【5分で走れメロス】あらすじ、感想、内容【太宰治】

走れメロス」は人間の信頼と友情の美しさ、圧制への反抗と正義とを描いた、太宰治の短編小説。処刑されることを承知の上で友情を守ったメロスが、人間不信の王に信頼することの大切さを悟らせる様子を描いた物語になります。全て太宰治の発想に基づく物語というわけではなく、ギリシアの「デイモンとフィンティアス」という古伝説によったシラー(ドイツ人の詩人1759-1805)の「担保」という詩から題材をとり、そこに太宰独特の現代的な心理描写などを加えていった小説とされています。自己破壊的文学のイメージの強い太宰治ですが、「走れメロス」は彼の明るい健康的な面を代表する小説として知られています。
この「走れメロス」の、あらすじと内容、感想を書いてみました。

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主な登場人物の紹介

メロス

シラクスの市から十里離れた村に住む、正義感の強い羊飼いの青年。父も母も女房もいないが、結婚を控えた16歳の妹がいる。王にとらわれるが、セリヌンティウスを人質に三日間の猶予をもらい、妹の結婚式に出る。

セリヌンティウス

シラクスの市に住む石工。メロスの竹馬の友で親友。メロスの人質の頼みを快諾し囚われの身となる。


親族や臣下を次々と処刑する人間不信の王。メロスの裏切りを画策するも、約束を守って処刑場に現れたメロスに心打たれて改心する。

 

まずはざっくりとした内容!

人間不信のため、多くの人を処刑している暴君ディオニソス王に囚われたメロスは、妹の結婚式に参加するために、親友セリヌンティウスを人質に差出し三日間の猶予をもらう。無事に妹の結婚式を終えたメロスは王のもとに走り出すが、川の氾濫による橋の流出や王の差し向けた山賊の妨害などにより、疲労困憊で倒れる。一度はセリヌンティウスを裏切り逃げようかもとも思うが、清水を飲んで回復し、勇気を取り戻したメロスは再び走り出す。そして三日目の日没寸前、王のもとにたどり着いたメロスは、約束を果たしセリヌンティウスを救出する。お互い一度裏切ろうとしたことを告白して謝り合う二人を見て、王は「私も仲間に入てくれ」と改心した

「走れメロス」は文庫本で20ページ弱の短い小説ですが、あらすじを紹介する上で分かりやすくするため、5つの章に区分しました。なお、原作の世界観が壊れないように、会話はできるだけそのまま記載しておきます。

 

あらすじ

1 人間不信の王に激怒し、王城で捕まる

人一倍正義感が強く羊飼いをしているメロスには、父も母も女房もいないが、16歳の妹がいた。妹はまもなく結婚する予定であり、その結婚式に備えるため、村から十里離れたシラクスの市にやってきた。しかし街全体が寂しく何かがおかしい。理由を市の老爺に訪ねてみると「王様は人を信じることができなくて、親族を次々に殺して臣下の心も疑っておられる。ご命令を拒めは十字架にかけられて殺されます。」と答えた。これを聞いた正義感の強いメロスは激怒し、王の暗殺を決意して短剣を持って王城に入っていく。ところがメロスはたちまち捕縛され、王の前に引き出された
(次の章では、この場で王とメロスの激しい舌戦が繰り広げられます。)

 

2 三日間の猶予とメロスの釈放

王「この短刀で何をするつもりであったか?」
メロス「市を暴君の手から救うのだ。人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。」
王「人の心はあてにならない。人間はもともと私欲の塊さ。お前が今に磔になってから、泣いておいたって聞かないぞ。」
メロス「自惚れているが良い。私は命乞いなど決してしない。ただ私に情けをかけたいつもりなら、処刑までに三日間の期限を与えてください。妹を結婚させてやりたいのです。3日のうちに私は村で結婚式を挙げさせ、必ずここへ帰ってきます。」
王「ばかな。逃した小鳥が帰ってくるというのか。」

メロスにはこのシラクスの市に、竹馬の友で石工をしているセリヌンティウスという親友がいた。

メロス「私は約束を守ります。よろしい、この市にセリヌンティウスという石工がいます。私の無二の友人だ。彼を人質としてここに置いていこう。私が三日目の日暮までにここに帰ってこなかったら、あの友人を絞め殺してください。」
それを聞いた王は残虐な気持ちでほくそ笑む。(どうせ帰って来ないに決まっている。これだから人は信じられない、と世の中の正直者に見せつけてやる。)
王「その願い聞いた。もし遅れたらその身代わりをきっと殺すぞ。そしてちょっと遅れて来たら、お前の罪は永遠に許してやろうぞ。命が大事だったら遅れてこい。お前の心は分かっているぞ。

