【30分でリア王】あらすじ・内容・解説・登場人物・感想!【シェイクスピア】

リア王」は、1605年頃に成立したシェイクスピアの戯曲。追従した二人の娘に領土を分け与え真実を告げた末娘を勘当したリア王が、後に二人の娘に裏切られ狂って荒野をさまよい、さらに自分を助けようとしてくれた末娘まで失い悲しみのあまり世を去るという物語。「四大悲劇」の一つで、シェイクスピア悲劇の最高峰と言われています。
この「リア王」について、あらすじ・内容・解説・登場人物・感想を書いてみました。ただ夢中になって作っていたら25000字まで膨れ上がってしまいました。少し分量がありますが、最後まで読んで頂けたら嬉しいです。

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目次

まずは簡単な内容と解説!

(※ここでは主にリア王の成立について解説します。お急ぎの方はあらすじもらい飛ばしてもらって構いません。)

ウィリアム・シェイクスピア(1564〜1616年)は、イギリスを代表する劇作家で、ダンテ、ゲーテと並ぶ「世界三大詩人」の一人。多くの傑作を世に残したことで有名ですが、彼の作品には、軍事・哲学・宮廷・音楽・法律など多くの専門知識が駆使されている他、海外文学の知識も豊富なため、複数の人間によって書かれたものではないのか、といったシェイクスピア別人説も根強く囁かれる謎多き人物でもあります。

「ハムレット」「リア王」「オセロ」「マクベス」の「四大悲劇」が有名ですが、実は彼の作品は、ゼロから物語を組み立てているわけではなく、既に存在するエピソードや作品を元に翻案(海外の文学作品などの筋や内容を借りて、人名、地名などを変えて改作すること。前人の作品を趣意を言い換えて作ること。)・リメイクする手法をとっています。

この「リア王」にも元となる資料がいくつか存在するとされていますが、その中心となる資料がラファエル・ホリンシェッド(1529−1580年)の「イングランド・スコットランド・アイルランドの年代史」(以下「年代史」1587年成立)。これは主にこの3カ国の歴史を包括的に記した歴史書とされていますが、シェイクスピアは「リア王」以外にも複数の作品の素材としてこの「年代史」を用いていることが分かっています。

この「年代史」の中に「リア王」の元となるエピソードが含まれているのですが、肝心なその部分については、ジェフリー・オブ・マンモス(1100−1155年頃)の「ブリタニア列王史」(1136年頃成立・ラテン語の書物)を参考に書かれているとされています。この本はホメロスの「イーリアス」(紀元前8世紀頃成立)に登場するトロイア人の子孫たちがブリテン国家を建設するところから、7世紀にアングロ・サクソン人に支配されるまでの2000年間のブリタニアの歴史を綴ったものとされていますが、現在この「ブリタニア列王史」は完全に偽史書とされおり、歴史書としての価値はないと言われています

要するに「リア王」の元となるエピソードは、単なる伝説の類のものであって事実に基づくお話ではない、ということになるようです。一応それを踏まえた上で、原話がどんなお話だったのかを探ってみたいと思いますが、その前にそもそもいつ頃の物語なのかについても調べてみましたのでお話ししておきますね。

遡ってみるとびっくりするほど古いお話だったのですが、ギリシャ神話のアイネイアスってご存知ですか?ホメロスの「イーリアス」によると、紀元前1250年頃に起こったとされるトロイア戦争(場所は現在のトルコ)で活躍した英雄でギリシャ神話の女神アプロディテ(英語名ヴィーナス)の息子とされる人物なのですが、古代ローマのウェルギリウス(BC70−BC19年)の叙事詩「アイネイス」(BC19年未完)によると、トロイア戦争に敗北して落ち延びたアイネイアスが、苦難の末にローマ(イタリア)の地へたどり着いて、古代ローマを建国したとされています。この時点で完全に伝説上の話であって事実の裏付けのある話ではありませんが、「ブリタニア列王史」(1136年頃成立)によると、このアイネイアスの曾孫のブルータスという人物が追放・放浪の末に今のイギリスにたどり着き、自分の名前をとってその地をブリテンと名付けた。これが初代ブリテン王(ブルータス王朝)となり、ブルータスから数えて8世代目の孫が「レイア王」ということになっています。そしてこの「レイア王」がシェイクスピアの「リア王」のモデルになったとされているのですが、もし実在すれば紀元前8世紀頃の人物になるようです
(※この時代にブリテン島に住んでいたとされるのは、巨石文化の先住民かケルト系のブリトン人と呼ばれる人たちです。この後5世紀頃からゲルマン系のアングロ・サクソン人(英語を話す人たち)がブリテン島に侵入し、7世紀頃にかけてブリテン島の支配者となっていきます。)

 

こんなに古いお話だったのですね。驚きました。まさかリア王がギリシャ神話の美の女神ヴィーナスの子孫だったとは……。僕はてっきりアングロ・サクソンの王様の話なのかと思っていました。ちなみに「マクベス」もホリンシェッドの「年代史」を参考に書かれているのですが、こちらは11世紀にスコットランドで起こった実話を元にしていると言われています。
「マクベス」のあらすじと解説を見てみる

それではこの「ブリタニア列王史」の「レイア王」の物語がどんなお話だったのかを少し見てみたいと思います。

在位期間60年を誇ったレイア王には、ゴネリル、リーガン、コーディリアの3人の娘がおり、コーディリアを溺愛していた。死期が近づいたレイア王が相続を考えると、ゴネリルとリーガンは父の機嫌を取ったが、末娘のコーディリアは機嫌を取らず父を激怒させたため、レイア王は王国を二分してゴネリル夫妻とリーガン夫妻に与えたが、コーディリアには何も与えなかった。やがて年を取ったレイアが娘の世界なろうとゴネリルの元へやって来ると、140人の衛兵つけて保護してくれたが2年後には30人に減らされる。失望したレイアがリーガンの元へ行くと衛兵は5人しかつけてくれず、再びゴネリルの元へ向かうと衛兵は1人だけになった。
二人の娘が怖くなったレイアが、海を渡りフランク人の王に嫁いだコーディリアを頼ると、コーディリアは父を暖かく迎え、夫のアガニップスとともに大軍を率いてブリテンに進軍し二人の娘とその婿を倒す。レイアは3年間ブリテンを落として統治して亡くなり、その後はコーディリアが王位を承継した

 

ブリタニア列王史」によるとこのようなお話になっていますが、「シェイクスピアのリア王」との最大の違いは、ハッピーエンドであること。悲劇ではありません。それから2年後に衛兵を減らされたとありますが、本作では「2週間も経たずに」減らされることなっています
(※昔は衛兵を多く付ける事が、王としての威厳を保つことにつながったようです。)

実はこの物語を最初に戯曲として描いたのは、シェイクスピアではありません。このレイア王の物語を劇の台本として描いた作者不詳の「原リア」と呼ばれる戯曲が1594年頃にすでに成立しており、シェイクスピアはこの「原リア」も参考に「リア王」(1605年頃)を書き上げたと言われています。

しかしこの「原リア」もどうやらハッピーエンドだったようで、シェイクスピアがそれを悲劇的な結末に描きなおした、ということになるようです。

なお戯曲というのは劇の台本のことです。そのため内容は、小説とは異なりほぼ登場人物の会話のみ、という構成になります。

 

登場人物!

