世界的に有名なカンツォーネ「帰れソレントへ」はイタリア語ではなくナポリ語の曲です。ナポリ語というのは イタリア南部で話されているイタリア語に非常に近い言語なのですが、厳密にはイタリア語の方言ではなく独立した言語になるそうです。
今回このナポリ語の「帰れソレントへ」を翻訳してわかりやすいように紹介してみようと思ったのですが、困ったことにナポリ語の辞書や文法書が手に入らないのです。
そのため一旦対応するイタリア語の単語を特定しないと、単語の意味や動詞の活用を確かめられないのですよ。調べてみるとイタリア語のWikipediaにイタリア語版「帰れソレントへ」があったので、これを参考に対応するイタリア語を推定して翻訳することにしました。
せっかくなのでその参考にした「イタリア語版帰れソレントへ」も和訳とカタカナ歌詞をつけておきますね。今回はその「イタリア語版」の紹介です。ただ力不足でちょっと自信がないです。違っていたらごめんなさい。
それから「イタリア語版」にもいくつものバージョンがあるようです。はまなさおりさんが「イタリア語版帰れソレントへ」を歌ってらっしゃるのですが、歌詞が若干異なるようです。
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目次
「イタリア語版帰れソレントへ」イタリア語歌詞+和訳+カタカナ歌詞!
Torna a Sorrento italiano
作詞:ジャンバッティスタ・デ・クルティス
作曲:エルネスト・デ・クルティス
出典:ウィキペディア
※比較研究目的での引用です。
1番前半
ヴェーディ イル マーレ クワント ベッロ イスピーラ モルト センティメント
Vedi il mare quanto è bello, Ispira molto sentimento,
海を見て、なんて美しいのだろう 多くの感情を感じさせる
コーメ テ ア キ オッセるヴィ ケ ダ スヴェッリョ ロ ファーイ ソンニャーレ
Come te a chi osservi, che da sveglio lo fai sognare.
君の夢を覚ますさせる 君が気になっている人のように
グアるダ グアるダ クエスト ジャるディーノ センティ センティ クエスティ フィオーリ ダランチオ
Guarda, guarda questo giardino; Senti, senti questi fiori d’arancio:
見て見て、この庭を 感じて感じて、このオレンジの花々を
ウン プろフーモ コズィ デリカート デントろ アル クオーレ セ ネ ヴァ
Un profumo così delicato Dentro al cuore se ne va…
このような繊細な香りが 心の中に染みわたる
単語の意味①
Vedi (ヴェーディ)「(君が)見て」※vedere(見る)の命令法2人称単数。原形ナポリ語版ではVide (ヴィーデ)「見て」。
il (イル)「定冠詞男性単数」※原曲では‘o (オ)
mare (マーレ)「海(男性単数)」
quanto (クワント)「いくつの・なんと」
è (エ)「(それが)です・ある」essere(です・ある)の3人称単数形。※原曲ではquant’è (クアンテ)と結合していました。
bello (べッロ)「美しい・綺麗な」
Ispira(イスピーラ)「感じさせる・暗示させる」※ispirare(イスピラーレ・感じさせる・暗示させる)の3人称単数形。
molto(モルト)「たくさんの・とても」※原曲ではtantu (タントゥ)
sentimento (センティメント)「気持ち・感情(男性)」※原曲と同じです。
Come (コーメ)「このように」※原曲ではComme (コンメ)
te (テ)「君を」原曲ではtu (トゥ)
a (ア)「〜に・へ」
chi (キ)「誰・〜である人」疑問詞または人を表す関係代名詞。先行詞を含んでおり、主語や補語になります。ただちょっと正しい解釈がわからないです。
osservi(オッセるヴィ)「(君が)観察する・気づく」osservare(オッセるヴァーレ・観察する)の2人称単数形。
che (ケ)「ということを・するように・だから・そのとき」という接続詞の意味もありますが、ここでは関係代名詞「〜であるところの・それは」?なおcheの先行詞は人でも物でもよく、関係節において主語・直接目的語・補語として働くことができます。
da (ダ)「〜から・で・以来・によって・〜のように」
sveglio (スヴェッリョ)※svegliare(スヴェッリャーレ・目覚めさせる・起こす)の1人称単数形。原曲ではscetato (シェタート・揺する・目を覚まさせる)。
lo (ロ)「定冠詞男性単数」
