますが、 「日本書紀」は敗者の歴史には興味がないようです。 逆に言うと「古事記」は、その語る必要のな敗者の歴史を敢えて語っているとも受け取れます。 天皇家に都合のいい話ばかりでないところが、「古事記」の面白いところだと思います。
 
 

八十神の迫害

 
※ここからはわりと割愛したあらすじになります。詳しく知りたい方は動画をご覧になってみて下さい。
 
 
ところがヤガミヒメとの結婚は、オオナムジにとって新たな受難の始まりとなります。
 
 
面白くない兄達はオオナムジの殺害を計画し、本当に2度も殺してしまいます 。
 
 
まず、赤いイノシシを待ち伏せして捕らえろと命じておき、火をつけた岩を転がし落として、焼き殺してしまいます。
 
 
それを知った母神は悲しみ、カミムスヒ(造化三神の偉い神)に頼み生き返らせてもらいます。
 
 
すると八十神は、今度はオオナムヂを大木で挟み殺してしまいます。
 
 
母神がオオナムヂを見つけて生き返らせると、 八十神たちから逃がすため紀国のオオヤビコのもとに向かわせます。
 
 
ところがそこにも八十神たちが弓矢を構えて探しに行きます。
 (いじめを通り越して最初から殺す気です)
 
 
オオヤビコは「根之型州国のスサノオのもとへ行きなさい。 必ず良い考えを与えてくれるから 」と言い、スサノオの元へ向かわせました。
(スサノオはオオナムジの6代前の御先祖になります。)
 
 
●オオナムヂの受けた迫害をさらに詳しく見てみたい方はこちらをどうぞ。
世界ミステリーチャンネルさん 5分44秒
動画の方が詳しいですが、ご覧にならなくても問題はありません。
 
 

〈神様は生き返ることができるの?〉

オオクニヌシは二度生き返っているため、生き返ることが可能なようです。 イザナミは途中で覗かれて失敗したようです。 実はスサノオに殺されたオオゲツヒメも再登場しますが、 生き返ったという記述はありません。
 
 

〈ねのかたすくにとは〉

根之型州国」は古事記には 詳しい場所は記されていません。ただ、たどり着くためには黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)を経由する必要があり、「黄泉の国」と 同一、あるいは異なる「死者の世界」ではないかと考えられているようです。地下世界に存在すると考えられていますが、蛇や蜂、ムカデの他にネズミなども 生息しているため、イザナギが行った「黄泉の国(死者の国)」とは少し印象が違うと思います。
 
「根之型州国」は海原を追放されたスサノオが、亡き母(イザナミ?)に合うために旅立った最終目的地になりますが、オロチを退治し、スガの宮殿でクシナダヒメと過ごした後のスサノオの話は、古事記には一切記載がありません。
 
いつの間にか「根之型州国」の住人となっており、オオナムヂが訪問した時、スサノオは娘のスセリビメとそこで二人で暮らしていたようです。
 
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根之型州国(ねのかたすくに)の訪問

 
 
登場する神様
オオナムヂ(スサノオとクシナダヒメの6代目の子孫)
スサノオ(イザナギの子、三貴神の一人)
スセリビメ(スサノオの娘だがクシナダヒメの子ではない)
 
 
根之型州国にたどり着いたオオナムジは、スサノオの娘の須勢理毘売(スセリビメ)に出会うと恋に落ち、なんとその場で結婚します。
(スサノオより先にスセリビメに出会ってしまったということになります。神様たちの恋愛は一目惚れが多いです。)
 
 
しかし(簡単に認めたくない)スサノオは、次々と試練を与えてオオナムヂを試します。
(スサノオは神様なので歳をとりません。)
 
