【30分でロミオとジュリエット】あらすじ・内容・解説・感想・登場人物!【シェイクスピア】

ロミオとジュリエット」は、1595年頃イングランドの劇作家ウィリアム・シェイクスピアが書いたとされる戯曲。イタリア・ヴェローナの長年対立する二つの名家の息子と娘が恋に落ち、永遠の愛を誓うもまもなく破局して二人は自死を選ぶという悲しい恋愛物語。シェイクスピアの代表作で、世界恋愛悲劇の傑作と言われています。
この「ロミオとジュリエット」について、あらすじ・内容・解説・感想を書いてみました。2万字にも及ぶビッグコンテンツになってしまいましたが、最後まで読んで頂けたら嬉しいです。

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まずは簡単な内容と解説!

(※ここでは「ロミオとジュリエット」の成立過程について解説しています。お急ぎの方はあらすじまで飛ばしてもらって構いません。)

シェイクスピア(1564〜1616年)といえば、ダンテ、ゲーテと並ぶ「世界三大詩人」の一人に数えられる文豪で悲劇の王様。「ハムレット」「マクベス」「リア王」「オセロ」の「四大悲劇」が特に有名ですが、「ロミオとジュリエット」は少しジャンルの異なる「恋愛悲劇」と言われています。

シェイクスピアの特徴は、卓越した人間観察眼からなる内面の心理描写と言われていますが、実は彼の作品は基本的にゼロから物語を組み立てているわけではなく、既存の物語やエピソードをベースに翻案・リメイクする手法をとっています。

この「ロミオとジュリエット」は、14世紀のヴェローナ(イタリア北部・ミラノとベネチアの中間くらい)を舞台にした物語として1595年頃に書かれた作品ですが、これにも元となる種本があります。彼が直接種本としたのはアーサー・ブルックの「ロミウスとジュリエットの悲しい物語」(1562年イギリス)とされていますが、実はこれも別のイタリア人作家の詩の翻案(海外の文学作品などの筋や内容を借りて、人名、地名などを変えて改作すること。前人の作品を趣意を言い換えて作ること。)であり、当時のヨーロッパには既に類似の物語が多数存在していたようです。

しかしこれらの作品は、大昔のあるギリシャ神話が元になっているとされており、それがオウィディウス(BC43〜AD18年)の変身物語(※ギリシャ・ローマ神話の登場人物たちが様々なものに変身していくエピソードを集めた物語)に収録されている「ピュラモスとティスベ」。

その大元のギリシャ神話によると、「ピュラモスとティスベ」は概ね次のようなお話になっています。

昔バビロン(メソポタミア地方の古代都市)の町に、同じ家屋の壁1枚に仕切られた隣同士にピュラモスという美青年とティスベという美少女が住んでおり、お互い恋い慕うようになっていたが、二人の親同士は仲が悪くどちらも恋愛どころか顔を合わせることすら許さなかった。二人は壁に開けた小さな穴を通して密かに愛を囁いていたが、ある時駆け落ちを決意する。待ち合わせ場所の白い実をつける桑の木の下にティスベが先に到着すると、雄牛を食い殺したばかりのライオンが現れたため、彼女はヴェールを落として逃げる。そこにピュラモスが遅れてくると、ライオンの足跡と血まみれのヴェールを発見し、彼女は食い殺されたと思い込んで自分の胸に刃を刺して息絶える。直後にティスベが戻って来ると、自分のヴェールを握りしめて息絶えているピュラモスを見つけ、絶望のあまりその刃を自分の胸に刺してピュラモスの後を追う。それ以来桑の木は二人の血で染まったような赤黒い実をつけるようになり、深く嘆き悲しんだ両家の親達は二人を同じ墓に埋めてやった。

この物語が「ロミオとジュリエット」の大元になったとされていますが、もともとは古代バビロン(メソポタミア・現在のイラクあたり)を舞台にしたお話だったのですね。この「ピュラモスとティスベ」は紀元前に既に成立していたわけですが、中世ヨーロッパでは既に有名だったようで、あのダンテ(1265〜1321年)も「神曲」(西暦1300年頃成立)の中で引用しています。煉獄の頂付近(第27歌)で炎を前に尻込むダンテに対し、案内人のウェルギリウスが、想い人ベアトリーチェとダンテをティスベとピュラモスになぞらえて励ますシーンがあります。面白いことに同じ「神曲煉獄篇第6歌には「モンタギュー(モンテッキ)家とキャピュレット(カッペルレッティ)家の対立」が、イタリア・ヴェローナの対立する2家族、という別のエピソード(※当時のヴェローナでは皇帝派と教皇派の対立があり、この2家族が仲が悪かったのも有名な実話だったようです。)として引用されています。
(※「神曲」というのは、西暦1300年の4月頃に詩人ダンテ・アリギエーリが生きたまま一週間程かけて地獄・煉獄・天国を旅してきたというお話。)

これがさらに時代を下った1530年、イタリア人作家ポルタ(ポルト)によって、初めてこの二つのエピソードを融合した物語が誕生します。それが14世紀のイタリア・ヴェローナを舞台とするモンタギュー家のロメオとキャピュレット家のジュリエッタの悲劇「二人の高貴なる恋人の物語」。
(※はっきりしたことがわからなかったのですが、いくつかある種本のどれかにモンテッキ家のロミオ(ロメオ)とカッペルレッティ家のジュリエット(ジュリエッタ)が実在の人物であると記載されているようです。ただし恋愛は空想らしい。)

この後ヨーロッパでは、このイタリア・ヴェローナを舞台としたいわゆる「ロミオとジュリエット」のリメイク・翻案が繰り返され、最終的に1595年頃にシェイクスピアが書きあげた作品が、最も有名な「ロミオとジュリエット」として現在まで伝わっている、ということになるようです。

以上のことを鑑みてみると、このヴェローナを舞台とする「ロミオとジュリエット」については、両家の対立は事実だが恋愛悲劇は創作であって事実に基づく話ではない。しかし大元となった「ピュラモスとティスベ」の恋愛悲劇については、古代バビロンにおいて何らかの事実に基づいている可能性がある、と言えるのかもしれません。

なおこの作品は、劇の台本として書かれた戯曲(ぎきょく)であって、小説ではありません。なのでほぼ登場人物の会話のみの構成で、概ね2時間ほどで終了する内容になります。また、当時の劇はほとんど無背景の小型劇場で行われており、現代劇よりもより俳優のセリフから生み出される雰囲気に重きが置かれていたそうです。

 

登場人物!