リア王
80歳を超えたブリテンの王で認知症の兆候がある。老いを感じ娘たちに領土を与えて自分は引退を考えるが、自分に追従したゴネリルとリーガンに領土を与え、追従しなかったコーディリアには領土を与えなかった。付き添いの100人の騎士達と共に1月毎にゴネリルとリーガンの世話になる予定だったが、2人に疎まれ騎士達を全て奪われた上に発狂して荒野をさまよう。最後に自分を慕ったコーディリアに再会するも、フランス軍が敗北し、獄中で殺されたコーディリアを抱きながら悶死する。

 

ゴネリル
リアの長女でアルバニー公の妻。リア王に甘い言葉でゴマをすり領土を手に入れるが、その直後からリア王を疎ましく思い妹のリーガンと結託して虐待を始める。しかしリア王に忠節を尽くす夫のアルバニーとは仲が悪く、エドマンドとの不倫に走る。結局リーガンとエドマンドを奪い合うが、オズワルドに託したエドマンドとの不倫とアルバニー暗殺を依頼した手紙が露見し、最終的に自殺へと追い込まれる。

 

リーガン
リアの次女でコンウォール公の妻。リア王に心にもない甘言で追従して領土を譲り受けるが、姉ゴネリルと結託して騎士達を全て取り上げる。グロスターの居城訪問中にグロスターのフランスとの内通を知り、夫コーンウォールと共にグロスターの両目をえぐり出して追放し、城を自分たちの物としてしまう。しかし直後に夫コーンウォールが亡くなると、エドマンドと恋仲になってゴネリルと奪い合い、最終的にフランス軍に勝った直後にゴネリルに毒殺される。

 

コーディリア
リアの末娘でフランス王の妻となる。リア王が可愛がっていたが、リア王に追従せず虚飾のない言葉で答えたため、リア王の怒りを買って勘当される。領土も財産も一切貰えなかったが、その態度を気に入られてフランス王の元へ嫁ぐ。やがてブリテン軍とフランス軍がドーバーで緊張状態となった際に、姉達に虐待されて放浪していたリア王を保護するが、直後にフランス軍は敗北してリア王と共に捕虜となり、最後はエドマンドの放った刺客に獄中で暗殺される。

 

アルバニー公
ゴネリルの夫で、リア王から領土の半分の実質的な統治を任される。あくまでリア王への忠節を尽くす人物で、父から財産を受け継いでおきながら虐待しエドマンドと不倫に走る妻ゴネリルとは不仲。対フランス戦では総大将を務めてフランス軍を撃退するが、リア王が生きている限り、自分の権限を王へ返そうとする。辛酸を舐めたエドガーとケントに対し相応の褒賞を約束し、国政を任せる。

 

コーンウォール公
リーガンの夫で、リア王から領土の半分の統治を任される。しかし妻リーガンに合わせてリア王虐待の方針を取り、リア王の使者ケントに足枷を付けてさらす。父グロスターの命と財産を守ったエドマンドを気に入り家臣に加えるが、後にそのエドマンドとリーガンが恋仲になる。フランスと内通したグロスターを捕えて両目をえぐり取るが、古参の召使いに反抗されその際に受けた傷がもとで亡くなる。

 

フランス王
コーディリアの求婚者。心にもない言葉でリア王の機嫌を取ろうとしなかったコーディリアを気に入り、妻としてフランスへ連れ帰る。後に父を想うコーディリアに頼まれ、お家騒動に揺れるブリテンのドーバーまで軍を進めるが、ブリテンとの戦争に敗れる。

 

ケント伯
リアの忠臣。歳は48歳。娘たちへの土地の配分に関してリア王に讒言したことにより追放され、以降は変装して別人としてリア王に仕える。リア王の使いでコーンウォールに手紙を届けに行くが、そこで鉢合わせたオズワルドとトラブルを起こし、コーンウォールに足枷台に繋がれる。後から来たリア王によって足枷は外されるが、リア王は付き添い人を全て失い荒野で発狂する。ケントはこの惨状をゴネリルに知らせ、以後ゴネリルに再会するまで正体を明かすことなくリア王に付きそう。グロスターが亡くなった直後にエドガーに自分がケント伯であることを申し出て、亡くなる直前のリア王が奇跡的にケントだと分かる。アルバニーの図らいにより、最後はエドガーと共に相応の褒賞を受け国政を任される。

 

グロスター伯
エドガーとエドマンドの父。エドガーがグロスターを殺して収益を奪おうと企む手紙(エドマンドの自作自演)をエドマンドに見せられ、騙されてエドガーを勘当する。後にフランスと内通しリア王を助ける旨をエドマンドに話すが、エドマンドの裏切りにより全て知られたコーンウォール夫妻に両目をえぐられた上に追放され、城まで奪われる。絶望のあまりドーバーの崖から身を投げようとするが、素性を隠して付き添ったエドガーの機転により命を救われる。しかし戦争の後、エドガーに自分の正体を明かされた直後に息を引き取る。

 

エドガー
グロスター伯の嫡子だが父に可愛がられていない。異母弟エドマンドの奸計により、父に勘当され土地はエドマンドに奪われる。更に指名手配犯となったため、気違いの物乞いトムと名乗ってさまよい、荒野の掘っ立て小屋でリア王とグロスターに会うが名乗ることはなかった。その後ドーバーで目を潰されて崖から飛び降りようとしているグロスターに再会すると、平地で飛び降りさせて奇跡的に助かったことにし、更に別人になりすまして父を助ける。ゴネリルからエドマンドへの恋文をオズワルドを殺して奪うと、その手紙をアルバニーに渡し、エドマンドを一騎打ちで討ち果たす。結局グロスターが亡くなる直前に息子のエドガーであることを告げ、最後はアルバニーの図らいにより相応の褒賞を受け国政を任される。

 

