【10分で星の王子様】あらすじ、内容、感想、解説!【サン=テグジュペリ】

星の王子様」(1943年)は、フランスの郵便輸送パイロットで作家のアントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900-44)の代表作。「仲良くなる」とはどういうことなのかを通じて、「友情や愛情」について考えさせる文学。比喩や暗示を駆使しており難解な部分も多いですが、「費やした時間の分だけその人にとって大事な存在になる。大切なものは目に見えない。」といった普遍的なテーマを、だれもが共感できる形で表現した永遠の名作です。
このページでは「星の王子様」のざっくりとした内容とあらすじ、感想を書いてみました。あらすじはできるだけ会話をそのまま載せているため、全体で字数9000字ほどと少し長めになっています。

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まずは内容をざっくり解説!

6年前、一週間分の水しか持たない操縦士の「ぼく」は、サハラ砂漠に不時着し、翌日一人の少年に出会う。少年はバラの花が一本だけ咲くある小惑星(B612)から、いくつかの小惑星を経由して地球にやって来た。しかし地球に咲く多くのバラを見て、自分の愛したバラはありふれたつまらないものだと悲しむ。それに対しキツネが自分と仲良くなることを通じて「ほかに多くのバラがあったとしても、自分が時間をかけて世話をしたバラが一番愛おしい」ことを気づかせ、「大切なものは目に見えない」ことを教える。王子が地球にきて一年になる日、王子は毒蛇に噛まれることで体を置いて自分の小惑星に帰ると言う。そして悲しむ「ぼく」に対し「君は夜空を見上げて、その星のどれかの上で自分(王子)が笑っていると想像すればよい。そうすれば君は星全部が笑っているように見えるはずだから。」と言い、蛇に噛まれて砂漠に倒れた。

実はこの「星の王子様」、ぼくが不時着して王子様に会ってからの「王子様の思い出話」が物語の大半(下の2、3)を占めます。「思い出話」はあくまで王子様が飛行機を修理中のぼくに語っている話である、ということを忘れないようにしてください。なお、あらすじの1〜4の区分は、分かりやすくするたにめ管理人が区切ったものになります。

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あらすじ

1 王子様との出会い

〈僕が6歳ころの話〉
6歳ころ「ぼく(最後までぼくとしか表現されず名前は明かされない)」は画家になりたくて、ボアという大きな蛇が像を飲み込んだ絵を描いた。(主人公は王子様ではなくあくまでぼくです。)

これを大人たちに見せて、「怖くない?」と聞いた。しかし大人はこれを理解しようとせず、「どうして帽子が怖いんだい?」と言う。そこで今度はボアの内側を描いて見せた。

これを見た大人たちは「絵を描くのを止めて勉強しなさい」と言った。そして僕は6歳にして画家の道をあきらめてパイロットになった

〈ここから6年前のサハラ砂漠に不時着した時の話〉
6年前、飛行機が故障してサハラ砂漠に不時着した(ぼくは大人になっています)。人が住むところから1000マイルも離れているうえに飲み水が8日分もない。自力で修理するしかなく、砂の上に横になって眠った。最初の晩の夜明け頃、突然「ヒツジの絵を描いて」と声をかけられて、驚いて目を覚ますとそこには不思議な子供(王子)がいた
(後になってわかることですが、王子さまは地球にやってきてすでに1年近く経過しています。)

(これは後に僕が描いたその子の絵)
ヒツジの絵を描いたことがなかった「ぼく」は、自分の描けるボア(ヘビ)の絵を描いて見せた。するとその子は「ボア(ヘビ)に飲み込まれた像なんて欲しくないよ。ヒツジの絵を描いて」と言った。大人たちが決して理解できなかったボアの絵を、その子は瞬時に理解していた。

いくつかのヒツジを描いたが、その子は文句を言って受け取らない。そこでぼくはヒツジの入った箱を描いて渡してみた

そるとその子は明るい顔になって言った。「そう。ぼくが欲しいと思っていたのはこんな小さなヒツジだよ。ぼくの所は小さいから。」 そんなことまで想像していなかったぼくは、自分は年を取って大人になってしまったのかもしれない、と思った。

