【90分で古事記④】アマテラスとスサノオ 天岩屋戸 あらすじ内容を解説!

 
90分で古事記 4/9回目(約5000字)
古事記上巻のあらすじと内容を9回でご紹介!
アマテラスとスサノオ 天岩屋戸
 
黄泉の国から帰ったイザナギのみそぎにより最も尊い神、アマテラス、ツクヨミ、スサノオが誕生しました。
今回は、海原の統治から追放され、根之型州国(ねのかたすくに)へと向かうはずのスサノオが、 なぜか高天の原(たかまのはら)に寄り道をし、迷惑の限りを尽くしてアマテラスが天岩屋戸(あまのいわやと)に引きこもってしまうというお話です。 
 
あらすじと対応する動画を交互に配置してあります。古事記の原文に忠実ないい動画ですので、 よろしければご覧になってみてください。
 
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天照大御神と須佐之男命 スサノオの追放

 
写真出典:ウイキペディア
 
登場神様
イザナギ(日本の国土と多くの神々を生んだ神様で親神はなし)
スサノオ(イザナギの子で海原の統治を任されている)
 
 
※ある程度割愛していますが、古事記の原文に沿ったあらすじをのせています。
 
 
海原の統治を任されたスサノオでしたが、 髭が伸びるほどの大人になっても、スサノオは 泣き喚いてばかりで国を治めようとしません。
 
 
あまりに激しく泣くので、青山は枯れ、河海は干上がり、悪神が満ち溢れました。 
 
 
イザナギが「 なぜ国を治めず泣いているのだ?」と尋ねると
 
 
スサノオは「亡き母の国である根之型州国(ねのかたすくに)へ行きたいのです。」と言います。
(少し重要なので覚えておいてください。 スサノオの旅の目的の話です。)
 
 
怒ったイザナギは「 それならば、この国から出て行け!」とスサノオ追放します。
(これを最後にイザナギの登場はなくなります。)
 
 
 
● 古事記のものがたり⑥スサノオの追放
製作者 :Rakinasuchiさん
原文に忠実ないい動画です。よろしければ ご覧になってみてください。
 
 

〈スサノオの旅の目的とは? どこに誰に会いに行くの?〉

スサノオはイザナギが禊(みそぎ)により単独で生み出した神なので、イザナミの子ではない(↓)のですが、 スサノオはイザナミのことを母親だと思っていたようです。 (日本書紀によるとイザナミが母親)
 
古事記には「根之型州国=黄泉の国」とは書いてありません。それぞれ別々の「死者の国」 とする説、あるいは根之型州国は「死者の国」ではないとする説もあります。 イザナミは「黄泉の国」の女王となっており、イザナミに会うためには「黄泉の国」へ行く必要があります。しかしスサノオが目指したのは「根之型州国」であり、 最終的に「根之型州国(ねのかたすくに)」へとたどり着くことになります。
 
つまりこの旅、どこに誰に会いに行く旅なのかが、よくわからないのです。彼自身もよくわかってないのかもしれません。 しかも「本来の旅の目的」からどんどん話がずれていきます。少し「スサノオの旅の目的」に注目して読んでみてください。
 
 
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アマテラスとスサノオの誓約(うけい)

大前提として追放されたスサノオは根之型州国(母のいる死者の国?)へ向かっているはずです。 これから語られる物語 (天岩屋戸やヤマタノオロチ退治など)は、全てスサノオの寄り道の話だということを頭の片隅に置いておいてください。 そもそもアマテラスに報告に行く理由もありません。
 
 
 
登場する神様
アマテラス(スサノオの姉で高天の原の統治者)
スサノオ(イザナギが禊で生んだ三貴神の一人)
 
 
追放されたスサノオは、根之型州国へ向かう前に、高天の原(たかまのはら)の姉アマテラスのもとへ報告に向かいます。
 
 
スサノオが高天の原(たかまのはら)に 駆け上がってくると山や川が震えました。
(かなり巨大でパワフルな神様だと思って頂いていいと思います。)
 
 
その音を聞いたアマテラスは「 弟は 高天の原を奪おうとしている」と言い、 武装してこれ出迎えます。
 (この段階では、スサノオに対し毅然とした態度をとっています。)
 
