【90分で古事記⑤】 スサノオのヤマタノオロチ退治 あらすじ内容を解説!

90分で古事記 5/9回目(約4500字)
古事記上巻のあらすじと内容を9回でご紹介!
オオゲツヒメの殺害とスサノオのヤマタノオロチ退治
 
 
海原の統治を追放され、根之型州国へ向かうはずだったスサノオは、 報告に立ち寄っただけのはずの高天の原で、 迷惑の限りを尽くして追放されました。
今回は誰もが知る英雄スサノオの「ヤマタノオロチ退治」の物語になります。ですが旅本来の目的は、あくまで(母イザナミ?に合うため)根之型州国へ行くことだということを頭の片隅に置いておいてください。
 
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オオゲツヒメ(穀物の神様)

 
 
 
登場神様
スサノオ(イザナギの子で三貴子の一柱)
オオゲツヒメ(穀物の神様:イザナギとイザナミの子)
カミムスヒ(宇宙で3番目に成った神様で国つ神系)
 
 
高天の原を追放されたスサノオは、大気都比売( オオゲツヒメ:穀物の神様 )に食物を求めます。
 
 
すると彼女は自分の鼻、口、尻から食べ物を取り出し、調理してスサノオに出しました。
 
 
その様子を見たスサノオは、 「汚ない ! 無礼だ!」と激怒し、オオゲツヒメを殺してしまいます。
 (オオゲツヒメは、善意で食べ物を出していると思われます。)
 
 
すると殺された彼女の体から、蚕、稲、粟、小豆、麦、大豆など 大切なものが次々と生まれました。
 
 
 カミムスヒ(別天神の偉い神様)は、 これらを拾い集め「種」として地上に授けました。
 
 

〈恩を仇で返す スサノオ〉

なんともヒドイ話なのですが…これが「五穀の種の起源」になっています。そしてオオゲツヒメの死が、「秩序ある農耕と弥生の始まり」を暗示しているとも言われています。もう一つ、生き物が死んでその死骸から穀物が生まれるという 「ハイヌウェレ神話」を表しているとする説もあります。 現在でも初期形態の農業を行っている地域に残っているそうです。
 
とは言え、どうみてもこれは恩を仇で返しているようにしか見えません。 アマテラスの神殿で糞やゲロを撒き散らして追放されたのは誰だったのですか? そのくせ他人がやると、すぐに文句をつける人、人間でもたまにいますけど…殺しはないでしょう……
イザナギも管理を任す前にきちんと教育すべきです。
 
 
● 古事記のものがたり⑫スサノオの追放
制作はRakinasuchiさん
原文に 忠実ないい動画です。 よろしければ ご覧になってみてください。
 
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ヤマタノオロチ

 
 
主な登場神様
スサノオ(イザナギの子、三貴神の一人)
アシナヅチ(オオヤマツミの子:老人)
テナヅチ(アシナヅチの妻:老婦人)
クシナダヒメ(アシナヅチとテナヅチの娘)
ヤマタノオロチ(八つの頭を持つ巨大な蛇)
 
 
※ある程度割愛していますが、概ね古事記の原文に沿ったあらすじを載せています。
 
 
追放されたスサノオが、出雲の国の斐伊川(ひいがわ)の上流の鳥髪(とりかみ)という所にやってくると、 川から箸が流れてきたので「 人が住んでいる」と思って、上流の探索を始めます
(母親の探索に行く旅ではなかったのですか…?)
 