fai (ファーイ)「(君が)する・作る」※fare(ファーレ・する・作る)の2人称単数形。原曲ではfaje (ファイエ)。
sognare (ソンニャーレ)「〜の夢をみる」※原曲ではsunnà (スンナ)
ごめんなさい。この行よく分かりません。
Guarda (グワるダ)「(君が)見て」※guardare(見る)の命令法2人称単数。原曲と同じ。
questo (クエスト)「この・これ」※原曲ではchistu (キストゥ)
giardino (ジャるディーノ)「庭を(男性)」※原曲ではciardino (チャるディーノ)
Senti (センティ)「(君が)感じて」※sentire(センティーレ・感じる)の命令法2人称単数形。原曲ではSiente (スィエンテ)。
questi (クエスティ)「この・これ」※questoの男性複数形。原曲では省略形のsti (スティ)。
fiori (フィオーリ)「花々(男性)」※fiore(花)の複数形。原曲ではsciure(シューレ)
d’arancio (ダランチオ)「オレンジの」※di(ディ・の)+arancio(アランチオ・オレンジ)。
Un (ウン)「ある・1つの」※不定冠詞男性(英語のa)原曲ではNu (ヌ)
profumo (プろフーモ)「香り(男性)」※原曲ではprufumo (プるフーモ)
così (コズィ)「このような・とても」※accussí (アックッスィ)
delicato (デリカート)「難しい・華奢な・肌触りのよい・繊細な」※fino (フィーノ)「鋭利な・上質な・純粋な」
Dentro (デントろ)「〜の中に」※原曲ではDinto (ディント)。
al (アル)「に・で」※a(に・で)+il(定冠詞男性単数)の結合
cuore (クオーレ)「心臓・心」※原曲ではcore (コーレ)。
va (ヴァ)「行く・到達する」※andare(アンダーレ・行く・到達する・届く)の3人称単数形。
se ne va(セ ネ ヴァ)で「到達しきる・染みわたる」
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1番後半
エ トゥ ディーチ イーオ パるト アッディーオ ティ アッロンターニ ダ クエスト クオーレ
E tu dici: “Io parto, addio!” Ti allontani da questo cuore…
そして君は「私は行く、さようなら」と言って 私の心から遠ざかっていく…
ダッラ テッら デッラモーレ アイ イル クオーレ ディ ノン トるナーレ
Dalla terra dell’amore… Hai il cuore di non tornare?
この愛の地から… 帰らないつもりなのか?
マ ノン ミ ラッシャーレ ノン ダるミ クエスト トるメント
Ma non mi lasciare, Non darmi questo tormento!
でも私を置いて行かないで 私に苦しみを与えないで!
トるナ ア ソッれント ファンミ ヴィーヴェレ
Torna a Sorrento, Fammi vivere!
帰れソレントへ 私を生きさせてくれ!
単語の意味②
E (エ)「と・そして」
tu (トゥ)「君は」
dici (ディーチ)「(君は)言う」※dire(ディーレ・言う)の2人称単数形dici。原曲ではdice (ディーチェ)。
Io (イーオ)「私は」
parto (パるト)「出発する・離れる」※伊語のpartire(出発する・離れる)の1人称単数形。原曲と同じ。
addio (アッディーオ)「さようなら」※決定的な別れに使う言葉だそうです。原曲と同じ。
Ti (ティ)「君を・再帰代名詞」※ここでは再帰代名詞。
allontani (アッロンターニ)「遠ざける」※allontanare(アッロンタナーレ・遠ざける・離す)の2人称単数形。
※再帰代名詞(ti)+動詞(alluntani)で「自分自身を〜する」といった意味合いの再帰動詞として働くため「君自身を遠ざける」。原曲ではT’alluntane (タッルンターネ)。
da (ダ)「から・で」
questo (クエスト)「これ・この」
cuore (クオーレ)「心臓・心」
Dalla (ダッラ)「から・で」※da(ダ・から・で)+la(ラ・定冠詞女性単数)。原曲ではsta(スタ・questaの省略)が使われているバージョンもありますが、意味合いとしてはほぼ同じです。
terra (テッら)「大地(女性)」
dell’amore (デッラモーレ)「愛の」di(の)+l'(定冠詞単数の母音前の形)+amore(アモーレ・愛(男性))。
Hai (アイ)「(君が)持っている」avereの2人称単数形。原曲ではtiene (ティエーネ)「持つ」を使っています。