〈モンタギュー家〉

ロミオ
モンタギュー家の一人息子。ロザラインに夢中だったが、宴会でジュリエットを見かけて一目惚れをする。ティボルトを殺してヴェローナを追放になり、ジュリエットが亡くなったという知らせを聞いて帰ってくる。そしてジュリエットが死んだと思い込んだまま、毒を飲んで彼女の胸の上で死ぬ。
モンタギュー・モンタギュー夫人
ロミオの両親でキャピュレット家と敵対関係にある。夫人はロミオの追放直後に亡くなる。
ベンヴォーリオ
モンタギューの甥でロミオの友人。
エイブラハム
モンタギュー家の召使い。
バルサザー
ロミオの召使い。マンチュアまで来て、ロミオにジュリエットが亡くなったことを知らせる。

〈キャピュレット家〉

ジュリエット
キャピュレット家の一人娘で13歳。2週間後に14歳になる予定。一貫してロミオ愛しており、パリスとの結婚を避けるために眠り薬で二日間眠るが、その情報が伝わっていないロミオは、死んだと思って毒を飲んで胸の上で死ぬ。直後に目覚めたジュリエットは、ロミオの短剣で胸を刺して後を追う。
キャピュレット・キャピュレット夫人
ジュリエットの両親でモンタギュー家と敵対関係にある。婦人はジュリエットの年にはすでにジュリエットがいた、と言っているのでおそらくまだ20代。
ティボルト
キャピュレット夫人の甥。喧嘩っ早い性格でマキューシオを剣で殺してしまうが、直後に激昂したロミオに殺される。
ジュリエットの乳母
要領の悪い説明をする人物。ジュリエットの良き相談相手だったが、ロミオ追放後にロミオを非難し、パリスを支持したためジュリエットの信頼を失う。
ピーター
ジュリエットの乳母の召使い。
サムソン
キャピュレット家の召使い。
グレゴリ
キャピュレット家の召使い。

〈太守一族〉

エスカラス
ヴェローナの太守で公爵。以前からモンタギュー家とキャピュレット家の対立を気にかけており、冒頭の両家の大喧嘩やロミオの殺人事件では寛大な処置を行い、悲劇的な結末を迎えた最後の場面では両家の融和を促す。
パリス
太守の縁戚で青年貴族。キャピュレット夫妻に気に入られており、ジュリエットと結婚する方向で話が進む。しかしその結婚を避けるためにジュリエットは眠り薬を飲んで死んだことになり、その墓を掘り起こそうとしたロミオを捕らえようとして逆に殺される。
マキューシオ
太守の縁戚でロミオの友人。ティボルトに刺されて命を落とす。

〈その他〉

僧ロレンス
フランシス派修道僧。追放になったロミオにいずれ戻れるように手配することを約束して励ます。パリスとの結婚を避けようとするジュリエットに対し、ねむり薬を飲む策を提案する。
僧ジョン
フランシス派修道僧。ロレンスに頼まれてマンチュアのロミオに「ジュリエットが眠り薬を飲んで死んだことになっていること」を伝えるはずだったが、疫病の隔離によりロミオに正しい情報を伝えることができず、悲劇が起こる。
薬屋
マンチュアでロミオに毒薬を売る。

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あらすじ!

あらすじに入る前に、時系列について簡単に説明しておきます。第一幕第1場の冒頭でモンタギュー家とキャピュレット家の大ゲンカが起こりますが、これが日曜日の午前9時頃。その日のうちに宴会でジュリエットに出会って一目惚れをしますが、翌日には殺人事件を起こしヴェローナを追放。ジュリエットは急遽水曜日にパリスと結婚することになり、これを避けるために火曜日の夜に眠り薬を飲む。そして一旦死んだことになって木曜日の夜に目覚めますが、その直前にロミオはパリスを殺し、ロミオは自殺。目覚めたジュリエットもすぐに後を追い、最後にモンタギュー家とキャピュレット家が和解するのが金曜日の未明。つまり始まりから終わりまでほぼ5日間ということになり、この短い期間に畳みかけるようにいろんなことが起こります。
場所は14世紀のイタリア・ヴェローナ。モンタギュー家とキャピュレット家は、どちらもヴェローナの名門だったが、長い間仲が悪かった、という前提です。

 

第一幕

第一幕 第1場 ヴェローナ広場

日曜日(1日目)の朝9時頃
キャピュレット家の召使いサムソンとグレゴリが、モンタギュー家の陰口を叩きあっていると、モンタギュー家の召使いエイブラハムが通りかかり喧嘩が始まる。そこにモンタギューの甥のベンヴォーリオが剣を抜いて仲裁に入ると、キャピュレットの甥のティボルトが戦いを挑んでくる。さらにそこに騒ぎ嗅ぎつけた市民やキャピレット夫妻・モンタギュー夫妻も駆けつけ、キャピュレット一門とモンタギュー一門の大喧嘩に発展する

そこに従者を伴ったヴェローナ太守が現れ仲裁に入る。両家は過去にも度々騒ぎを起こしており、太守に厳しい警告を受けたが、今回だけは全員許され帰らされた。しかしキャピュレットだけは太守と一緒に連れて行かれ、モンタギューは今日の午後町の法廷に出頭することを命じられる。

みんなが立ち去った後、モンタギュー夫妻とベンヴォーリオがロミオについて話している。近頃ロミオの様子がおかしい。何やら一人で思い悩んでいることが多く、原因を聞いても答えないらしい。

そこへロミオが登場すると、ベンヴォーリオは原因を探ることを約束して、モンタギュー夫妻は立ち去る。

ベンヴォーリオがロミオに問い詰めると、ロミオはある女性(ロザライン)の美貌の虜となり恋をしている。そして彼女のことが忘れられなくて苦しんでいる。と白状する。そんなロミオに対し、ベンヴォーリオは「もっと他の美人も見てみたまえ。」とアドバイスする。

 

第一幕 第2場 街上

日曜日(1日目)の午後と思われる
キャピュレットと太守の縁戚の青年貴族パリスが会話している。パリスは今年で14歳になるキャピュレット家の一人娘・ジュリエットを嫁に迎えたがっているが、キャピュレットはまだ早すぎると思っており、欲しければ自分で本人に言いよって心をつかめと言っている。そして今夜、キャピュレット家で恒例の宴会(仮装パーティー)を開いて気の合う人たちを大勢招くことになっているから、パリスも是非参加して欲しいと誘う