こうして「ぼく」は王子様と知り合った。
(ここから王子様が地球に来るまでとぼくに出会うまでの思い出話が語られますが、それが非常に長いです。以下2、3は全て王子様の回想話。最後の4で再び不時着後の飛行機修理中の時間に戻ります。)

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2 王子様の旅(地球まで) 6つの星と変な大人たち

「ぼく」は飛行機の修理をしながら王子様といろんなことを話し、一日ごとに、彼の星やそこを出てきた事情、そしてここに至るまでの旅のことを知ることになる。

〈ここからは王子様が住んでいた小惑星の話〉
彼は別の星からやってきた。それはふつうの家よりもちょっと大きいくらいのとても小さな星(「B612」と言う)で、3つの火山(膝くらいの高さ)がある。

小惑星には、バオバブのような悪い植物が芽を出すことがある。バオバブは大きくなる前に始末しないと、後からでは退治できなくなる。3本のバオバブの木を放置した結果、バオバブに覆われて破滅した小惑星もあった。このバオバブがまだ小さいうちに食べさせて駆除するために、ヒツジが必要なのだと王子様は言う。しかし王子様は「ぼくの星には世界中でたった一輪の花があるけれど、もしもヒツジが食べてしまったらその花はなくなってしまう。」と言う。それに対しぼくは「ぼくがヒツジの口にはめる口輪を書いてあげる。」と約束した(実際にこの口輪を書いてあげるのは終盤になります。重要なので覚えておいてください。)。

王子様の小惑星には、花びらが一重のあっさりした花しかなかったが、ある時輝くばかりに美しいバラが芽を出した。感動した王子様は「あなたはとてもきれいです。」と言って、じょうろできれいな水をかけてあげた(王子は植物と会話しています)。でも難しい性格のバラは「冷たい風に弱いの。ついたてはないかしら。」とわがままを言って彼を困らせ、二人は微妙にすれ違った。それでも王子様は彼の星をいい香りで包んでくれたこのバラを愛したが、あまのじゃくな性格の彼女(バラ)に振り回されて傷つき、やがてこの星を去る決意をする
(つまりバラとのケンカが王子様が自分の星を離れる理由になります。)

星を発つことになった日に、王子がバラに最後の水をやって泣きそうになりながら「さようなら」と言うと、彼女(バラ)は「私、ばかだったわ、私をゆるしてね。私はあなたを愛しているわ。」とやさしく言った。そして泣くところを見られたくなかった彼女(バラ)は「そこでぐずぐずしないで。行くと決めたんでしょ。」と王子様を送り出した。

〈ここからは王子様が彼の小惑星を発ってから地球にたどり着くまでの回想話〉
気が付くと王子様は小惑星325,326,327,328,329,330,などの近隣にいた(どうやってよその星へ移ったのかは書かれていない)。そこで彼はすべきことを見つけたり見分を広めたりするために、これら6つの星を一つずつ訪ねることにした。これらの星はいずれもとても小さく、各星々には大人が一人ずつしかいなかったが、ここで出会う大人たちはみんなどこか変だった。

1番目の星(権力)
1番目の星は小さな星に王様だけが住んでいる星で、王様は自分の体面を保つことのみに必死だった。王様は高貴な紫と白テンの衣装をまとって玉座に座っており、小さな星は全てその豪奢な衣装で覆われていたため、王子様は立っているしかできなかった。尊大で威厳に満ちた王様は王子様を法務大臣や大使に任じようとするが、退屈でつまらない王子様は、大人というのは変だな、と思ってその星を後にした。

2番目の星(人気)
2番目の星は称賛の言葉しか耳に入らないうぬぼれ男の星で、自分のことをこの惑星で一番美男子で、金持ちで、頭がいい、と言っているが、この星には彼しかいない。ひたすら拍手や崇拝を求めるうぬぼれ男にすぐ飽きて王子はその星を後にした。