il (イル)「定冠詞男性単数」原曲では‘o (オ)
cuore (クオーレ)「心(男性)」※原曲ではcore (コーレ)。
※hai il coreで「~するつもりである」
di (ディ)「の」
non (ノン)「〜ではない」※原曲ではnun (ヌン)。
tornare (トるナーレ)「帰る・戻る」※tornare(トルナーレ・帰る・戻る)の原形。
Ma (マ)「だが・しかし」
non (ノン)「〜ではない」
mi (ミ)「私に」原曲ではme (メ)
lasciare (ラッシャーレ)「置いてくる・別れる」※lasciare(ラッシャーレ・置いてくる・別れる・のままにする・残す)の原形。
Non (ノン)「〜ではない」
darmi (ダるミ)「私に(君が)与えて」※dare(与える)+mi(私に)。
questo (クエスト)「この」
tormento (トるメント)「苦痛・苦悩」※原曲ではturmiento (トゥるミエント)。
Torna (トるナ)「帰れ」※tornare(トルナーレ・帰る・戻る)の命令法2人称単数。
a (ア)「に・へ」
Sorrento (ソッれント)「ソレント」原曲ではSurriento (スッりエント)。
Fammi (ファンミ)「私にさせて」※fa(fareする・させるの命令法2人称単数fa)+me(私に)
vivere (ヴィーヴェレ)「生きる・暮らす」※原曲ではcampà (カンパ)。
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2番前半
ヴェーディ イル マーレ ディ ソッれント ケ テゾーリ ア スル フォンド
Vedi il mare di Sorrento, Che tesori ha sul fondo:
ソレントの海を見て そこは奥底に宝物を秘めている
キ ア ジラート トゥット イル モンド ノン ラ ヴィスト コーメ クワ
Chi ha girato tutto il mondo Non l’ha visto come qua.
世界中を巡った人も ここではその宝物を見たことがなかった
グアるダ イントるノ クエステ スィレーネ ケ ティ グアるダーノ インカンターテ
Guarda intorno queste Sirene, Che ti guardano incantate,
周りの精霊たちを見て 彼女たちは君を魅惑的に見つめている
エ ティ ヴォッリョノ タント ベーネ ティ ヴォッレッベロ バチャーレ
E ti vogliono tanto bene… Ti vorrebbero baciare.
そして君のことをとても愛していて… できれば君にキスしたがっている
単語の意味③
Vedi (ヴェーディ)「(君が)見て」※vedere(見る)の命令法2人称単数。
il (イル)「定冠詞男性単数」
mare (マーレ)「海(男性)」
di (ディ)「の」
Sorrento (ソッれント)「ソレント」
che (ケ)「〜であるところの・それは」※ここではソレントの海を先行詞とする関係代名詞。
tesori (テゾーリ)「宝(男性)」※tesoroの複数形。
ha(ア)「(それは)持つ」avere(アヴェーレ・持つ)の3人称単数形。 イタリア語ではHはどんな場合も発音しません。なお原曲ではtene (テーネ)「持つ」を使っています。
sul (スル)「〜の上に」※su(〜の上に・向かって)+il(定冠詞男性単数)の結合形。
fondo (フォンド)「底・奥」原曲ではnfunno (ンフンノ)。
chi (キ)「〜である人」関係代名詞
ha (ア)※avere(アヴェーレ・持つ)の3人称単数形だがここでは助動詞。※avere+過去分詞で、過去に完了した動作や状況・過去の経験を表します(近過去)。
girato (ジラート)※girare(ジラーレ・回る・巡る)の過去分詞girato。ha giratoで巡った。
tutto (トゥット)「すべての」
il (イル)「定冠詞男性単数」
mondo (モンド)「世界・世間(男性)」※原曲ではmunno (ムンノ)
Non (ノン)「〜ではない」
l’ha (ラ)「助動詞」※lo(それを)+ha(avereの3人称単数形)※avere+過去分詞で近過去。
visto (ヴィスト)※vedere(ヴェデーレ・見る)の過去分詞。ha vistoで「見た(ことがある)」。
come (コーメ)「〜のように・のような」
qua (クワ)「ここに・ここで・これ」
Guarda (グアるダ)「見て」
intorno (イントるノ)「周りに」※attuorno (アットゥオるノ)