そしてキャピュレットは、その宴会に誘う人のリストを書いたメモを召使いに渡し、「ヴェローナ中を駆け巡って、ここにある名前の方々を誘ってきなさい。」と命じる。

早速メモを片手にヴェローナ中を探しに行く召使いだったが、彼は字があまりよく読めないらしい。そしてロミオとベンヴォーリオを見つけ、彼らがモンタギュー家の人間と知らずにメモを見せて聞いてしまう。メモを見たロミオは今夜キャピュレット家で宴会があることを知り、そこに片思いのロザラインも参加予定であることを知る。召使いは「あなたがモンタギュー家の人間でなかったら、あなたも遊びに来てください」と言って去っていった。

ロミオにロザライン以外の女性を見せて恋の病を覚ましてやろうと思ったベンヴォーリオは、ロミオをこの宴会に誘う。ロミオもロザライン見たさに宴会への参加を決意する。

 

第一幕 第3場 キャピュレット家の一室

日曜日(1日目)の宵、宴会前
キャピュレット夫人と娘のジュリエット、そして乳母の3人がジュリエットの結婚相手について会話している。ジュリエットは2週間後に14歳の誕生日を迎える予定だが、まだ結婚については考えていない。そんなジュリエットに対し、夫人は今夜の宴会に出席予定のパリスが、ジュリエットを嫁に貰いたがってる旨を伝える。婦人も乳母もパリスを絶賛してジュリエットに勧めるのに対し、ジュリエットは「好きになれるように、お目にかかってみるわ。目で見て、それで好きになれるものならね。」と冷静に答える。

そこへ召使が現れ、お客様方の到着を知らせる。

 

第一幕 第4場 街上

日曜日(1日目)の宵、宴会前
ロミオとベンヴォーリオ、そして太守の縁戚でロミオの友人でもあるマキューシオの3人が、どうやってキャピュレット家の宴会に乗り込むかを相談している。ロミオの心は恋の病で相変わらず重い。モンタギュー家の人間であることを隠す必要があるため、仮面をつけていき、入ったらみんなで一斉に踊りだそう、と言いあっている。ロミオは「今夜のこの宴をきっかけに運命の恐ろしい力が働き出し、不慮の死という忌まわしい刑罰が降りかかるのではないか」という意味深な胸騒ぎを吐露する。そして運命を神に祈ってキャピュレット家の宴に入っていく

 

第一幕 第5場 キャピュレット家の広間

日時は日曜日(1日目)の夜
キャピュレット家では、給仕人たちが慌ただしく食事の準備をしている。

そして宴会が始まる

キャピュレットは、ジュリエット以下家族を伴って客と仮装者を迎えている。キャピュレットは歓迎の挨拶をすると、テーブルを畳んで火を消す。そして音楽が始まりみんなで踊りだす。

ロミオは聖地エルサレムへの巡礼者の姿に仮装している。そのロミオはジュリエットの美しさに目を奪われ、勝手に盛り上がって独り言を始める。「世の女たちに立ち交じって一際目立つあの美しい姿は、まるでカラスの群れに伍する白鳩の風情だ。あの手に俺の手を触れてみたいものだ。俺の心は今まで恋をしたのだと言えるだろうか?否!真の美しさを見るのはこれが初めてだから。」
(※ロザラインを忘れ完全にジュリエットに一目惚れしましたが、ロミオはジュリエットがキャピュレットの娘だということをまだ知りません。)

この声(独り言)を聞いたキャピュレット夫人の甥・ティボルトは、モンタギュー家のロミオだと気づいて激怒する。「剣を持って来い。ちくしょう、よくも来おったな。我が一門の面目にかけて、叩き殺してくれる。」
(※モンタギュー家とキャピュレット家は長年敵対関係にあった上に、今朝大喧嘩をしたばかりです。)

この様子を見たキャピレットはティボルトを止める。キャピュレットもロミオに気づくが、キャピュレットはロミオのことを「立派な紳士で、身持ちも正しい」と一目置いている。怒りと屈辱に震えるティボルトに対し、キャピュレットは「この家で危害を加えることは許さん。我慢しろ。」と釘を刺す。

ロミオは完全に巡礼者になりきってジュリエットに言い寄っている。「おお、私の聖女様、私の唇にもお許しくださいませんか?」と言ってジュリエットにキスをする。
ロミオ「さあ、これで私の唇の罪が清められました。あなたの唇のおかげで。」
ジュリエット「ではその拭われた罪は、私の唇が背負うわけでね。」
ロミオ「ああ、なんという優しいお咎めだ。もう一度その罪をお返しください。」と言ってもう一度キスをする。

そこに乳母がやってきて、ジュリエットを母親の元に呼ぶ。そしてロミオは、乳母に告げられてジュリエットがキャピュレットの娘であることを知る。ロミオは「とんだ高い取引だった!俺の命は、まるで敵に与えた債権だ。」と呟いてベンヴォーリオたちと去っていく。

男が仇敵モンタギュー家のロミオであると乳母から告げられたジュリエットは「たった一つの私の愛が、たった一つの私の憎しみから生まれようとは。行末の案じられる恋だこと。」と呟いた。

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第二幕

第二幕 第1場 キャピュレット家の庭園

日曜日(1日目)の深夜、宴会の後
すっかりジュリエットに夢中になったロミオは、ジュリエット恋しさにキャピュレット家の庭園に忍び込んで隠れる。そこにベンヴォーリオとマキューシオがロミオ探しに来る。二人はまだロミオがロザラインに夢中だと思い込んでいるが、探しても見つからないので家に帰る。

 

第二幕 第2場 キャピュレット家の庭園

日曜日(1日目)の深夜、宴会の後
ロミオがキャピュレット家の庭園に潜んでいると、屋敷の2階の窓にジュリエットが現れる。見つかれば、ロミオは命が危ない。月明かりの夜で、ロミオからはジュリエットが見えるが、ジュリエットはロミオが見えない。ロミオがジュリエットの美しさに見とれていると、ジュリエットは独り言を始める