 
すると、老人夫婦が娘を挟んで泣いているのを発見します。
 
 
 娘は大山津見神(オオヤマツミノカミ:山の神様)の息子の足名椎(アシナヅチ)と妻の手名椎(テナヅチ)の子で、名を櫛名田比売(クシナダヒメ)と言いました。
(3人とも人ではなく神様です。 葦原中国の神様なので「国つ神」になります。)
 
 
スサノオが「なぜ泣いているのだ?」 と理由を聞いてみると、 
 
 
アシナヅチが応えます。「 私には8人の娘がいました 。ところが高志(越国)から八俣大蛇( ヤマタノオロチ)という怪物がやって来て、毎年一人ずつ娘を食べていってしまいました。 そして今がそのヤマタノオロチがやってくる時。 それで泣いているのです。」
 
 
スサノオが「どんな姿をしているのだ?」 と尋ねると、
 
 
アシナヅチが答えます。
「目が赤く、 体が一つで八つの頭に八つの尾、 体には 苔やひのきが生え、 その大きさは八つの谷と八つの尾根にも渡り、 腹には血が滲んでいます。」
(原文通りに受け取るのであれば、東京ドームより大きいと思っていいと思います。)
 
 
スサノオは「私は天照大御神の弟だ。 娘を私にくれないか?」とオロチ退治を申し出ます。
(神様なのに見返りを求めるのですね…しかも追放されたくせにまだ姉の名前を出すとは…)
 
〈アマテラスの名前を出す意味…〉
同じ神様でも天つ神(あまつかみ:高天の原の神)の方が、 国つ神(くにつかみ:葦原中国の神)より格が上とされていますれています。 そして天つ神の最高神がアマテラスになります。 名前を出したい気持ちはわかるのですが… あれだけ迷惑をかけて追放されたのに…いい意味でも悪い意味でも人間らしさを感じる神様です。
 
 
アシナヅチは「 それならば娘を献上いたしましょう」 と承諾しました。
 
 
スサノオは娘を櫛の姿に変え自分の髪にさし「垣根に八つの穴を開け、 穴ごとに酒の桶を配置し、濃い酒を盛って待ちなさい」と言いました。
(あくまで作業は老いたアシナヅチです… 櫛(くし)に変えられるのはもちろん神様だから。割とおしゃれな神様みたいですね。)
 
 
告げられた通りに準備をしていると、予定通りヤマタノオロチがやってきました
 
 
そして酒桶ごとに頭を突っ込み、酒をがぶ飲みし、酔って眠ってしまいす。
(スサノオは知勇兼備の神様に成長したようですね。)
 
 
スサノオが十拳剣(とつかのつるぎ)を抜いて寝ている蛇を切り散らすと、斐伊川が血で染まりました。
(英雄スサノオの最高の見せ場なのですが、古事記の原文ではこれだけしか記載されていません。 ちょっと残念です。)
 
画像出典:ウィキペディア
(こちらはスサノオのヤマタノオロチ退治を描いた絵ですが、古事記の原文とはかなり違う様子で描かれているようです。スサノオは寝ている蛇を切っています。下の動画の方が古事記原文に忠実です。)
 
 
蛇の尾を切った時、スサノオの剣が欠けてしまいました
 
 
怪しいと思って蛇の尾を剣で割いてみると、ツムカリノタチ(稲刈り用の刃物)が現れます。
 
 
不思議に思ったスサノオは、この剣をアマテラスに献上しました。 これが「草薙の剣(くさなぎのけん)」です。
(追放されているのに、また高天の原に行ったみたいです… よっぽどお姉さんのことが好きなのでしょうね。……ところで旅の目的忘れてません?)
 
 

〈 三種の神器が揃った〉

この剣は天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ:後の草薙の剣)と呼ばれ、 後に皇位継承の「三種の神器」の一つとなります。 後にヤマトタケルが使用し、草を薙払ったことから草薙の剣(くさなぎのつるぎ)」と呼ばれるようにもなりました。現在は名古屋の熱田神宮に保管されています。ですが、古事記原文の「ツムカリノタチ」とは「稲刈り用の刃物」を意味するそうです。武器というより農具に近いのかもしれません。言われてみれば倭健(ヤマトタケル)も農具として使っているような気がします。最強の剣として描かれることもありますが 、日本は農耕民族です。 この剣に強さを求めるべきではないのかもしれませんね。
この段階で 初めて「三種の神器」が揃ったことになります。日本人なら一度は聞いたことありますよね。
 