3番目の星(快楽)
3番目の星は酒を飲むことを恥じ、それを忘れるために酒を飲む飲んだくれの星。これを見て憂鬱な気分になった王子様は、大人とは変わった人たちだと思ってすぐにその星を出た。

4番目の星(財産)
4番目の星は夜空の星の所有権を主張し、その数の勘定に日々を費やすビジネスマンの星。彼は5億162万2731個(この数字は第二次世界大戦を引き起こした国の国民の合計とされており、戦争を起こした者たちへの批判が込められている。)の星を所有し、もっと新しい星を買うために星を所有している、と言う。大人とは奇妙なものだと思い、王子はその星を後にした。

5番目の星(労働)
5番目の星は1分間に1回星が自転するため、1分ごとにガス灯の点火や消火を行うことになっている点灯夫のいる星。3歩で一周できるような小さな星だが、規則を遵守するため点灯夫は寝ることもできずに点火と消火を繰り返している。しかしこの点灯夫だけが自分以外のものの世話をしていたため、王子様は彼と友達になってもいいと思った。

6番目の星(研究)
6番目の星は自分の机を離れたことがない地理学者の住む星。分厚い本を何冊も書いた老紳士だが、地理学者なのに、海も山も川も町も砂漠も見たことがない。自分は机を離れず、探検家の話を聞くだけ。その地理学者の勧めで、7番目の惑星として地球を目指すことになった

(これら6つのエピソード(権力、人気、快楽、財産、労働、研究)は、時間を費やしすぎて人生において溺れがちなことを象徴していると言われています。王子様に変な大人たちと揶揄されますが、この後地球に到着すると地球にはこの変な大人たちが大量にいることが発覚します。地球は変な大人たちの塊である、とサン=テグジュペリは皮肉ってます。)

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3 王子様の旅(地球到着から) キツネと世界に一つだけの花

〈ここからは王子様が地球に到着してからぼくと出会うまでの回想話〉
7番目の星(地球)
7番目の星がこの地球だった。そこには、111人の王様、7000人の地理学者、46万2511人の点灯夫、90万人のビジネスマン、750万人の酔っぱらい、3億1100万人のうぬぼれ、約20億人の大人が住んでいた。地球にやって来た王子様は誰もいないことに驚く。ちょうど真上には王子様の星があった。すぐ近くにいた蛇に「こんばんは」話しかけると、蛇は「ここはアフリカの砂漠。砂漠だから人間はいないよ」と答える。
王子様「ぼくの星を見て!ちょうどぼくたちの真上にある。
蛇「どうしてここへ来たの?」
王子様「ある花との仲がこじれちゃってね。
蛇「私は船よりも遠くへ君を連れていける。私が触れれば誰でも自分が出てきた土地へ送り返される。いつか自分の星への思いが募ったら、きみを助けてあげられる。」
‘(王子様は地球で最初に出会った蛇とこのような会話をしますが、これは「蛇の毒で体はいったんここで死ぬけれど、魂だけ自分の星に戻れるよ」という意味らしい。)

王子様は砂漠を縦断し、岩や砂の中を随分歩いていくと、バラが咲きみだれる庭園へとたどり着いたそれまで彼は、宇宙に一本しかない特別な花を持っていると信じていたけれど、個々の庭だけで同じ花が5000本も咲いている。自分が持っていたのは普通の花でしかなかった、と思った王子様はとても悲しくなって泣いた。