ジュリエット「ああ、ロミオ様、ロミオ様、なぜロミオ様でいらっしゃいますの。あなたのお父様をお父様でないといい、あなたの家名をお捨てになって!それがお嫌なら、せめて私を愛すると、宣言していただきたいの。そうすれば、私も今を限りキャピレットの名を捨ててみせますわ。ロミオ様、そのお名前をお捨てになって、そしてそのお名前の代わりに、この私の全てをお取りになっていただきたいの。」
(※全てジュリエットの独り言です。つまり両家が今のような敵対関係のままであれば、結婚などできるはずがない。しかしどちらかが家を外れれば(名前を捨てれば)、一緒になることは可能なはずだ。と言いたいようです。)

これを聞いたロミオは暗闇の庭園から答える。「お言葉通り頂戴しましょう。ただ一言、僕を恋人と呼んでください。そうすれば今日からロミオではなくなります。」
(※あなたと一緒になれるのであればモンタギューの人間を辞めても構わない、という意味だと思われます。)

ジュリエット「あなたは誰?夜の闇に隠れて、人の秘密を立ち聞くなんて?でも声にはっきり聞き覚えがある。ロミオ様?あのモンタギュー家の、じゃございません?それにしても、なぜここに?あなたの身分柄を考えれば、もし家の者に見つかれば、死も同然の場所です。」

ロミオへの愛のささやきを立ち聞きされたことを恥じらうジュリエットに対し、ロミオは見つかることを全く恐れておらず、ただひたすらジュリエットへの愛を誓おうとする。そしてジュリエットも喜んで「私の誓いは、先に差し上げてしまいました(立ち聞きされた)。ただ、もう一度差し上げてみたいの。」と返す。

すると奥から乳母のジュリエットを呼ぶ声が聞こえ、ジュリエットは何度か奥に戻る。ロミオはあまりにも幸福で、本当とは思えないいる。

最後にジュリエットは「明日9時に使いを送りますから、もしもあなたの愛が真実で本当に結婚するつもりがあるなら、いつどこで式を挙げるのかを、その使いに知らせてください。」とロミオに伝えて別れる。もう朝が訪れようとしていた。

ロミオは、これから僧ロレンスの庵室へ行き、相談と幸福の報告をすることにした。

 

第二幕 第3場 僧ロレンスの庵室

月曜日(2日目)の明け方
僧ロレンスの庵室にロミオがやって来る。こんな時間に現れたロミオを不審に思った僧ロレンスは、さてはロザラインと一緒だったのでは?と勘ぐるが、ロミオは既にロザラインのことをすっかり忘れている。

ロミオは「あのキャピュレット家の美しい娘に、私は恋の真心を捧げてしまったのです。あちらでも私を思ってくれています。残るはただ神父様のお力で、神様の前にしっかり結ばれること、それだけなのです。私たち二人を結婚させてください。」といきなり結婚の仲介をお願いする。

僧ロレンスは、ロミオがあれほどまでに想い焦がれていたロザラインをあっけなく諦めたことに驚くが、この縁組が両家の長年に渡る怨恨を心からの親しみに変えるきっかけになるかもしれないと思い、快諾する。

 

第二幕 第4場 街上

月曜日(2日目)の正午頃
マキューシオとベンヴォーリオが街で会話している。二人は昨晩突然消えたロミオがどこに行ったのかを話しており、まだロザラインに夢中だと思い込んでいる。二人の話によるとティボルトがロミオの家に挑戦状を送りつけたらしいが、ティボルトの剣の腕は相当強いとのこと。

そこへロミオが現れると、二人は「昨夜はいっぱい食わせやがったな。」とロミオに文句を言う。

そこにジュリエットの乳母とその乳母の召使い・ピーターが現れ、マキューシオとベンヴォーリオは去っていく。乳母はジュリエットにロミオを探して来るように言われており、ロミオは今日の午後、ロレンス神父の庵室でジュリエットと懺悔をすませ、そのまますぐに結婚する予定であるとの伝言を乳母に託す。それから1時間後に逃走用の長梯子を下男に持たせていくから、乳母はそれを持って修道院の塀の陰で待っていてくれと頼む。

さらに乳母は、別れ際にこんな話をする。「パリス様とおっしゃる貴族の若者が大変お嬢様にご執心のようでございますが、お嬢様(ジュリエット)はあんな男(パリス)の顔を見るよりは、ヒキガエルの方がマシだとおっしゃるんでございますよ。」
(※パリスはジュリエットに嫌われたようです。)

 

第二幕 第5場 キャピュレット家の庭園

月曜日(2日目)の正午頃
キャピュレット家の庭園では、ジュリエットが朝9時に使いに出した乳母の帰りを待っていた。

お昼頃になって乳母とピーターが帰ってくるが、乳母は浮かない顔をしている上にもったいぶって、言いたいことがなかなか伝わらない。しかしようやくロミオの話を始めるとほぼべた褒め。

そしてさらにロミオの伝言を伝える。「これからすぐに、ロレンス上人様の庵室へお起こしなさいませ。お嬢様を奥様になさろうとして、ロミオ様がお待ちでございます。お嬢様は早く庵室へ起こしなさいませ。」
これを聞いたジュリエットは、喜んで出かけて行った。

 

第二幕 第6場 僧ロレンスの庵室

月曜日(2日目)の午後
庵室で僧ロレンスとロミオが待っていると、ジュリエットがやってくる。二人は一緒になれる喜びと幸福を確かめあっている。

僧ロレンスは、急いで結婚式を済ませるため、二人を教会に連れて行く
(※この後はっきりとした結婚の描写はありませんが、二人はロレンス神父の元で密かに結婚をした、ということになるようです。)

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第三幕

第三幕 第1場 ヴェローナ街上

月曜日(2日目)の午後
ヴェローナの街でベンヴォーリオとマキューシオが話をしている。彼らはまだロミオとジュリエットの関係を知らない。そこにティボルトが現れ、マキューシオにロミオと音を合わしたと文句をつけるが、マキューシオは否定する。

そこにロミオが現れると、ティボルトはロミオから受けた数々の無礼に怒っており、剣を抜かせようとする
(※ティボルトは、昨日の宴会で敵対関係にあるロミオが仮装して紛れ込み、ジュリエットに夢中になっていたことを言っているのだが、ロミオはティボルトに正体がバレたことに気づいていない。さらにティボルトはジュリエットの従兄弟にあたり、ジュリエットと結婚すればロミオとティボルトも親戚になるはずなのだが、その話はここではまだロミオしか知らない。)