 

3 妹の結婚式

こうして王城に呼び出されたセリヌンティウスに事情を話すと、彼は無言でうなずいて二人は抱き合った。そしてセリヌンティウスは縄打たれ、メロスはすぐに出発した。

翌日(1日後)の午前、綺麗な衣装を持って十里離れた村に到着すると、妹には人質を取られて自分は長くは生きられないことは一切話さず、結婚式を翌日に無理やり前倒しさせた。

翌日(2日後)の結婚式は大雨となって、何か不吉なものを感じた。メロスは妹に近寄って言った。「お前の兄の一番嫌いなものは、人を疑うこと、それから嘘をつくことだ。亭主との間にどんな秘密でも作ってはならぬ。」それから花婿に対しても言った。「私の家には妹と羊しかない。全部あげよう。もう一つ、メロスの弟になったことを誇ってくれ。」

翌日(3日後)の明け方、メロスは目を覚ます。この家に留まっていたいという未練が頭をよぎるが、あの王に人の真実の存するところを見せてやろう、そして笑って磔台に上がってやる、こう思って、まだ雨が降る中、王城へと出発した。

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4 走れメロス!川の氾濫と山賊の妨害

(自分は今宵必ず殺される。それは分かっている)まだ若いメロスは辛く、何度も立ち止まりそうになった。やがて雨は止み、日は高く昇り暑くなった。ちょうど村と王城の半ばに到達した頃、メロスの足は急に止まる。昨日の豪雨で川が氾濫し、橋桁が木っ端微塵に跳ね飛ばされていたのだ。(迷っている暇はない。)メロスは覚悟を固めて川にとびこみ、必死に濁流をかき分け、なんとか対岸の樹木にすがりつくことができた。

日はすでに西に傾きかけている。一刻も無駄には出来ない。ぜいぜい荒い呼吸をしながら峠を登り切ると、突然目の前に山賊が躍り出た
山賊「待て。その命が欲しいのだ。」
メロス「さては王の命令で、ここで私を待ち伏せしていたのだな。」
なにも言わず棍棒で襲い掛かる山賊たちに対し、メロスはその棍棒を奪い取って、たちまち3人を殴り倒し、残りの者がひるむ隙に走って峠を下った。しかし灼熱の太陽をまともに浴び続けたメロスはさすがに疲労し、ついにがくりと膝を折り、立ち上がることができなくなった。体が疲労すれば精神も共にやられる。もうどうでもいい、と言うふてくされた根性が心の隅に巣食った。(セリヌンティウスよ、許してくれ。私は永遠に裏切り者だ。地上で最も不名誉な人種だ。)そして体を投げ出し、ウトウトまどろんでしまった。

(あれだけの啖呵を切ったにも関わらず、疲労で心折れそうになるメロスの様子が、リアルな心理描写と評価されています。)

ふと耳に、水の流れる音が聞こえる。見ると岩の裂け目から清水が湧き出ている。その水を両手ですくって飲んでみると、肉体の疲労が回復し、夢から醒めたような気がした。(まだ歩ける。僅かながら希望が生まれた。義務遂行の希望と、名誉を守る希望だ。日没までにはまだ時間がある。私を待っている人があるのだ。私の命などは問題ではない。信頼に報いなければならぬ。走れメロス!)
メロスは黒い風のように走った。メロスは今、ほとんど全裸で、口からは血が吹き出ていた。(まだ日は沈まぬ。)最後の死力を尽くしてメロスは走った。日が地平線に没し、まさに最後の一片の残光が消えようとした時、メロスは疾風の如く刑場に突入した。間に合ったのだ