エドマンド
グロスター伯の庶子でエドガーの1歳下の弟。この物語で一番の悪役にして野心家。エドガーがグロスターの命と財産を狙っている内容の手紙を偽造して父グロスターに見せることでエドガーを追放させ、兄の受け取るはずの土地と財産をかすめ取り、更にコーンウォールに気に入られて家臣となる。父にフランスへの内通とリア王の援助を知らされると、父を裏切ってコーンウォールに全て知らせる。その結果グロスターは目をえぐられ追放。代わりにエドマンドがグロスター伯爵を受け継ぎ父の城も手に入れる。コーンウォールが亡くなるとリーガンとゴネリルの両方と恋仲になるが、結局ゴネリルがエドマンドに送った恋文(兼アルバニーの暗殺依頼)がアルバニーの手に渡って発覚する。リア王とコーディリアの暗殺にも関与するが、最後はエドガーとの一騎打ちに敗れて命を落とす。

 

オズワルド
ゴネリルの執事。ゴネリルの指示によりリア王にぞんざいな態度を取ったことが原因で、後にケントとトラブルになる。ゴネリルからエドマンドへの恋文とアルバニー暗殺を依頼する内容の手紙を託されるが、グロスターを暗殺しようとした際、エドガーに返り討ちされ手紙を奪われる。この手紙がゴネリルとエドマンドを追い詰める決定的な証拠になる。

 

道化
リアに仕える道化師。彼の皮肉はリアの核心をつくことになる。道化師というのは滑稽な身振りや言葉遣いで人々の笑いをとる人たちのことで、古代ローマ時代から王侯貴族の邸内に召し抱えられており、高貴な人達にも毒舌を浴びせ掛けることが習慣として許されていたらしい。第四幕以降登場しなくなります。原話には登場しません。

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あらすじ!

あらすじに入る前に、時代背景について少しお話ししたいと思います。シェイクスピアが題材とした「ブリタニア列王史」の「レイア王」の在位は紀元前8世紀頃となっていますが、物語を読み進めていくと明らかに矛盾する記述がいくつもあります。まず末娘コーディリアの嫁ぎ先が「フランス王」となっていますが、一般的に「フランス王国」というのは987年に始まるユーグ・カペー朝から1789年のフランス革命までの約800年間(カペー朝987−1328年・ヴァロワ朝1328年−1589年・ブルボン朝1589年−1792年)に存在したこの地域の王国を指します。それから第五幕第3場でエドマンドが騎士道について語る場面があるのですが、一般的に騎士道の成立は11世紀以降と言われています。年代を特定できる記述がほとんどないのでこれ以上のことはわかりませんでしたが、シェイクスピアは紀元前ではなく「11世紀以降のアングロ・サクソンのイギリスの王様」を想定しているのではないかと思われます
次に時系列について少しお話をしておきます。第一幕第2場の後に2週間近く、第二幕第1場の後に2日経過したと確認できる記述があるのですが、それ以外は場の切れ目であっても明確に時間の経過を確認できる記述がほとんど見当たりません。恐らく物語全体で、数週間から長くても数ヶ月、といった時間の経過になるのではないかと思われます。

 

第1幕

第一幕 第1場 リア王の相続、コーディリア怒りを買い勘当

紀元前8世紀頃?または11世紀以降。
場所はブリテン(イギリス)のリア王宮殿玉座の間。
リア王の前に3人の娘と夫たち(ゴネリルとアルバニー公爵・リーガンとコーンウォール公爵・コーディリアと求婚者フランス王、パーガンディ公爵)、そして従臣(ケント伯爵・グロスター伯爵)たちが立ち並ぶ。

年老いたリア王は引退を考えており、領土を三つに分割して娘たちに相続させることを考えている。そこでリア王は3人の娘たちに対し「お前たちのうち誰が一番この父のことを思っておるか、それが知りたい。最大の贈り物はそのものに与えられよう。」と父への愛情告白を迫り、その孝行心に応じて領地を与えることを約束する。

これに対し長女ゴネリルは「私はお父様をお慕いする気持ちはとても言葉では、言い尽くせません。どのような高貴な宝物も父上には変えられません。」と甘い言葉で追従する。
さらに次女リーガンも「姉上のお言葉はそのまま私の思いを描き出してくれました。我が身の幸せは、ただ父君のお情けのうちにのみあると信じてきたのでございます。」と恥ずかしいくらい甘い言葉で持ち上げる。

これに満足したリア王は、二人の娘とその夫にそれぞれ領地を与え、末代まで領有することを認める

しかし自分の愛情は舌よりも重いものだと考える末娘のコーディリアは「確かに父君をお慕い申し上げておりますが、それは子としての私の務め。申し上げることは何もありません。」と虚飾を交えず率直に応える。

コーディリアのことを誰よりも可愛がってきたリア王は期待を裏切られて激怒し、「それならば勝手にせよ。貴様の真実を持参金にするがよい。今より親子の縁を切り、永久に赤の他人とみなす。」と突き放し、領地も結婚の持参金も与えず、親子の縁の断絶まで言い渡した。更にアルバニー公とコーンウォール公に対し「王の名だけはこの身にとどめておくが、統治の実権・財産収入・その他一切の大権行使はお前たちの手に委ねる。そしてこの身は両家の騎士100名を側近とし、月毎に代わる代わる二人の館の客となろう。」と宣言する。
(※つまり王の名だけ残して、権限は全て二人の娘の夫に譲り渡す。そして月ごとに訪問するから私の面倒を見なさい、ということ。)

これに対してケント伯が待ったをかけて諌める。「なにとぞ国土はその御手に。今のお言葉を直ちにを取り消しください。主君が愚行に身を委ね、権力が阿諛に膝を屈するのを目の前にして、口を開かないわけにはいきません。」

しかしこの無礼な態度に怒ったリア王は、ケントに対し「今日から6日以内にこの国を立ち去れ。10日経ってまだこの領内にその身を留めておくなら直ちに死刑に処する。」と追放を言い渡し、ケントは直ちに去っていく。
(※この後ケントは、変装して別人のふりをしてリア王に仕えることになります。)

 

次にリア王はバーガンディ公とフランス王を呼び、コーディリアとの結婚の話題を持ち出す。
(※この二人はコーディリアへの求婚者です。)

バーガンディ公は、父の怒りを買い勘当され持参金も無くなったコーディリアへの結婚を辞退する。

しかし、コーディリアが心にもない言葉で機嫌を取ろうとしなかったが故に父親に嫌われ無一文になってしまったことを理解したフランス王は、「あなたが富を失ってこよなく豊に、ないがしろにされてこよなく愛おしいものになったのだ。あなたとその優れたお心を、この場で私が頂戴する。」とコーディリアを妃に迎えることを宣言する。コーディリアはその場で姉たちに「どうぞお父様をいたわって差し上げて下さい。」と伝えると、直ちにフランス王と共に去っていく。