 
まず最初に、オオナムヂを蛇の這う部屋に寝かせます。
 
 
しかしスセリビメが蛇よけの布を与えたため、オオナムヂは 眠ることができました。
 
 
すると翌日オオナムヂは、ムカデと蜂の部屋に入れられます。
 
 
しかしまたしてもスセリビメが、ムカデと蜂よけの布を与えたため、 無事部屋から出ることができました。
 
 
するとスサノオは、野原に放った鳴鏑(なりかぶら=音の出る矢)をオオナムヂに取りに行かせ、火を放ちます。
(殺すつもりでしょうか…)
 
 
今度ばかりはスセリビメも手が出せず、諦めて涙します。
 
 
しかし「ネズミ」が地下への逃げ道を教えてれたため、無事鳴鏑を持ち帰ることができました。
(オオナムヂはいろんな生き物に助けられ、そして愛される神様です。 ご先祖様とは大違いですよね。)
 
 
スサノオの嫌がらせはまだ続きます。
 
 
今度は自分の頭に住み着いた、ムカデ退治をオオナムヂにやらせます。
(スサノオは頭にムカデが這うほどの巨大な神様ということになりますが、 やり方が相当陰湿です。)
 
 
またもスセリビメの援助で切り抜けると、オオナムヂはいよいよ反撃に出ます。
 
 
スサノオが寝ているうちに髪を柱に縛って動けなくし、彼の弓矢と刀、琴を奪ってスセリビメと「駆け落ち」しました。
(知恵と行動力を身につけたようですね。 でも行き先は多分ヤガミヒメの元……きっと問題が起きることでしょう。)
 
 
駆け落ちに気づいた巨人スサノオは、縛られた柱ごと建物を引き倒して二人の後を追いかけます。
(オロチ退治をしただけあって、相当パワフルな神様です。)
 
 
地上との境である黄泉比良坂(ヨモツヒラサカ)で二柱に追いつき、オオナムジに対して叫びました。
 
 
スサノオ「その刀と弓矢で兄たちを討ち取れ! 娘のスセリビメを正妻として、 大国主神(オオクニヌシノカミ:国の主神)となり、宇都志国玉神(ウツシクニタマノカミ:美しい国の宝)となれ!出雲に壮大な宮殿を建てて君臨しろ!」 
 
 

〈↑つまりどういうこと?〉

わざわざ走って追いついてきたのは、「復讐」をするためではなく、 「アドバイス」をするためだった、ということになります。そして、ようやく結婚を認めてくれたようですね。 ただし正妻であることが条件だぞ、ということです(稲葉のヤガミヒメは正妻ではありません)。さらにオオクニヌシという名前を与え出雲に神殿を立てろという命令を与えたことになります。 これが後の国譲りの際にオオクニヌシが申し出る「神殿の建設」の条件となるようです。 (現在も残る出雲大社のこと)
また、ヤソガミは周辺諸国を暗示しているとも言われ、「兄たち(八十神)を討ち取れ」というのは 国作りの一環として「周辺諸国を平定しろ、 という意味になるのかもしれません。
 
一杯食わされたスサノオですが、むしろその行動力讃えているようです。そしてなんだかんだ言っても、スサノオはオオナムジを 強く行動力のある男に育ててくれたようです。 問題行動の方が圧倒的に多いですが …いいところもありますよね!
以後オオナムヂはオオクニヌシと表記します。
 
これを最後にスサノオの登場はなります。 海原の統治を任されたスサノオですが、 高天の原からも葦原中国からも追放され、現在は根之型州国の住人となっています。 
 
 
 
● スサノオの嫌がらせをさらに詳しく見てみたい方はこちらをどうぞ。
世界ミステリーチャンネルさん6分7秒
こちらも動画の方が詳しいですが、ご覧にならなくても問題はありません。
 
 
次回第7回は大国主の「国作り」と「国譲り」。根之型州国から帰ったオオクニヌシが、ヤソガミを退治し、苦労の末に葦原中国の「国作り」を完成させますが、 直後に高天の原から「国譲り」を迫られます。 出雲大神殿の発見で神話の信憑性が高まっており、 現実との関連が特に注目されているところでもあります。
 
 
 
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