そんなロミオは「僕が君に無礼をした覚えはない。ティボルト君、詳細は言わねば分かるまいが、むしろ僕は君の想像以上に君を愛している。」と言って剣を抜こうとしない

それを聞いた事情を知らないマキューシオは「ああ、なんて恥かきな、みっともないご機嫌取りだ!」とロミオに呆れて剣を抜き、逆にティボルトを挑発する。

するとティボルトも剣を抜き、斬り合いが始まる。そんな二人をロミオは必死に止めようとするが、ティボルトがロミオの腕の下からマキューシオを刺し仲間と共に逃げていく

深手を負ったマキューシオは、一旦別の場所に運ばれるが、まもなく息を引き取る。マキューシオは太守公爵の身内で、ロミオの親友だった。

ティボルトが再び戻ってくると、今度はロミオが怒りに燃えている。「さあ、ティボルト、さっき貴様のくれた悪党呼ばわりは、今こそ貴様に返してやる。」

二人は剣を抜き宛あって戦い、ティボルトが倒れて死んだ。これを見たベンヴォーリオは、急いでロミオを逃がす。ロミオは自分のやった行いを激しく後悔しながら逃げていく。

2件の殺人に市民たちは騒ぎ、まもなく家来を従えた太守公爵と、モンタギュー夫妻・キャピュレット夫妻が現場に現れる。そしてベンヴォーリオが事の経緯を太守に説明する。「発頭人はティボルトです。ロミオは挑発されても言葉穏やかで喧嘩に乗らず、マキューシオとの切り合いも止めようとしたが、マキューシオがティボルトに殺されると、逆上して斬り合いが初まり、斬り殺してしまった。」

さらにマキューシオは「殺したのは誤りですが、ロミオが先に罪を犯して、国法によって絶つべきだったティボルトの命を断ったに過ぎません。」とロミオを庇うが、太守はロミオに対し「即刻当地より追放」という罰を科す

 

第三幕 第2場 キャピュレット家の庭園

月曜日(2日目)の夕方
キャピュレット家の庭園でジュリエットがロミオを心待ちにしていると、縄梯子を携えた乳母が帰ってくる。そして乳母が町で何が起こったのかを説明しようとするが、またしても要領を得ない説明をするため、ジュリエットはロミオが死んだと一旦勘違いして絶望する。

ジュリエットは改めて乳母から、ロミオが ティボルトを殺し、ロミオがヴェローナから追放になった話を聞く。つまりもうロミオには会えなくなる。ジュリエットは従兄のティボルトのこと慕っておりその死を嘆いたが、それでもロミオへの想いが消えることはなく追放を深く悲しんだ。

さらに乳母は、キャピュレット夫妻はティボルトの亡骸の前で泣いており、ロミオは僧ロレンスの庵室に隠れている、とジュリエットに伝える。ジュリエットは、ロミオに指輪を届けて、最後のお別れに来るように伝えて欲しいと乳母に託す

 

第三幕 第3場 僧ロレンスの庵室

月曜日(2日目)夜、9時か10時頃
ロレンスの庵室に隠れているロミオの元に、僧ロレンスが戻って来る。ロレンスは、太守の宣告は死罪ではなく、ずっと寛大なヴェローナからの追放である旨を伝える

しかしロミオは「ジュリエットのいるこのヴェローナこそが天国であって、ヴェローナ以外の世界は地獄そのものだ。死刑よりも追放の方がはるかに恐ろしい。死罪と言ってください。」と言って、ジュリエットに会えなくなる追放を嘆く。

それに対し僧ロレンスは「何という恩知らずだ!死罪当然のお前の罪を、太守は法を曲げてまで追放に変えてくださったではないか。この大変な慈悲がお前にはわからないのか。」とロミオを叱りつける。

そこにジュリエットの乳母が到着し、ジュリエットの状態を伝える。ジュリエットはティボルトとロミオの名前を呼んで、ただ泣いてばかりと言う。改めてジュリエットの身内を殺めてしまったことを悔やんだロミオは、剣を抜いて自殺を図ろうとするも、乳母がその剣をもぎ取って止める。

僧ロレンスはそんなロミオをさらに叱りつけた後、「夜警が回ってくる前に、手筈通りジュリエットのもとへ行って慰めてこい。そしてマンチュア(ヴェローナの南40 km ほどにある町)へ発て。いずれわしが時を見て、お前たちの結婚を発表しこう。公爵殿のお許しを得て、呼び戻すことにしよう。」と提案して励ます

乳母は、いずれロミオが帰ってくることをジュリエットに伝えると約束し、ジュリエットから預かった指輪をロミオに渡す

元気を取り戻したロミオは、叱ってくれたことに感謝し、二人に別れを告げて、ジュリエットのもとに出発した

 

第三幕 第4場 キャピュレット家の一室

月曜日(2日目)の深夜
キャピュレット家の一室で、キャピュレット夫妻とパリスの3人が、ジュリエットとパリスの縁談についての話をしている。ジュリエットは今、大好きなティボルトを失ってふさぎ込んでおり、会える状態ではない、ということになっている(※本当はロミオの追放を嘆いている)。キャピュレットは自分から娘に縁談の話をして娘の心をパリス伯爵に差し上げる、と縁談に前向きで、木曜日にパリスとジュリエットの輿入れを約束する

 

第三幕 第5場 キャピュレット家の庭園

火曜日(3日目)の夜明け前
ロミオとジュリエットが、キャピュレット家の2階の窓で話をしている。ロミオは間もなく出発しなければならないため、2人は別れを惜しんでいる。そして夜が明け始めると乳母が入っきて、キャピュレット夫人が部屋に来る事を告げる。ロミオはジュリエットに別れのキスをすると二階から降り、「またきっと会える。機会があれば便りをする。さようなら。」と言ってマンチュアへ向う
(※これを最後にロミオとジュリエットは生きて会うことはありません。)

そこにキャピュレット夫人が入ってくる。キャピュレット夫人は、ジュリエットがティボルトの死を悲しんでふさぎ込んでいると思っており、ティボルトを殺したロミオが生きているのが許せない。そしてジュリエットも母親に合わせ、表向きティボルトの死を嘆いているが、内心はロミオのこと想っている。