(ここからは本作品の中で重要な個所になるため、できるだけ会話をそのまま記載しておきます)
そこにキツネが現れて「こんにちは」と言った。王子様が「一緒に遊ぼうよ」と提案すると、キツネは「おれは飼いならされていないからきみとは遊べないよ。飼いならす、というのは絆を作ることさ。」と言う。
キツネ「いいかい、きみはまだおれにとっては10万人のよく似た少年たちのうちの一人でしかない。きみにとっておれは10万匹のよく似たキツネのうちの一匹でしかない。でも、きみがおれを飼いならして絆を作ったら、おれときみは互いになくてはならない仲になれる。きみはおれにとって世界でたった一人に人になるんだ。
王子様「わかってきた。一本の花がいてね・・・彼女をぼくは飼いならしたんだ。
キツネ「きみがおれを飼いならしたらどんなに素晴らしいだろう。おれは金色の小麦を見るたび金髪のきみを思い出すようになる。お願いだ・・・おれを飼いならして絆を作ってくれ。友達が欲しかったら、おれを飼いならしてくれ!」
こうして王子様はキツネを飼いならした

そして出発の日のときが近づいたある日、キツネは言った。「もう一度あの庭園のバラたちを見てみな。きみのバラは世界に一つしかないってことがわかるはずだ。そして戻ってきたらおれにさよならを言ってくれ。お別れに一つ秘密をあげるから。」
そして王子様は、もう一度庭園のバラを見に行って気づいた。「きみたちはぼくのバラとぜんぜん似てないよ。きみたちはきれいさ。でも空っぽだよ。彼女(王子様の星のバラ)はきみたちを全部合わせたよりもっと大事だ。なぜって、ぼくが水をやったのは他ならぬあの花だから。ぼくがガラスの鉢を被せてやったのはあの花だから。ついたてを立ててやったのはあの花だから。なぜって、あれがぼくの花だから。

戻ってきた王子様はキツネに「さようなら」と言った。それに対しキツネが言う。「じゃあ秘密を言うよ。ものは心で見る。肝心なものは目に見えない。君がバラのために費やした時間の分だけ、バラは君にとって大事なんだ。人間たちはこういう真理を忘れている。飼いならしたものには、いつだってきみは責任がある。」

(美しい人(バラ)はたくさんいるかもしれない。でも愛情とはそのようなものではない。最初から運命の男女なんてこの世に存在しない。大事な人(バラ)を大切に思えるのはどれだけ時間や情熱を費やしたのか、なんだ。費やした時間と情熱の分だけ、きみにとってその人を特別な人(バラ)にするんだ。特別な人には責任がある。彼女(バラ)の元へ帰ってあげなよ。キツネはこう言いたかったのかもしれませんね。)

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4 王子様との別れ

(ここで長い王子様の回想話が終わり、6年前の砂漠に不時着した後の「ぼく」と王子様の話に戻る。)
ぼくは飛行機を修理しながら、ここに至るまでの王子様の長いお話を聞き続け、既に8日が経過していた。そして持っていた8日分の水がついにそこを尽いた。キツネの話をしようとする王子様に対し、「キツネの話をしている場合じゃないんだよ。」と遮り、2人で井戸を探しに砂漠を歩き出す。この広大な砂漠で井戸を見つけるなんて無謀極まりないが、他に飲み水を得る方法はない。夜になって疲れて座り込むと、王子様が言う。「星がきれいなのは、見えないけれでどこかに花が一本あるからなんだ。砂漠がきれいなのは、どこかに井戸を一つ隠しているからだよ。」それを聞いてぼくはわかった。「星でも、砂漠でも、きれいに見えるのは何かを隠しているからなんだ!一番大事なものは目に見えない・・・王子様がぼくの心をこんなに揺さぶるのは、彼が一本のバラに忠実だからだ。
眠ってしまった王子様を抱きながら歩き続け、明け方に「ぼく」はついに井戸を発見した。