 
これに対しスサノオは「イザナギの神に追放され、根之型州国(ねのかたすくに)へ向うことになったことを報告にきました。 謀反の心はありません」と言います。
(スサノオは旅の目的を、あくまで根之型州国へ向かうこととしています。)
 
 
アマテラス「 それならばその清い心を証明してみなさい。」
 
 
スサノオ誓約(うけい)をして子供を生みましょう。」
 
 
アマテラスが、スサノオの剣を噛み砕き吹き捨てると、三柱の女神(スサノオの子)が生まれます。
 
 
一方スサノオが、アマテラスの髪飾りの玉緒を噛み砕き吐き出すと、五柱の男神(アマテラスの子)が生まれました。
 
 
剣から女神が生まれたスサノオは「 私の心が清いから女の子が生まれたのだ。 つまり私の勝ちだ」 と言いました。
 

〈神様も誓約には逆らえない?〉

誓約(うけい)というのは一種の占いになるそうですが、「 女神が生まれたから心が清い」に明確な理屈はないようです。 当時の女性天皇である持統天皇や元明天皇への配慮ではないかとも言われています。
 
いずれにせよ、あらかじめ「 心が清らかなのであれば女の子が生まれる!」といった宣言をしなければ、誓約(ギャンブル)は 成立しません。 ところが原文にはその様子が全くありません。……ちょっと「あとだしジャンケン」に近い気がしません?…… 弟の地位の特権なのでしょうか…?
 
この誓約の結果、なぜかアマテラスはスサノオに強い態度を取れなくなります。 神様であっても誓約(うけい)には絶対に逆らえないことになっているようです。
 
 
勝ち誇ったスサノオは、アマテラスの田の畔を壊し、御殿に糞を撒き散らしました。
(報告に来ただけなのでは…)
 
 
アマテラスはそれを咎めもせず、「 あれは糞尿ではなくて酔っぱらって吐いたゲロなんです。 畦を壊しているのは田んぼを広げるためなんでしょう。」とスサノオをかばいます。
 (こんなにも庇うのは誓約に負けたからなのでしょうか…でもゲロはフォローになってないと思います…)
 
 
しかしスサノオの悪行はさらに激しくなり、アマテラスの機織り小屋に、皮を剥いだ馬を投げつけ機織り女を死なせてしまいました。
(スサノオは勝利するとどこまでも調子に乗るタイプです)
 
 
これを見たアマテラスは恐ろしくなって、天岩屋戸に籠ってしまいました。
 
 
有名な「天の岩屋戸(あまのいわやと)」の エピソードになります。
 
 
※ 繰り返しますが、そもそもスサノオは、アマテラスに報告に行く理由もありません。本当に迷惑な神様です…
 
 
● 古事記のものがたり⑦⑧⑨アマテラスとスサノオ 天岩屋戸
 
 
製作者 :Rakinasuchiさん
古事記の原文に忠実ないい動画です。 動画の方がイメージが湧きやすいと思います。 よろしければご覧になってみてください。
 
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天の岩屋戸

写真出典:ウイキペディア(宮崎県高千穂町天安河原)
 
登場する神様
アマテラス(高天の原を統治する太陽の神)
スサノオ(アマテラスの弟)
オモイカネ(知恵の神:タカミムスヒの子)
④タマノオヤ(勾玉、玉緒を作る神)
⑤イシコリドメ(八咫鏡を作った女神)
⑥アメノコヤネ(祝詞を唱える神、中臣氏の祖)
⑦フトダマ(占いの神、忌部氏の祖)
アメノウズメ(芸能の女神)
⑨タヂカラオ(腕力の神)
⑩ヤオヨロズノカミ(多くの神、全ての神)
 ④~⑧を五伴緒(イツノトモノオ)と言い、天孫降臨時にニニギに従って地上へ降りる神様になります。
赤字の神様はとても重要。オレンジの神様はちょっと重要です。
 
 
太陽の神であるアマテラスが洞窟に隠れると、 高天の原(たかまのはら)と葦原中国( あしはらのなかつくに)は暗闇に包まれ 、昼が来ない夜だけの世界になり、悪神が騒ぎだし、万(よろず)の災いで溢れかえりました。
(この話は「日食」もしくは「夏至」を表しているとも言われています。)
 