さらにキャピュレットと乳母も加わり、木曜日の朝早くに教会でパリスとジュリエットを結婚させる計画を話すが、ジュリエットはこれを拒否。するとこの結婚に骨を折ってきたキャピュレットは激怒し、ジュリエットに対し、木曜日にパリスと結婚するか、この家を出てどこかでのたれ死ぬか、の2択を迫って出ていく。
(※周りの人には言っていませんが、ロミオとジュリエットは既に結婚しています。ジュリエットは、あくまでロミオとの誓いを優先する、という意思表示をしています。)

ジュリエットが困惑していると、それまでロミオに肯定的だった乳母までもが「ロミオ様がお帰りになってお嬢様をお引き取りに見えることはございますまい。やはりお嬢様は、パリス様に嫁がれるのがよろしいかと存じます。パリス様と比べればロミオ様は雑巾同様。」と手のひらを返す。

ジュリエットは乳母に対する信頼を完全になくし、僧ロレンスの庵室に懺悔に行ってくる、と言い残しロレンスに相談に行く

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第四幕

第四幕 第1場 僧ロレンスの庵室

火曜日(3日目)の午後らしい
僧ロレンスの庵室では、ロレンスとパリスがジュリエットとパリスの結婚について話している。結婚は木曜日に決まったと言うが、パリスは肝心なジュリエットの心を確認しておらず、ロレンスは感心しない。

そこにジュリエットが現れる。パリスはジュリエットに自分を愛していることを確認しようとするが、ジュリエットの心は完全にロミオに向いており、愛してるのはパリスともロミオとも受け取れる曖昧な解答ではぐらかす。パリスは木曜日の朝早くに迎えに行くと言って帰る

どうやら木曜日のパリスとの結婚は避けることができない。ジュリエットは、ロミオ以外に心が靡くくらいなら懐剣で自ら命を絶つ意志だと伝え、ロレンスに知恵を求める。

ジュリエットの強い覚悟を知ったロレンスは、彼女に思い切った策を授ける。まず明日(水曜日)の晩、寝る時にこの瓶の薬液を全部飲む。すると脈は止まり、体温も呼吸もない死人同様の仮死状態が42時間(金曜日の夕方頃まで)続く。木曜日の朝にパリスが迎えに来た時にはジュリエットは死んだことになっており、ジュリエットはキャピュレット家の墓へと送られる。ロミオには前もって手紙で知らせておき、ロレンスとロミオでジュリエットが目覚めるのを待つ。そしてその晩(金曜日の晩)、ロミオとジュリエットは一緒にマンチュアへ旅立つ

策を聞いたジュリエットは、強い覚悟を固めてロレンスに別れを告げて帰っていく。

 

第四幕 第2場 キャピュレット家の広間

火曜日(3日目)の夕方
キャピュレット家の広間では、キャピュレットが召使いに結婚式の準備の指図をしており、そこへ僧ロレンスの庵室へ懺悔に行っていたジュリエットが帰ってくる。ジュリエットはロレンスの教えにより改心したふりをし、父キャピュレットに謝罪して今後逆らわないことを誓う。

これに喜んだキャピレットは、ロレンスに感謝する。なぜか結婚式が明日(水曜日)に変更されており、ジュリエットは乳母と共に部屋で明日の結婚式の衣装の準備を始める。そしてパリスの元には、明日の準備をさせるため、キャピュレット自ら出向くことになった。

 

第四幕 第3場 ジュリエット部屋

火曜日(3日目)の夜
ジュリエットの部屋では、ジュリエットと乳母が結婚式の着物の準備をしている。ジュリエットは、神様にお赦しのお祈りをしたいから今夜は一人にしてほしい、と乳母と母にお願いして部屋から出て行ってもらう。

僧ロレンスから貰った瓶を取り出すと、ジュリエットは様々な不安に襲われる。もしかしたらこの薬は毒薬で、ロレンスが私を殺そうとしているのかもしれない。ロミオが助けに来る前に墓場の中で目が覚めて、息が出来ずに窒息してしまうかもしれない。この間埋められたばかりのティボルトの怨霊がうろついているかもしれない。

そんな不安に襲われながら、ジュリエットは瓶の薬を飲み干して寝台に倒れた

 

第四幕 第4場 キャピュレット家の昼間

水曜日(4日目)午前3時頃
キャピュレット家の広間では、キャピュレット夫妻と乳母そして召使いたちが、夜通し結婚式の準備に追われている。ジュリエットの異変にはまだ誰も気づいていない。

そうこうしているうちに夜は明け、楽隊づれのパリスがやって来て、乳母がジュリエットを起こしに行く。

 

第四幕 第5場 ジュリエットの部屋

水曜日(4日目)の朝
乳母がジュリエットを起こしに行くと、ジュリエットの反応がない。亡くなったと思った乳母は慌てて人を呼ぶ。キャピュレット夫妻が入ってくると、ジュリエットはすでに冷たくなっている。3人ともジュリエットが死んでしまったと思い込み悲嘆にくれる

そこに僧ロレンスとパリスが入ってくる。キャピュレットとパリスは突然ジュリエットの命を奪った死に神の仕打ちに怒り狂っている。

事情を知っているロレンスは、「長い結婚生活を送る女だけが、本当の幸福とは決して言えない。天とあなたの共有物が、天の持ち物になったというだけのことだ。」と二人を慰め、ジュリエットに晴れ着を着せて教会へ送らせるよう指示する。

キャピュレットは、祝いの婚礼のために準備した音楽や食事・花を、弔いの儀式用に変更させるように指示する。

みんな去っていき、用がなくなったと思った楽人たちが帰ろうとすると、乳母の召使のピーターが、楽人たちに「心ウキウキ」な音楽を要求して断られる。それに対しピーターが悪態をついて去ると、楽人たちの顰蹙を買う。

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第五幕

第五幕 第1場 マンチュア街上

木曜日(5日目)
マンチュアにきたロミオは不思議な夢を見る。ジュリエットが死んだロミオに口づけを重ね、命の息吹を吹き込む。するとロミオは蘇り、帝王になるという夢。

そこにロミオの召使いバルサザーがやって来る。ロミオは僧ロレンスからの手紙だと思ったが、報告の内容はジュリエットが急死してキャピュレット家の墓地に埋葬されたこと
(※ロミオは、ジュリエットが薬を飲み、一旦仮死状態になってパリスとの結婚を回避する計画をまだ知らない。つまりロレンスからその知らせが来る前に、別ルートからジュリエットの死の知らせが届いてしまったということ。そしてロミオはジュリエットが死んだと思い込む。)