その後ゴネリルとリーガンは二人で話し合う。二人はリア王のコーディリアへの勘当とケントへの追放を目の当たりにして、リア王が老いて分別が無くなってきたことを確信している。同時に、泊まりに来る度に自分たちがその気まぐれな発作に見舞われることや手に負えないわがままを背負いこまされることに不安を感じており、何か手を打っておこうと話し合っている。

 

第一幕 第2場 エドマンドの野望と土地収奪計画

第1場と同じ日と思われる。
場所はグロスター伯の居城の一室。
リア王に仕えるグロスター伯爵には、正妻との間に嫡子エドガーがいたが、妾との間にも一歳年下の庶子エドマンドを設けていた。

エドマンドは庶子で弟というだけで差別され権利を奪われてきたことに怒り、長年恨みを募らせてきた。そんなエドマンドは、兄エドガーから土地を奪う計略を画策しており、それをまさに実行に移そうとしていた

グロスター伯が帰宅するとエドマンドは自作自演の手紙を隠そうとし、不審に思った父グロスターはそれを見せるよう迫る。エドマンドが手紙を見せるとそれは兄エドガーが弟エドマンドに宛てたもので、内容は父を殺しその収入を兄弟で分け合おうと誘っているように受け取れるものだった。
(※手紙の解釈は若干異なるかもしれません。)

これを知ったグロスターは「畜生にも劣る悪党だ!」と激怒するが、エドマンドは「この手紙は、兄が父に対する私の愛情を試すために書いたものに違いない。」とあえて猫をかぶり兄を庇う。そして父に、この件について兄弟で話し合っているところを隠れて聞き、自分の耳で判断することを提案する。

グロスターがこれに同意して立ち去ると、兄エドガーが現れる。エドマンドはエドガーに父がエドガーに非常に怒っている旨を伝え、父の怒りが静まるまで自分の所に隠れるよう提案し、さらに外出の際は武器を持てと言う。

兄が同意して立ち去ると、エドマンドが「素性で手に入らぬ土地ならば、頭で奪ってみせる。」と野望をつぶやく。

このところ日食月食が続き、何かよからぬことが起こりそうな気配があった。

 

第一幕 第3番 リア王の老いとゴネリルの虐待の指示

2週間近く?経過したと思われる。
場所はアルバニー公の館の一室。
ゴネリルと執事のオズワルドが会話している。ゴネリルは、リア王がお付きの道化師に小言を言っただけで、自分の家来に手をあげたことに怒っている。ゴネリルの話によると、このところリア王は取るに足らないことで一々叱りつけ100人の騎士達も日増しに手がつけられなくなっている様子。

疎ましく思ったゴネリルは、オズワルドや騎士たちにリア王を冷たく扱うように指示し、自分はもう口をきかないと宣言する。さらに妹に対して自分と同じ手立てを取るようにと書いた手紙を送ってやろうと言っている

 

第一幕 第4場 リア王、お供を減らされゴネリルの元を去る

前場のすぐ後と思われる。
場所は前場と同じ、アルバニー公の館の玄関広間。
リア王が騎士たちを伴って狩りから戻ってくると、追放されたケントが主君への忠節を尽くすために変装した姿で現れ、別人としてリア王に仕え始める

リア王が横柄な態度で食事の催促をすると、執事のオズワルドの態度が明らかにおかしい。リア王が呼んでもぞんざいな態度で「嫌だ。」と言って来ず、リア王がその態度に腹を立て睨みつけると睨み返してくる

そこにリア王がかわいがっていた道化が現れ、悲惨なリア王の現状を風刺し、「おまえさん、他の肩書きは皆捨ててしまったもの。持って生まれたものしか残ってはないよ。俺の方がまだマシだ、俺は道化だがお前さんは何でもないからな。」と面白半分に鋭く突く。

さらにそこへゴネリルも現れ、「お付きの者たちの喚き合いや大喧嘩などが我慢できなくなりました。しかも(お父様が)それを承知の上で、むしろ唆しているように思われます。」とリア王に対し日頃の不満をぶつける。

するとこれに憤ったリア王が「私を知っている者はいないのか?この身はリアではない。誰か教えてくれ。」と嘆くと、道化は「リアの影法師さ。」と突っ込む
(※この道化はリア王専属の道化師なのですが、リアのことを「おっさん」や「爺さん」呼ばわりして辛辣な風刺を次々に放ちます。王様に対してなんて失礼なことを言ってるんだ?と思われるかもしれませんが、実は古代ローマ時代から王侯貴族の邸宅には人々の笑いをとる道化師を召し抱える文化があり、彼らは高貴な人に対しても天下御免で毒舌を浴びせることが慣習として許されていたそうです。)

そんなリア王に対しゴネリルは「こちらにお連れの騎士など併せて100人、いずれも粗暴で無法極まる男どもばかりで館が猥雑になってしまいます。お付きの数を減らしてください。」と言って、リア王のお供を50人に減らしてしまう。

2週間も経たないうちにお供を50人に減らされたリア王は激怒し、「供の者を集めろ!忘恩の奴め、お前の世話にはならぬ、俺にはまだ一人娘がある。父の呪いを浴びて、疫病に取り憑かれてしまえ!」と罵声を浴びせて去っていく。
(※原話の「ブリタニア列王史」によると、2年後に140人から30人に減らされた、となっています。それから昔は衛兵を多く付ける事が、王としての威厳を保つことにつながったようです。)

するとゴネリルは、自分と同じ手立てを取るようしたためた妹リーガン宛の手紙を届けるようオズワルドに命令し、オズワルドは直ちに出発する

 

第一幕 第5場 リア王、リーガンに手紙を出す

前場のすぐ後。
場所は前場と同じ、アルバニー公の館の内庭。
リア王はリーガンの夫のコーンウォール公宛の手紙をケントに託し、「お前の知ってることは娘にはあまり知らせず、尋ねられたことだけに答えるように。」と告げる。
(※ケントは変装して別人としてリア王に支えています)

ケントがすぐさま出発すると、リア王と道化は馬で遅れて出発する。

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第二幕


第二幕 第1場 エドマンド、土地を兄から奪い取る

前場から2日経ったと思われる。
場所はグロスター伯の居城の中庭。
エドマンド(弟)の元に廷臣カランから、今夜コーンウォール公と妻のリーガンがここグロスターの居城へと訪れる旨の報告がある。これを聞いたエドマンドは、これまで用意してきた計画を進める