5 どうか私を仲間に入れてくれないか

「まて、その人を殺してはならぬ。約束のとおり、今帰ってきた。」とメロスはかすれた声で精一杯叫びながら、磔刑に釣り上げられていくセリヌンティウスの両足にかじりついた。群衆はどよめき、セリヌンティウスの縄を解かれた。
メロスは目に涙を浮かべて言った。「セリヌンティウス、私を殴れ。私は途中で一度悪い夢を見た。君がもし私を殴ってくれなかったら、私は君と抱擁する資格さえないのだ。
頷いたセリヌンティウスは、刑場いっぱいになり響くほどメロスの右頬を殴った。殴ってから優しく微笑み「メロス、私を殴れ。私はこの三日間、たった一度だけ君を疑った。君が私を殴ってくれなければ、私は君と抱擁できない。」メロスは腕に唸りをつけて、セリヌンティウスの頬を殴った。
「ありがとう友よ。」二人同時に言うと、抱き合い、それからお互い声を上げて泣いた。

暴君ディオニソスは2人に近づき、顔を赤らめて言った。「お前らはわしの心に勝ったのだ。真実とは、決して空虚な妄想ではなかった。どうかわしも仲間に入れてくれないか。どうかわしの願いを聞き入れて、おまえらの仲間の一人にしてほしい。」
すると群衆の間にドッと歓声が起こった。「万歳。王様万歳。」

一人の少女が緋のマントをメロスに捧げた。
セリヌンティウス「メロス、君は真っ裸じゃないか。早くそのマントを切るがいい。この娘さんは、メロスの裸体を皆に見られるのが悔しいのだ。」
勇者はひどく赤面した。

 

感想

 

「走れメロス」は、人間の信頼と友情の美しさ、圧制への反抗と正義といったものが描かれた小説として知られています。

確かにこの小説は、処刑されることを承知の上で友情を守ったメロスが、人間不信の王に信頼することの大切さを悟らせる様子が描かれています。

しかし一方で「そんなに妹の結婚式に出たいのなら、なぜ王の城に忍び込んだの?自ら飛び込んでおいて親友の命を担保に入れるのは、あまりにも身勝手なのでは?」など、話の展開に納得ができないといった声も少なくありません。

でも僕は、この小説に関しては、その細かい矛盾などどうでもいいと思う

重要なことはそこではないから

ぼくはこの「走れメロス」という小説が昔から大好きでした。その理由は、人生における大事な教訓を失敗する前に教えてくれるから

ぼくはこの「走れメロス」の最大のテーマは「約束を守ることの大切さ」にある思っています。もしもメロスがわざと遅れて、日没後に到着していたならば、その後のメロスはどうなっていただろうか。

セリヌンティウスは処刑され、メロスは王との約束通り命を助けられたでしょう。しかしメロスはその代償として、その先の将来のすべてを失うことになる。それまで彼が築き上げてきた周囲からの信頼と尊敬は一夜にして崩れ去り、未来永劫周囲から蔑まれ見下され続けることになったでしょう。その屈辱に耐えかねて、メロスは夜逃げや自殺を図ったかもしれない。あるいは人を裏切る悪い癖がつき、どんどん人の道を踏み外して、犯罪者に落ちていたかもしれない。人生の大半を牢獄で過ごすことになり、もしかしたら処刑されていたかもしれない。実際にメロス自身も(私は永遠に裏切り者だ。地上で最も不名誉な人種だ。)と本編中で考えています。
メロスが逃げた場合の結論はこの小説には書かれていませんが、想像は難しくありません。

この「走れメロス」は学校教材にもよく取り上げられます。当然ですがそこには、メロスが約束を守った場合の成功例しか書かれていません。メロスは自分の正義を貫き、傲岸不遜な王を改心させ、最後は勇者にまで祭り上げらました。
ですがこの小説は、メロスが約束を守らなかった場合、その後どうなったのか?ここまで考えて初めて「人を裏切ることの恐ろしさ」を噛み締めることができるのではないでしょうか

ぼくはこの小説を、人間の信頼と友情の美しさや、圧政への反抗と正義、などといった単なる美談で終わらせるのはもったいないと思う。

「何があっても人の信頼を裏切ってはいけない。約束を破ってはいけない。裏切ったらそれまで積み上げてきたものを全てを失うぞ。」こういった教訓を強烈に感じることに意味があるのではないかと思う。そのためにも、メロスが約束を破っていたらどうなっていたのか?それが自分の人生で起こっていたら、その後の自分はどうなるのだろうか?これを考えてみて欲しいです。

これを考えて、自分の人生において実際に人の信頼を失う前に「約束を破ることの恐ろしさ」を知ること。ここにこの小説を読むことの一番の意義があるのではないかと僕は思っています。

 

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