これを聞いたロミオは、今夜ジュリエットの傍に行って毒薬を飲んで死ぬことを決意する。そしてマンチュアの薬屋で強力な毒薬を買い、ヴェローナ(マンチュアの北約40 km)のジュリエットの墓へ向かう。

 

第五幕 第2場 僧ロレンスの庵室

木曜日(5日目)の午後
ロレンスの庵室に、ロミオに届けるはずの手紙を預かっている僧ジョンが現れる。何でも同門のある托鉢僧が町の病人をお見舞いしたところ、恐ろしい伝染病患者に居合わせたという疑いで、検疫官がその僧とジョンに一切の外出禁止命令を出したらしい。つまりロレンスがロミオに宛てた手紙はここにあり、未だに届いていない

既に木曜日の午後で、ジュリエットが目を覚ますまで3時間もない。ロレンスはジョンにカナテコ(バール)を持ってくるように指示すると、慌てて再度マンチュアのロミオ宛の手紙を出し、ジュリエットを一人で墓場から庵室に移そうとする。

 

第五幕 第3場 キャピュレット家の墓所のある墓場

木曜日(5日目)の深夜から金曜日の早朝
ジュリエットが埋められている墓場に、パリスと侍童が松明を持ってやってる。侍童は人が来ないか見張りにつき、パリスはお墓に花を手向けてジュリエットの死を嘆く。「せめて私が夜毎あなたの墓に花をまき、水を注いであげよう。」
(※パリスは本気でジュリエットを愛していたようです。)

突然児童が、誰か人が来たと合図を送り、パリスは蔭に隠れる。

そしてロミオと召使いのバルサザーが、松明やつるはしなどを持ってやってくる。ロミオはバルサザーに「ある大事な用に使うため、ジュリエットの指から指輪を抜き取る必要がある(※これは嘘で本当はジュリエットの傍で死ぬためです。)。俺はこれからジュリエットの墓を掘り起こすが、決して俺のすることに手出しをするな。それからこの手紙を明日の朝早く、父上に届けてくれ。」と言う。ロミオのただならぬ顔色を不審に思ったバルサザーは、その場を去るふりをして蔭に隠れてロミオの様子を探る。

そしてロミオはジュリエットの墓を掘り起こそうとするが、掘り起こしているのがロミオだと気付いたパリスは、その墓荒らしの悪行に激怒しロミオを引っ捕らえようとする(※ロミオはジュリエットの従兄・ティボルトを殺し、その悲しみによってジュリエットの命が縮まった、とパリスは思っている。)。元々自分も死ぬ気だったロミオは誰とも争う気などなかったが、パリスが引かないため相手が誰だか分からないまま喧嘩が始まる。これを見たパリスの児童はあわてて夜番の者を呼びに行く。そして争った挙げ句にロミオは相手を殺してしまうが、死ぬ直前にジュリエットと一緒に葬ってくれと頼まれる。ロミオはここで顔を確認して、ようやく相手がパリスだったとわかる。

ロミオは墓の中に死んだパリスを横たえると、自らが殺してしまったティボルトにも謝罪する。墓の中に横たわっているジュリエットはあまりにも美しかった。ロミオは最後にジュリエットを抱きしめるて薬屋から手に入れた毒薬を飲み干すと、ジュリエットにキスをして息絶えた

しばらくして僧ロレンスが提灯やつるはしなどを持ってキャピュレット家の墓にやってくると、ロミオの召使いバルサザーに合う。バルサザーはロレンスに「自分は30分ぐらい前からここにいる。主人が誰かと果たし合いになって相手を殺してしまったようだ。絶対に手出しをするなと言われているから、自分は墓には入れない。」といった旨を伝える。

これを聞いたロレンスは、悪い予感を抱きながら一人で墓に入っていく。そこには血まみれになったパリスと、真っ青になったロミオが横たわっていた

その時ジュリエットが目を覚ます。「おお、ありがたい上人(ロレンス)様!私のロミオ様は、どこにいらっしゃいますの?」
ロレンス「どうやら人間の力ではどうにもならない大きな力が、私たちの計画を阻んでしまったようだ。あなたのご主人はあなたの胸の上に倒れて息絶えておられる。それからパリス殿もな。お嬢様。夜回りの物が来る。何も言わずにおいでなさい。」
ジュリエット「いいえ、私は嫌でございます。上人様こそお出でになって。」

人の気配を感じ、ロレンスだけが急いで墓から出ていく。ジュリエットはロミオが杯を握ったまま死んでいるのを見て、毒をあおったと悟る。パリスの侍童が連れてきた夜警の声が聞こえると、まだ温かいロミオの口に口づけをし、ロミオの短剣で自らの胸をさし、ロミオの体に折り重なって死んだ

パリスの侍童がキャピュレット家の墓に夜警たちを連れてくると、そこには殺されて血まみれのパリス、まだ温かく亡くなったばかりのジュリエット、真っ青になって息絶えたロミオ、が横たわっている。さらに夜警たちは、ロミオの召使いのバルサザーとつるはしを持って逃げようとしていたロレンスを捕らえる。

そしてそこへ従者を伴ったヴェローナ太守、キャピレット夫妻、モンタギュー、さらには騒ぎを聞きつけたその他の人々が続々と集まってくる。

実はモンタギュー婦人(ロミオの母)は、ロミオの追放を悲しむあまり昨夜命を落としてしまっていた。その上さらに変わり果てたロミオを目の当たりにしたモンタギューは「おのれ、なという不心得者が!」と嘆く。太守も親族のパリスを亡くして悲しみに暮れる中、現場を取り仕切る。

そんな中、僧ロレンスが一番の嫌疑者は自分であるとして、太守に全てを語り出す
「実はロミオとジュリエットは、私が秘密に結婚をさせていました。ちょうど同じ日(月曜日)、ティボルトが非業な死をとげたことにより、ロミオは追放されました。ジュリエットの悲しみはティボルトではなく、夫ロミオのためだったのです。そんな中、両親に無理やりパリスと結婚させられそうになったジュリエットは、逃れるために私に相談に来ました。そこで私は、ジュリエットに結婚前夜に眠り薬を飲む策を教えました。それをロミオに伝えるために手紙を書いたのですが、事故で伝わりませんでした。そこで薬の切れる時刻に、ジュリエットの墓に一人で行ってみると、パリスとロミオまでもが息絶えて倒れている始末です。ジュリエットは目を覚まし、私がすぐ出るように申し上げましたが、それを拒否しました。そのとき人の声がしたので、私は墓場を逃げました。どうやらジュリエットは自害されたものと存じます。」