まずこの城の自分の部屋に隠れている兄エドガーを呼び出し、ここに隠れているのがバレ父グロスターがエドガーの身柄を狙っている旨を伝え、直ちに逃げるよう提案する。ただこの時、エドマンドはエドガーにこれも父を欺くための計略だと言って剣で自分と切り合う演技をしてから逃げるように頼み、エドガーはそのその通りエドマンドと剣を交えた上で逃亡する。そしてエドガーがいなくなると、エドマンドは自分の腕を傷つけた上で父グロスターに助けを求める。

直ちに数人の追っ手を差し向けるグロスターに対し、エドマンドは、「(父を殺害してその収入を横取りしようとする試みを)止めさせるよう説得してみたのですが、思い留まろうとしなかったので、今度は何もかもバラしてしまうぞと脅したところ、このようなことになりました。」と父グロスターに報告する。

これを聞いたクロスターは「(父を殺害してその収入を奪い取る旨を書いた)手紙の内容を否認しようというのか?底知れぬ悪党めが!やつの人相書きを四方に配り、誰一人やつを見逃すものが無きよう手配する。それから私の領地は親思いのお前に預けるよう取り図ろう。」とエドガーに激怒し、エドマンドに領地を譲り渡す約束をする
(※第一幕第二場で使ったエドマンドの自作自演の手紙のことです。エドマンドは奸計により見事に土地を兄から奪い取ったことになり、以後エドガーは指名手配犯となります。)

そこへコーンウォール公爵とリーガンが到着する。夫妻はグロスターが息子エドガーに命を狙われ財産を奪われそうになったという話、さらにはエドマンドがエドガーの企みを暴き父親への勤めを立派に果たしたという話を既に聞いており、その孝行心に感服したコーンウォールは直ちにエドマンドを家臣の一人に加える。

そしてコーンウォール夫妻はグロスターの城にやってきた目的を話す。なんでもコーンウォール夫妻の元に姉ゴネリルからの手紙の他、父リア王からも手紙が参り、そのことについてグロスター伯爵の知恵を借りたいとのこと。クロスターは快諾した。
(※この後エドマンドは、ゴネリルとリーガンの両方と恋仲になり、最後に彼の悪巧みと共に露見し破滅を向かえることになります。少し注意して見ておいてください。)

 

第二幕 第2場 忠臣ケント、足枷台でさらし者

第一幕第4場の2日後。
場所はグロスター伯の居城前。
ゴネリルからリーガンへの手紙を届けたオズワルドと、リア王からコーンウォール公へと手紙を届けたケントが、ここでばったり出会う

忠臣ケントは、2日前に主君リア王にぞんざいな態度を取り睨み返したオズワルドが許せず、散々罵倒した上に剣を抜き決闘をけしかけるが、オズワルドは応じず助けを呼ぶ。

コーンウォール、リーガン、グロスター、エドマンドらがやってきて仲裁に入る。オズワルドが「自分は何もしていない。王様のご機嫌を取ろうと、この男が一方的に突っかかってきた。」と主張すると、既にゴネリルの手紙を読んでリア王の印象を悪くしていたコーンウォールとリーガンは、ケントを一晩中足枷台にかけ繋いでおくことにした

グロスターは「王の使者をこのように軽んずれば、必ず王の機嫌を損ないます。」と反対するが、リーガンは姉ゴネリルの機嫌を損なうことを気にして受け付けない。

 

第二幕 第3場 変装して放浪するエドガー

前場と同じ日と思われる。
場所は野原。
既にエドガーへの手配書が出回っており、港が抑えられ要所には厳しい監視の目が光っている。そんな中エドガーは、卑しい姿に身をやつし人としての尊厳を傷つけられてでも生き延びようと決意する。

 

第二巻 第4場 リーガンとゴネリルの結託 リア王、騎士を全て失う

おそらく前場と同日か翌日。
場所はグロスター伯の居城の前。
リア王と道化たちがグロスター伯の居城の前に到着すると、ケントが足枷に繋がれている

ケントがリア王に事情を話し、リーガンとコーンウォール公爵に足枷台にかけられたと伝えると、リア王は自分の使者が辱めを受けたことに激怒して二人に会いに行こうとするが、「会いたくない。病気だ。」と言われ門前払いを受ける。

この臣下にも子にもあるまじき態度に更に激怒したリア王は「二人は何か企んでいるに違いない。」と勘ぐり、グロスターに「二人に今すぐここに来るように言え。さもなければ俺が寝室に出向いていくぞ。」と脅しをかける。

すると今度は、グロスターがリーガンとコーンウォールを連れてきてケントの足枷を外す。リア王がリーガンに、ゴネリルが自分の供の者を減らした仕打ちを訴えて罵ると、リーガンは「それは姉上の真意がよくお分かりになっておいででないからです。お付きの者の狼藉を押さえたのは、それだけの理由があり、話の筋も通っておりましょう。一言悪かったとおっしゃって、どうぞ姉上の所へお戻り下さい。」と姉を庇って追い返そうとする。
(※ゴネリルはリーガンに、手紙で自分と同じ手立てを取るよう指示しています。)

それに対しリア王が「呪っても足りないやつだ!」と怒っていると、そこへ手紙に書いてあった通りにゴネリルがやってくる。

リア王は国の半分を与えたにもかかわらず自分の騎士を半分の50人に減らしたゴネリルに対し「もうお前の世話にはならない。二度と会うこともない。」と言って次女のリーガンを頼ろうとするが、リーガンは「お父様、力のない者はないように振舞ってくださいませ。そもそもお付が50人でなぜ足りないのですか?費用もかかりますし、騒ぎも起こりやすいのでは?足りなければ私どもで致します。もし私方に起こしのおつもりでしたら、お付の方は25人にしてくださいませ。それ以上はお断り申し上げます。」と言い、お付の半減を要求する。

これに驚いたリア王は「俺はお前に何もかもやったではないか。これだけの従者はつけると言っておいたはずだ!25人と言うなら、ゴネリル、50人付けるお前のところへ行こう。」とゴネリルを頼ろうとする。

するとゴネリルは「ちょっとお待ちくださいませ。5人にせよ。そもそも同じ館にお住まいいただくのに、どうしてお付が必要でしょうか。」
さらにリーガンが追い打ちをかける。「1人にせよ。」

これを聞いたリア王は「この情け知らずの鬼ども。必ず復讐をしてやるぞ。いずれこの世が恐れおののくようなことをしてみせる!俺は気が狂いそうだ!」と言って外へ飛び出していき、道化とケントがあとを追った

リーガンとゴネリルは「当人だけなら喜んで迎えましょう。でもお付は一人でも嫌。」「私もそのつもり。自業自得というもの。己の愚かさを味わい尽くさずにはいられぬらしい。」と言い合い結託している。2人はついに、リア王から土地も人も全て奪い取って追い出した
(※この後、二人ともエドマンドと恋愛関係になって憎しみあい、最終的に殺し合いに発展し、二人とも命を落とします。)