そこには村などないのに、滑車と桶と綱のそろった村にあるような不思議な井戸だった。ぼくが桶を井戸の縁まで引き上げて、2人で水を飲んだ。日の出を迎えて砂漠の砂がはちみつ色に染まっていくと、王子様が「ぼくのヒツジのための口輪を書く約束をわすれないで!(ヒツジがバラを食べないように)」と言った。そこでぼくは口輪を一つ書いて手渡した
王子様は「明日がぼくが地球に落ちてきた記念日なんだ・・・場所もちょうどここのすぐ近くなの・・・ぼくはここで待っているから、あの飛行機を直したら明日の晩、ここに帰ってきて・・・」と言う。それを聞いた「ぼく」は、王子様とのお別れを予感し、不思議な悲しみに襲われる。ぼくはキツネの話を思い出した。王子様に飼いならされて絆ができてしまったのだ。

翌日の夕方、「ぼく」が修理してから戻ってみると、王子様が井戸の近くの古い石の壁の上に座って誰かと話している。王子様「きみのは強い毒?ぼくは長く苦しまないよね?」そこには、30秒で人を死なせることができる黄色い蛇が、王子様の方へ頭を持ち上げていた。「ぼく」に気が付いた蛇は身を隠し、王子様はぼくに言った。「きみの機械が直ってうれしいよ。きみは自分の家に帰れるね・・・ぼくも今日、自分の所へ帰る・・・すごく遠いから…難しいんだ・・・」ぼくは間もなく永久に会えなくなるだろうことを悟った。彼が笑う声を2度と聞けなくなると感じ、心が凍るような思いがした。さらに王子様は「今晩でちょうど1年なんだ。1年前にぼくが落ちてきた所の真上をぼくの星が通る・・・大事なことは目では見えない・・・花の時と同じなんだよ。どこかの星に咲いている花が好きになったら、夜の空を見ることが楽しくなる。全部の星に花が咲く。ぼくの星はたくさんの星の中に混ざっている。だからきみはどの星のことも好きになって、全部の星がきみの友達になる。ぼくはきみに贈り物をあげたい・・・・」と言って笑った。「星の意味は人ごとに違う。きみだけが他の人と違う星を持つ。夜の空を見て、あの星の1つにぼくが住んでいてそこでぼくが笑っている、ときみは考えるだろう。だから全部の星が笑っているように思える。きみにとって星は笑うものだ。」そう言って彼はまた笑った。それから真剣な顔に戻って言う。「今晩…君は…来ちゃいけない。ぼくは死んだみたいに見えるかもしれない。しかたないんだ。見に来ない方がいい。」

しかしぼくは彼の元へ行った。気づいた王子様は「だめだよ。きみはつらい思いをするよ。ぼくは死んだように見えるかもしれないけれど、でもそれは本当のことじゃないからね・・・ぼくの星はとても遠い。この体は持っていけないんだ。」と言って泣いていた。「わかるだろ・・・ぼくの花・・・ぼくは責任があるんだ!あの子はとっても弱いから。
王子様の足首のあたりで何か黄色いもの(ヘビ)が光ったしばらくの後、彼は気が倒れるように静かに倒れた。

(6年後の現在)
それからちょうど6年経ってぼくの悲しみは少し消えた。それでもぼくは、彼が無事に自分の惑星に帰ったことを知っている。なぜなら、明け方、彼の体はそこになかったから。でも一つだけ気になっていることがある。口輪の絵をかくとき、革ひもを付けるのを忘れたことだ。あの星ではヒツジは花を食べてしまっただろうか。これによって宇宙の見え方はすっかり変わってしまう・・・

ヒツジは花を食べたのか?大人たちはこれがどんなに大事なことか理解できないだろう!

これはぼくにとって世界で一番美しくて、一番悲しい風景だ。王子様は地球のここに到着したし、ここから去っていった。この風景をしっかり見ておいてほしい。そしてもしここを通ることになったら、この星の下で少し待っていただきたい。金髪の少年が現れたら、それがだれかあなたにもわかるだろう。その時はぼくの悲しみを思い出して、すぐに手紙で伝えてほしい、彼が戻ったと・・・