次に太守は、ロミオの召使いバルサザーに話をさせる
「私がジュリエット様の最期を主人に伝えますと、主人ロミオはマンチュアからこの墓まで飛んで帰ってきました。この手紙を父親に届けるようにと指示し、俺のすることに手出しをするなと言って墓に降りて行きました。」

その手紙を太守に渡すと、今度は侍童に主人のパリスがここで何をしていたのか尋ねる
「主人(パリス)は奥様(ジュリエット)の墓に花を撒こうとしておりました。ところがまもなく墓を開きに参ったものがありましたので、主人が剣を抜いて斬りかかりました。そこで私は大急ぎで夜警のものを呼びに行きました。」

太守はロミオの手紙を読み、ロミオとジュリエットは恋仲で、ロレンスの言葉に偽りがないことを確信する。そしてキャピュレットとモンタギューを呼び出し「どうだ、その方たち相互の憎しみの上に、どんな天罰が下されたのだ。わしもそれを見過ごしてきたために、身内を失ってしまった。」と長年憎しみ合ってきたことを叱りつける

キャピュレットとモンタギューは、直ちにお互い謝り合って和解した。そしてモンタギューはジュリエットの像を純金で建立することを約束し、キャピュレットはそのそばに立派なロミオ像を建立して両家確執の犠牲の記念とすることを約束した
(※現在ヴェローナの町にはジュリエットの像が本当に立っています。ですがこのロミオとジュリエットの恋愛悲劇は、創作であって事実に基づきません。後の人がこの物語を元に建立したそうです。)

ヴェローナのジュリエット像

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感想!

物語の時系列を詳しくたどってみると、冒頭のモンタギュー家とキャピュレット家の大喧嘩が日曜日の朝。恋愛の主役たちが全員亡くなり、両家が和解するのが金曜日の未明。たった5日間で全てが終わることになるのですが、この短期間に信じられないくらいいろんなことが起こります

ロザラインに夢中だったロミオは、宴会でジュリエットに一目惚れして翌日には密かに結婚。ところがその日のうちに不運な殺人事件を起こしてヴェローナを追放となり、3日目の夜明け前にはジュリエットと別れて約40キロ離れたマンチュアへ旅立つ。ジュリエトは4日目に急遽パリスと結婚することになるが、それを避けるために眠り薬を飲み、彼女が死んだと思い込んだロミオとパリスは5日目の夜にお墓の前で鉢合わせし、パリスは殺されロミオは自殺。そして直後に目覚めるジュリエットも自殺。

よくこの短期間に、これだけ物語を詰め込むことができましたよね。ロミオは重苦しい恋患いから幸福の絶頂へと上り詰め、そこから追放の絶望と再会への希望を経て、そして別れの絶望。

不思議なことに、これだけてんこもりで忙しいのに少しも不自然に感じない。うまい物語を考えたものですね。

 

この「ロミオとジュリエット」の一番の見所は、主役たちが死んでしまうところなのですが、ロミオもジュリエットも、直接の死因は自殺になります。愛を誓い合った相手が死んでしまった後(ジュリエットは実は死んでいなかった)、まだ有り余る将来がありながら自ら死を選びます。まだ出会って数日しか経っていないのに。

あなたと一緒になれないのであれば死を選ぼう。いつかあなた以外の人を愛してしまうぐらいならば今ここで死のう。この一途な純愛に僕は惹かれます。

人間誰しもいつかは死ぬわけなのですが、老いさらばえて、自分の下の世話もできなくなって尊厳もなく死んでいくような最後になるのであれば、自分も短くていいから一人の人を徹底的に愛したまま最後を迎えてみたい。

僕もそんなことを思って、ちょっとだけこの美しくて悲しい現実逃避に浸ってみました。
あなたはどうでしたか?

この物語は世界中で何百年にもわたって愛され続けているわけなのですが、このテーマには時代を越えた人類共通の憧れみたいなものがあるのかもしれませんね。

 

ただ残念なことに、このお話は事実ではありません。冒頭でも触れましたが、中世のヴェローナにモンテッキ家とカッペルレッティ家という敵対する二つの名家があって、そこにロメオとジュリエッタという人物が実在したのはどうやら事実らしい。しかし恋愛話は全て創作で事実には基づかないようです。

ただ全くの空想なのかと言うと必ずしもそうでもなく、恋愛悲劇はオウィディウスの変身物語「ピュラモスとティスベ」を参考にしていると言われています。この物語は紀元前に成立した古代ギリシャ神話なのですが、古代バビロン(メソポタミア・現在のイラク)での出来事ということになっています。

なぜ古代バビロンのお話がギリシャ神話として伝承されているのか、気になったので調べてみたのですが、さすがに分かりませんでした。ですのでここからは完全な推測です。

神話というのは、民族や言語の壁を越えて引用や盗作されたりすることが度々あります。その代表例が「旧約聖書のノアの方舟」の説話。このエピソードは、古代シュメール神話のギルガメッシュ叙事詩(※ギルガメッシュはBC2600年頃に実在した古代シュメールの王様で、ギルガメッシュ叙事詩はその人の物語)の中に、「ウトナピシュティムという人物が神のお告げに従って船を作って大洪水を生きながらえ、そのご褒美に永遠の命をもらう」というエピソードがあり、これがほぼそのままの形でヘブライ語の旧約聖書やギリシャ語のギリシャ神話に引用(盗作)されていったことが分かっています。

この「ピュラモスとティスベ」も、もしかしたら同じような経路で古代シュメール神話がギリシャ神話に入ってきたケースなのかもしれません。だとしたらえらく古い話になりそうです。

いずれにせよ「ロミオとジュリエット」の恋愛悲劇は事実に基づきませんが、「ピュラモスとティスベ」の恋愛悲劇については何らかの事実に基づく可能性はありそうです。

遠い遠い昔、もしかしたら本当にあったことなのかもしれない、有り余る将来を捨ててまでお互いへの愛を貫いた若者たちが本当にいたのかもしれない、そんな想像を膨らませながら僕はこの本を読みました。

それでは。

 

他のシェイクスピアの作品についても書いていましたので、お時間があったら読んでみてください。いずれも2万字級のビッグコンテンツです。
 
それとも他の本を読んでみる?

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