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第三幕

第三幕 第1場 リア王発狂 ケントがコーディリアに知らせる

前場から少し時間が経ったと思われる。
場所は雷鳴轟く荒野。
リア王とはぐれたケントが、出合った紳士に王の所在を尋ねている。紳士の話ではリア王は、荒れ狂う風に向かって「この大地を海に吹き落とせ。何もかもひっくり返し、めちゃめちゃにしてしまうのだ。」などと叫び散らしており、それを一人付いている道化が冗談を飛ばして王の気を紛らわせようとしている、とのこと。

変装して身分を隠しているケントは、この紳士に見覚えがあるらしい。ケントによると、フランス軍がこの乱れたブリテンの状況を嗅ぎ付け王国に乗り込んできている、とのこと。ケントはその紳士に「直ちにドーバーの港に行ってコーディリア姫にお会いし、王の苦しみがただ事ではなく、このままでは気が狂いかねない、とお伝え頂きたい。その際この指輪を見せていただきたい。」とお願いして指輪を託す。

そしてケントは紳士と分かれて王を探しに行く。

 

第三幕 第2場 嵐の中で発狂するリア王

前場の少し後と思われる。
場所は嵐の中の荒野。
リア王と道化が2人でさまよっている。

リア王は嵐の荒野で「風よ吹け、お前の頬を吹き破れ!恩知らずの人間どもを作り出す種を一粒残らず打ち砕いてしまうのだ!」と叫び発狂している。

するとそこへケントが現れ、嵐を避けるためリア王と道化を近くの掘っ立て小屋へ案内する。

 

第三幕 第3場 グロスターの忠義とエドマンドの裏切り

前場の少し後と思われる。
場所はグロスターの居城の一室。
グロスター伯と次男で庶子のエドマンドが話をしている。

なんでもクロスターによると、グロスターはリア王を救おうと思ってリーガンとコーンウォール公に願い出たところ、なんと城を召し上げられてしまったらしい。しかも今後王のために計ったりせぬようにと忠告された模様。そんなグロスターは、実は今夜フランス軍から手紙を受け取っておりタンスにしまい込んでいる
(※つまりグロスターはフランス軍と内通しています)

グロスターはそれを息子のエドマンドに教えると「俺はこれから王の所在を訪ね、陰ながらお助けするつもりだ。お前は俺の考えてることが見破られぬよう、公爵を押さえておいてくれ。」と頼み、王を探しに旅立つ

一旦グロスターに合わせたエドマンドだったが、グロスターが旅立つと「すぐにでも公爵に知らせてやろう。親父が失ったもの(城)も、きっと俺の手元に戻ってくる。」と呟き公爵の元へ向う
(※この後エドマンドがグロスターを裏切ります)

 

第三幕 第4場 リア王の元にグロスター親子が合流

前場の少し後と思われる。
場所は荒野の掘っ立て小屋の前。
嵐の中、リア王、ケント、そして道化が掘っ立て小屋に入ろうとしていると、小屋からお尋ね者になって気違いを装ったエドガーが出てくる。エドガーはトムと名のり物乞いを装っているが、リア王は学者と思い込む。リア王は相変わらずゴネリルとリーガンを罵り嘆いている。

するとそこに松明を持ったグロスターが一人で近づいてくる。グロスターはリア王だと分かると、リーガン夫妻の酷い指図に耐えられなくなり、命令に反してでもリア王を探しだして城に迎えようしていると伝え、5人でグロスターの城(※現在はリーガン夫妻の城)へ向う

グロスターは、可愛がっていた長男エドガーを勘当したことを深く悲しんでおり、気が狂いそうになっている。
(※状況を少し整理します。グロスターとエドガーは親子ですが現在勘当中。エドガーは変装してトムと名乗っているため、グロスターはエドガーを息子と気づいていませんが、エドガーはグロスターを親だと認識しています。グロスターはエドガーを気違いと思っているようですが、リア王はエドガーを学者と思い込み自分に同行させます。また、もともとケントとグロスターは共にリア王に使えた仲で本来面識があるのですが、ケントが変装しているためケントはグロスターだと分かっていますが、グロスターはケントだと分かっていません。リア王もケントだと分かっていません。)

 

第三幕 第5場 グロスター、エドマンドに裏切られる

前場の少し後と思われる。
場所はグロスターの居城の一室。
コーンウォール公とエドマンドが話をしている。どうやらエドマンドが父グロスターを裏切り、フランス軍と内通した手紙を持参した上で、命令に反しリア王に協力していることを報告したらしい

それを知ったコーンウォールは「この城を去る前に必ず復讐してやる。」とグロスターに激怒している。同時に父を裏切ってまで自分に真相を報告したエドマンドを高く評価し「これでお前がクロスター伯になれる。どこまでもお前を信じよう。この身に実の父親以上の情愛を期待するが良い。」と厚い信頼を寄せ、この城がエドマンドのものになることを仄めかす
(※間もなくコーンウォールが亡くなります。するとエドマンドとリーガンが恋仲になります。)

 

第三幕 第6場 リア王暗殺の陰謀の知らせに逃亡を図る

前場の少し後と思われる。
場所はグロスターの居城の近く、百性家の一室。
5人でグロスターの城へ向かっていたが、リア王、ケント、エドガー、道化の4人がここで休憩をとり、その間にグロスターが一人で城に様子を探りに行く。エドガーは相変わらず物乞いのトムを装って「ローマ皇帝のネロが地獄の湖で釣りをしているそうだよ。」などと言っている。

ここでリア王は、ゴネリルとリーガン(※ここにいません)を被告人に見立てた裁判ごっこのようなものを始めるが、リア王は完全に正気を失っており、やがて眠る。

そこへグロスター戻って来て事態の急変を告げる。「王の命を狙う陰謀の噂を耳にした。担架の用意があるから、(寝ている)王を乗せてドーバーまで落ち延びてくれ。早く逃げるのだ!