中田さんの解説もおすすめです。

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解説と感想

アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ(1900-44)は元々貴族の家柄の生まれなのですが、陸軍の飛行士となった後、1926年に作家デビューします。1935年にフランスーベトナム間最短時間飛行記録に挑戦中、機体トラブルでサハラ砂漠に不時着して絶望視されるも徒歩でカイロに生還した、という体験があり、この経験が「星の王子様」に反映されたと言われています。フランス軍のパイロットだったサン=テグジュペリは、第二次世界大戦開戦後フランスがドイツに降伏するとアメリカに亡命し、ニューヨークから自由フランス空軍に志願し、元の北アフリカ戦線の偵察飛行隊に着任しますが、44年7月31日に出撃したまま帰還せず消息不明となりました。それから半世紀以上経った1998年、サン=テグジュペリと妻の名前が入ったブレスレットがマルセイユ沖で彼の搭乗機の残骸と共に発見されます。これを撃墜したドイツ軍パイロットが後に判明し、彼の作品の愛読者だったため「あの操縦士が彼だと知っていたら撃たなかった」と悔やんだそうです。要するに敵軍の兵士すらも虜にしていた訳ですね。実際に彼は既に有名作家であり、サン=テグジュペリが所属する部隊とは戦いたくないと語っていた他のドイツ軍兵士もいたそうです。
まさに「ペンは剣よりも強し」ですね!

この作品の序盤では、ぼくが王子様にボア(ヘビ)の絵を描いて見せると、王子様は「ボアに飲み込まれた像なんて欲しくないよ。ヒツジの絵を描いて」とボアの絵のカラクリを見破り、ヒツジの入った箱を描いて渡すと「そう。ぼくが欲しいと思っていたのはこんな小さなヒツジだよ。ぼくの所は小さいから。」と想像力を働かせて絵を解釈していましたね。
そして終盤では「気になっていることは口輪の絵をかくとき、革ひもを付けるのを忘れたことだ。あの星ではヒツジは花を食べてしまっただろうか。大人たちはこれがどんなに大事なことか理解できないだろう!」と王子さまの星に帰った後の、バラとヒツジの運命を気にかけています。
この小説は大人では気づけない発想に満ちており、あくまで想像力豊かな子供の視点のまま描いています

実は、この作品の冒頭には「小さな男の子だった時のレオン・ウェルトに」と献辞があります。レオン・ウェルトはサン=テグジュペリの22歳年上のユダヤ人の親友で、ジャーナリスト、作家、批評家。熱烈な平和主義者で、ナチスの迫害を避けるため、フランス東部の別荘に隠れ住んだ人物とされます。要するにこの作品は「まだ小さかった頃の親友」に向けて書かれたもの。だからこそ子供の視点のまま終始描ききったのでしょうね。

 

この「星の王子様」は、1943年の発表以来世界的なベストセラーとなって支持され続けています。なぜなのでしょうか。

サン=テグジュペリが発表後間もなく命を落としたこともあるかもしれませんが、「仲良くなるとはどういうことなのか」「費やした時間の分だけその人にとって大事な存在になる。」「大切なものは目に見えない。」といった普遍的なテーマを、誰もが共感できる形で描いたことに最大の理由があるように思います。
これは世界中のすべての人に必ず当てはまるどころか、社会を築く全ての動物にすら共通するテーマなのかもしれません。「人間たちはこういう真理を忘れている。というキツネの嫌味に正直ドキッとしました。

ですがこの小説を読んでいると、他の理由にも気づかされます。
冒頭に「小さな男の子だった時のレオン・ウェルトに」と献辞があるように、あくまでこの作品は「まだ小さかった頃の親友」に向けて書かれたものになります。この「星の王子様」が純粋に「長い時間を費やして築いた親友」に向けて書かれたものだったからこそ「友情や愛情について考えさせる小説」として世界中の人々支持され続けてきたのかもしれない。

ぼくはそのように思いました。

もし可能ならば、ぼくは天国のサン=テグジュペリに手紙を書きたい。「金髪の少年には会えなかったけど、学生時代ずーっと仲が良かった一番の親友と、今また会いたくなったよ!」と。

 
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