逆にオロチ退治にスサノオが使用した剣は、 古事記には十拳剣(こぶし10個分の長さの剣の意味)としか記述がありませんが、後に天ノ羽々斬(あめのははぎり)と呼ばれ、 現在は石上神宮に祀られています。
 
 

日本最初の和歌の意味

 
スサノオ出雲須賀という地にクシナダヒメと暮らす宮殿を建て歌を詠みました。
 
 
「 八雲立つ 出雲八重垣 妻籠みに 
八重垣作る その八重垣を」
 
 (やくもたつ いずもやえがき つまごみに
やえがきつくる  そのやえがきを)
 
(意味)
八重の雲が沸き立つ出雲に 
八重の垣根を
妻を籠らせておくために作る
その八重の垣根よ
 
 
(スガに豪邸?出雲永住?母親を探しに根之型州国へ行く旅ではなかったのですか??結局母より女…ですか?)
 
 

〈母を訪ねる旅ではなかったの??〉

紀貫之(キノツラユキ)によると、この歌が日本最初の和歌になるそうです。日本で最初に和歌を詠んだのは、人ではなく神様だったのですね。
 
ですがこれは…母親探しを止めて出雲に女を囲むハーレムを作るってことですか??
どう贔屓してみても、母よりも女を選んだ歌に聞こえるのですが…
日本最初の和歌って…そういう意味だったのですか…?
 
この神様、勝利するとどこまでも調子に乗るタイプみたいですね……糞を撒き散らしたり豪邸を建設したり……確かに人間らしいとは思いますが……本来の旅の目的」はどうなったのですか?
 
古事記によると、この後アシナヅチがこの宮殿の責任者に任命されています。
妻を囲むためのこの八重垣作りは、またきっと老いたアシナヅチの仕事になるのしょう…
その姿を想像するとちょっと心が痛いです…
 
 
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● 古事記のものがたり⑬⑭⑮⑯⑰スサノオのヤマタノオロチ退治
 
 
 
 
制作はRakinasuchiさん
原文に忠実なとてもいい動画です。 動画の方がイメージしやすいと思います。 よろしければご覧になってみてください。
Rakinasuchiさんの動画はこれで最後になります。
 
 

 〈ヤマタノオロチは斐伊川のこと?〉

斐伊川(ひいがわ)は 曲がりくねった支流をいくつも持ち、 氾濫をしては人々を飲み込んだそうです。また出雲は鉄の産地であり、斐伊川も鉄分で赤く濁るそうです。 当時の人にはこの川が、血に染まった大蛇のように思えたのかもしれませんね。鉄の産地ならば、名剣(天叢雲剣)の産出も納得です。
 
 
 
スサノオを中心とした物語はここまでになります。次回第6回目からは、彼とクシナダヒメの6代目の子孫であるオオナムヂ(=オオクニヌシ)が主役となっていきます。そのオオナムヂに合うまでのスサノオの話は古事記には一切なく、突然「根之型州国(ねのかたすくに)」の住人として登場します。
 
そもそも海原を追放された「スサノオの旅本来の目的」は、「亡き母親に会いに行くこと」だったはずです。 その他の物語は、言ってみれば全て寄り道です。ところが根之型州国へ向かう気配はまったくなく、話はどんどん関係ない方向へどんどんズレていきます。 その結果、日本最初の和歌が「母親探しをやめた歌」に聞こえます。最終的に母(そもそも古事記ではイザナミは母親ではありません)に会うことができたのか? その様子が語られることも 一切ありません。 全てがうやむやなまま終わってしまいます。 どこまでも生殺しな物語です。神話には矛盾がつきものですが、スサノオの物語はちょっとひどい……国家が威信をかけて取り組んだ事業なのですから…もう少し丁寧に編纂していただきたかったです……
 
 
 
 
〈おすすめ書籍〉
古事記は漫画から入るのが一番です。難解な字ずらだけを追っかけても、なかなかイメージが湧きません。里中美智子さんの漫画が原文に忠実で、かつ分かりやすくてオススメです。
 
 
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