グロスターとケント、そして道化の3人で王を担架に乗せてドーバーへと運び去る。娘の虐待に正気を失った悲惨なリア王を目の当たりにしたエドガーは、自分の不幸がさほど辛いものとは思えないようになり、いつか名乗り出てグロスターと親子の和解を果たしたいと願って、一人で去っていく。
(※この場でエドガーが「ローマ皇帝のネロが地獄の湖で釣りをしているそうだよ。」という発言をします。冒頭の解説でシェイクスピアの「リア王」は紀元前8世紀頃の「レイア王」をモデルにしているとお話しましたが、ネロは西暦37−68年に実在した皇帝であるため、少なくともシェイクスピアはこの物語の時代設定を「西暦68年以降」としていると思われます。)

 

第三幕 第7場 グロスター両目を潰される

前場の少し後と思われる。
場所はグロスターの居城の一室。
グロスターの手紙の内容(フランス軍との内通)が知らされ、みんながグロスターの裏切りに怒り狂っている。オズワルドの話によると、リア王はグロスターや騎士たちが連れ出しドーバーへと向かっているらしい。

リーガンとゴネリルは「グロスターを絞首刑にしろ。目玉をえぐり出せ。」と言い合っているが、フランス軍が上陸したのでコーンウォールはゴネリルに夫のアルバニー公の元に急いで帰るように促し、エドマンドとオズワルドがゴネリルを送っていく

すると直後にグロスターが捕らえられてくる。早速コーンウォールとリーガンがフランスから受け取った手紙について尋問するが、グロスターは「手紙は憶測をもとに書かれたもので、敵方からもらったものではありません。」としらを切る。次にリーガンが「背けば命がないと厳しく言っておいたのに、なせ王をドーバーへ送ったのだ?」と問い詰めると、グロスターが答える。「残忍なお前たちが、老王の目をえぐり出すを見るに忍びなかったからだ。いずれ娘たちに復讐の女神たちが襲いかかるだろう。」

これを聞いたコーンウォールは、召使いに椅子を押さえさせグロスターの片目をえぐり出す。リーガンは更に残る片目もえぐり出せと言っているが、子供の頃から仕えてきた召使いの一人が短剣を抜いてこれを阻止しようと試みる。コーンウォールも剣を抜くが、結局剣を手に取ったリーガンに後ろから刺されて召使いは息絶える。しかしこの時コーンウォールも傷を負う。
(※コーンウォールはこの傷が元で間もなく亡くなります。)

そしてグロスターは、コーンウォールにもう片方の目もえぐり取られる。グロスターは次男のエドマンドに助けを求めるが、エドマンドは既にここにはおらず、リーガンは「お前はお前を憎んでいるものに助けを求めている。あの男がお前の反逆を知らせてくれたのだよ。」とエドマンドがグロスターを裏切ったことを告げる

すべてがエドマンドの謀略だったことに気付いたグロスターは「何という愚かなことを!エドガーは濡れ衣を着せられたのだ。俺は神に心から許しを請いたい。」と嘆き、エドガーを疑ったことを悔やむ。

そして両目を潰されたグロスターは、リーガンに城門の外へ放り出される。あまりの惨状に見かねた召使いの一人が、リーガンを見限り目の見えないグロスターについていった。

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第四幕

第四幕 第1場 エドガー、盲目のグロスターをドーバーへ導く

前場の少し後と思われる。
場所は荒野。
リア王たちと分かれたエドガー(トム)が一人で荒野をさまよっていると、老人に手を引かれたグロスターに出会う。老人は長年グロスターに仕えた人物。

エドガーはそれが自分の父だとすぐに気付くが、グロスターは目を潰されて目が見えない。グロスターは欺かれてエドガーを疑ったことを悔いており、いつかエドガーに会えたらもう一度目が見えるようになりたい、と嘆いている。

エドガーが相変わらず気違いの乞食トムを装うと、グロスターは老人に帰るように指示し、エドガー(トム)に金目の物をやるからドーバーの絶壁まで案内してくれと頼む
(※グロスターとエドガーは実の親子ですが、ここでもエドガーは息子だと名乗り出ません。)

 

第四幕 第2場 ゴネリルとアルバニー公の対立

前場の少し後と思われる。
場所はアルバニー公の館の前。
ゴネリルとエドマンド、そして執事オズワルドがアルバニー公について話をしている。

オズワルドの話によると、オズワルドがアルバニー公にフランス軍の上陸やグロスターの陰謀そしてエドマンドの忠節について報告したところ、アルバニー公はすっかり変わってしまって奥に籠もってしまったらしい。

そんなアルバニー公をゴネリルは臆病者と影で罵り、エドマンドに口付けをして「グロスター伯爵(エドマンドのこと)!お前になら女はどこまでも尽くしたくなる。」と熱を上げている。エドマンドはコーンウォール公の館へと帰っていく。

そこにアルバニー公が入ってくると、ゴネリルと激しい喧嘩を始める。アルバニーはゴネリルの恩のある父親への悪行を怒り「悪魔!猫かぶりの女狐め!」と罵り、ゴネリルは「説教はもうたくさん!阿呆!」と罵る。

そこへ使者が現れ、グロスター伯が両目をえぐり取られ、コーンウォール公が亡くなったと報告する。なんでもコーンウォール公がグロスターの目をえぐり取ったところ、古くから仕えていた召使いが反逆して剣を抜き、これをコーンウォール公自ら剣を抜いてリーガンと共に討ち果たすが、コーンウォールも深手を受けその傷がもとで亡くなったらしい。そしてエドマンドが父グロスターを中傷し、リーガン夫妻に自由に処分できるよう仕組んだ、と報告する。

更に使者はリーガンの手紙をゴネリルに渡し、ゴネリルは直ちに返事を用意する

エドマンドの謀略を知ったアルバニーは、目をえぐられたグロスターの仇をとることを誓う。

 

第四幕 第3場 ドーバーに到着したリア王

前場の少し後と思われる。
場所はドーバー付近のフランス軍陣地。
ケントが第三幕第1場でコーディリアへの伝言を託した紳士と話をしている。

紳士の話によると、ケントからの手紙(伝言)を読んでリア王の現状を知ったコーディリアは、涙を流して「お姉様方は何ということを!それこそ女の恥!」と嘆いたらしい。

そしてこのドーバーの町に着いたリア王は、自分に追従しなかったために領地を与えず罵倒して追い出したコーディリアに会わす顔がなくて、未だにコーデリアに会えないでいる。

それから紳士によると、アルバニーとコーンウォールの両軍は出陣した模様。

二人はリア王の元へ向かう。

 

第四幕 第4場 ブリテン軍の襲来

前場のすぐ後と思われる。
場所は前場と同じ、ドーバー付近のフランス軍陣地。
コーディリアと侍医が話している。コーディリアはリア王がここドーバーへ来ていることを知り、会いたがる。捜索隊を出して自分の元へ連れてくるように命令を出すとともに、父を救う方法を侍医と話し合っている。

するとそこへ、ブリテンの軍勢が攻め寄せてくるとの知らせが入る。フランス王は父を思うコーディリアの気持ちを察して兵を出してくれたらしい。
(※先に軍を動かして、ドーバーまで攻め入ったのはフランス側です。)