 
 八百万(やおよろず) の神が天安川(アメノヤスカワ)に集まり、 タカミムスヒ(造化三神の偉い神様)の子のオモイカネ(知恵の神:高天の原の総理大臣的な存在)に対応策を考えさせます。
 
 
オモイカネの策は「祭り」でした。
( 原因はスサノオなのでスサノオ追い出せばすべて解決するはずなのですが、「祭り」という発想がいいですよね。昔は神が感動するほどの踊りや神楽を行うことで、豊作になると考えられていました。)
 
 
まず、 長鳴鳥(ながなきどり:鶏のこと)を集めて鳴かせ、玉祖命(タマノオヤ)に八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)を作らせ、伊斯許理度売命(イシコリドメ)に八咫鏡(やたのかがみ)を作らせました(三種の神器のうちの二つ)。
(鶏(にわとり)は朝を告げて「太陽」を呼び戻す意味合いがあると言われています。)
 
 
天児屋命(アメノコヤネ)と布刀玉命(フトダマ)に桜の木で占いをさせました。
 
 
天の香具山のサカキの、上枝に八尺瓊勾玉を連ねた玉緒を、中枝に八咫鏡を、下段に白い布と青い布を垂らしました。
 
 
そのサカキをフトダマが持ち、アメノコヤネが祝詞を唱え、タヂカラオが岩戸の側に隠れます。
 
 
 
祭りが始まると、アメノウズメ(女神)はヒカゲガズラを体にかけ、髪飾りをつけ、笹の葉を持って、桶(おけ)の上にたって踊りました。
 
 
踊りが神がかってくると、胸をあらわにし、 服の紐を陰部まで押し下げます。
(要するにウケ狙いの女性の裸踊りです。 いやらしい感じではないと思います。)
 
 
すると高天の原がどよめき、八百万の神々がどっと笑いました。
 
 
おかしいと思ったアマテラスは、天岩屋戸を少しだけ開いて「 私が隠れていると 高天の原(たかまのはら)も 葦原中国(あしはらのなかつくに)も暗闇になっているはず、アメノウズメはなぜ踊ってるの?みんな何を笑ってるの?」 と尋ねます。
 
 
  アメノウズメは「 あなたよりも尊い神がいらっしゃいます。」 と答えました。
 
 
アマテラスが外を覗くと、 天児屋根命(アメノコヤネノミコト)と布刀玉命(フトタマノミコト)が 八咫鏡(やたのかがみ)を差し入れます。
 
 
自分とそっくりな 太陽の神が もう一人いると勘違いして驚いたアマテラスが、 さらに外を覗こうとすると、
 
 
腕力の神様の手力男神(タヂカラオノカミ)が、アマテラスの手をつかんで 外へと引っ張り出しました。
 
出典:ウィキペディア(原文によるとアメノウズメは服を脱いでいるようです)
 
 
こうして高天の原と葦原中国に再び明かりが戻りました。
 
 
八百万(やおよろず)の神は会議を行い、原因となったスサノオの髭を剃って爪を切り、 高天の原から追放しました
(そもそもスサノオは根之型州国へ向うことを報告するために立ち寄っただけのはずです…)
 
 
※この時つけられた八咫鏡(やたのかがみ)八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま)が、 天孫降臨によって 地上にもたらされ 、後の皇位継承の証となる「三種の神器」となり、 現在まで受け継がれていくことになります。
 
 
 
● 古事記のものがたり⑩⑪天岩屋戸
 
製作者 :Rakinasuchiさん
原文に忠実ないい動画です。 動画の方がイメージしやすいと思います 。よろしければ ご覧になってみてください。
 
 

〈 アマテラスってどんな神様?〉

日本の最高神アマテラスは、権威を持つが権力は行使しない神、他の神様たちと力を合わせて君臨する神様、として描かれています。 日本人らしい神様ですよね。
太陽神を最高神とするのは、日本が農耕社会だからと言われています。 世界中に太陽神は 存在しますが 、皇室は自分たちの祖神をその太陽神と一致させたことに特徴があるようです。
 
 
次回第5回目はスサノオのヤマタノオロチ退治です。
海原からも高天の原からも追放されたスサノオは、 亡き母を探しに根之型州国(ねのかたすくに)へ旅立つはず…なのですが…… 何故か怪物退治を始めます…
 
 
 
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