queste (クエステ)「これらの」※questoの女性複数形。
Sirene (スィレーネ)「セイレーン達(女性)」※ギリシャ神話に登場する半人半鳥の妖精。
Che (ケ)「〜であるところの・それは」※Sireneを先行詞とする関係代名詞。
ti (ティ)「君に」
guardano (グアるダーノ)「(彼女たちは)見る」※guardareの3人称複数形。
incantate (インカンターテ)「並外れて美しい・魔法にかかった」※incantatoの女性複数形。原曲では‘ncantate (ンカンターテ)。
E (エ)「と・そして」
ti (ティ)「君に」
vogliono (ヴォッリョノ)「(彼女たちは)したい」※volere(ヴォレーレ・欲しい・したい・必要だ)の3人称複数形。
tanto (タント)「たくさんの」
bene (ベーネ)「うまく・よく・とても」
Ti (ティ)「君に」
vorrebbero (ヴォッレッベロ)「(彼女たちは)〜したがっている」volereの※条件法現在3人称複数形。※条件法はある条件のもと可能なことや願望や推測されることを表現します。原曲ではvulessero (ヴレッセロ)。たぶん接続法半過去3人称複数volessero。
baciare (バチャーレ)「キスをする」
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2番後半(1番後半と同じ)
エ トゥ ディーチ イーオ パるト アッディーオ ティ アッロンターニ ダ クエスト クオーレ
E tu dici: “Io parto, addio!” Ti allontani da questo cuore…
そして君は「私は行く、さようなら」と言って 私の心から遠ざかっていく…
ダッラ テッら デッラモーレ アイ イル クオーレ ディ ノン トるナーレ
Dalla terra dell’amore… Hai il cuore di non tornare?
この愛の地から… 帰らないつもりなのか?
マ ノン ミ ラッシャーレ ノン ダるミ クエスト トるメント
Ma non mi lasciare, Non darmi questo tormento!
でも私を置いて行かないで 私に苦しみを与えないで!
トるナ ア ソッれント ファンミ ヴィーヴェレ
Torna a Sorrento, Fammi vivere!
帰れソレントへ 私を生きさせてくれ!
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個人的な感想!
比較してみるとイタリア語版のこの歌詞は、ナポリ語版の原曲とほぼ同じ内容なのですが、単語まで完全に一致するわけでもないみたいですね。所々似た意味の別の動詞を使っていたり、言い回しが違っていたりするところがあるみたいです。
例えば 原曲では「目覚めさせる」に「scetato (シェタート)」を使っているのがイタリア語版では「sveglio(スヴェッリョ)になっていたり、fino (フィーノ)「上質な・純粋な」がdelicato (デリカート)「華奢な・繊細な」になっていたり、tene (テーネ・tenere)「持つ」がha(ア・avere)「持つ」になっていたりと。
他のイタリア語版も見てみましたが、違いは使われてる単語が微妙に違う程度でした。
実はこの「帰れソレントへ」は日本語でも複数のカバー曲が作られています。調べてみると言語が違いすぎるためかある程度歌詞が変わっていましたが、ソレントの美しさを述べて愛する人に戻ることを懇願するという原曲のメインテーマは概ね引き継いだ内容になっていました。中には愛する人ではなく「お母さん帰ってくれ!」に内容が変わっている歌詞もありましたけれど。
要するに日本語版は、原曲の趣旨を概ね引き継いでいるが、イタリア語版ほど原曲に近くはないといった感じです。
1960年にはエルヴィス・プレスリーもこのメロディを使った「サレンダー」という英語の曲を発表しています。しかし「サレンダー」についてはソレントの地名も失恋の要素も一切登場しません。「愛し合うカップルの熱い一夜」といった内容に完全に歌詞が入れ替わっています。
要するにプレスリー版は完全に別の歌です。
また最近では日本で「空耳版帰れソレントへ」が作られています。歌詞を吟味してみるとこれがなかなか面白い歌でしたよ。
言うまでもなく空耳版は原曲の要素のかけらもない支離滅裂な歌ですけど😅
原曲が作られて100年以上経ちますが、未だに世界中で愛されているのですね。
いずれにせよせっかく覚えるのであればまずは原曲にしましょう。
それではお元気で。
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