 

第四幕 第5場 手紙の中身とオズワルドへの指令

前場の少し後と思われる。
場所はグロスター伯の居城。
オズワルドが、ゴネリルからリーガンへの返事の手紙を持ってきたらしい。

アルバニーの軍勢はすでに出陣しており、リーガンの軍勢も明日出陣する予定。リーガンはゴネリルがエドマンドにも手紙を書いたことを知って不審に思い、恋文ではないかと女の勘を働かせる。

エドマンドへゴネリルの手紙を届けに行くオズワルドに対し、途中で裏切り者のグロスターに出会ったら始末するように指示する。

 

第四幕 第6場 グロスター、エドガーの機転で生きながらえる

前場の少し後と思われる。
場所はドーバー近くの田舎。
百姓姿のエドガー(トム)が、目の見えないグロスターの手を引いている。

エドガー(トム)は崖の上まで連れてきたと言って報酬の財布を受け取ると、グロスターはそこから飛び降りたつもりで倒れ込み意識を失う(※全てエドガーの嘘でここは崖ではなく平地です)。

そして意識を失ったグロスターを起こして、エドガーは声を変えてさらに別人(エドガーでもトムでもない3人目の人物)のふりをして話しかける。「あんな高いところから落ちて、お前さんは息をしている。これは奇跡だ。お前さんは神様に守られている。」そしてグロスターは死ぬことを思いとどまる。

そこへ野生の草花や刺草(いらくさ)を冠にした異様な姿のリア王が登場する。リア王は正気を失い穿った言葉と戯言が入り乱れているが、グロスターは声でリア王だと分かる。リア王もグロスターだと分かると「俺の不幸を泣いてくれる気持ちがあるなら、俺の目をやろう。」と語りかける。

コーデリアの使いの紳士がやって来てリア王が去って行くと、エドマンドにゴネリルの手紙を届けに行ったはずの執事オズワルドが現れる。グロスターの始末の依頼も受けていたオズワルドは「この謀反人め。」と襲いかかるが、エドガーが剣を抜いて立ちはだかり、オズワルドが倒れる。オズワルドは「この手紙をブリテン軍の陣地にいるエドマンドに渡してくれ。」と頼んで息絶える

エドガーが手紙を読んでみると、中身はゴネリルからエドマンド(エドガーの弟)への恋文と夫のアルバニー公の殺害を依頼する内容で、エドガーは「俺の弟に乗り換えようなどとは!なんて果てしない女の欲!」と憤り、いつかアルバニー公に見せてやろうと保管する。
(※この手紙が後にゴネリルを追い詰める決定的な証拠になります)

 

第四幕 第7場 コーディリアとリア王の再会

前場の少し後と思われる。
場所はフランス軍の陣営。
コーディリア、ケント、侍医、紳士が話し合っている。ケントはこれまでの出来事をコーディリアに報告し、コーディリアは変装してまで父リア王に尽くしてきたケントにお礼を言っている。そこへ侍医が椅子に眠ったままのリア王を連れてくる。

コーディリアが起こすと、リア王は相変わらず正気を失い穿った言葉と戯言が入り乱れている。ここがどこなのか、昨夜どこで寝たのかも思い出せない。しかし目の前で涙を流しているのがコーディリアだと分かると「お前は俺を憎んでいるはずだ。何もかも忘れて、この俺を許してくれ、頼む。」と誤る

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第五幕


第五幕 第1場 アルバニーの手に渡る証拠の手紙

前場の少し後と思われる。
場所はドーバーに近いブリテン軍の陣営。
リーガンとエドマンドが、ゴネリルの使いは殺されたに違いないと話している。

リーガンはエドマンドに「姉上のことを思っておいでなのでしょう。お願いです、あの人と親しくなさらないで。あなたのために、できるだけのことをしたいと思っています。」としきりにゴネリルとの仲を勘ぐり、エドマンドを自分のものにしようと立ち回る

そこにアルバニー公とゴネリル、将兵たちが現れる。リーガンとゴネリルは険悪。アルバニーは、王がブリテンの政治に不満を抱く者達と共にコーディリアの元に向かった旨を伝えると共に、正義を信じえぬ戦いに勇気は起こらぬが、フランスの我が領土を犯そうという腹は決して無視できまい、と戦争の大義名分を語る。
(※ブリテン側の総大将はアルバニーです。)

そこに変装したエドガーが現れ、人払いをした上でアルバニーに手紙(※ゴネリルのエドマンドへの恋文とアルバニー暗殺を依頼する内容)を渡す。そして「勝利の暁には、ラッパを鳴らしこれを持参したもの(エドガー)をお呼び下さいませ。その時は必ず剣を取って、その中にしたためておきましたこと(※エドマンドとの一騎打ち)を、見事やり遂げてご覧に入れましょう。」と告げて去っていく

姉と妹、いずれにも良い顔をしてしまったエドマンドは、どちらを取ろうか品定めをしており、「戦いの間はその力を大いに利用し、済んだら逃げたがっている女に手っ取り早く邪魔物を片付けさせるに限る。」と自分の手を汚さずいいとこ取りをしようと考える。

 

第五幕 第2場 フランス軍は敗北、リア王とコーディリアは捕縛

前場の少し後と思われる。
場所は 英仏陣営間の戦場。
ブリテン軍とフランス軍がぶつかり戦争が起こる。やがてフランス側が敗北し退却する

リア王とコーディリアは虜になり、グロスターはエドガーに付き添われて逃げていく。

 

第五幕 第3場 王族たちの最後とリア王の大悲劇

前場の少し後と思われる。
場所はドーバー近くのブリテン軍の陣営。
囚われたリア王とコーディリアが連れられてくるが、僅かに正気を取り戻したリア王はゴネリルとリーガンには断じて会おうとせず、コーディリアに向かって「さあ牢屋へ行こう。二人だけでかごの中で小鳥のように歌おう。」と言う。

エドマンドは隊長にその二人を牢屋へと連れて行かせるが、その際隊長に紙を渡しその指示通り動くよう命令する。
(※コーディリアとリア王の殺害の指令です。)

そしてアルバニーとゴネリル、リーガン、その他の将兵達が登場する。アルバニーは捉えた二人をくれぐれも適切に処遇するようにとエドマンドに命ずる。
(※「殺すなよ」という意味だと思われます。)

 

ここで、エドマンドの立場をめぐって対立が起こる。アルバニーはエドマンドを兄弟とは思っていないと言うと、リーガンは「その兄弟の資格は私が差し上げます。私の兵士たち全財産をあなたにお預けします。今日よりあなたが我が夫です。」とエドマンドとの結婚を宣言。それに対しアルバニーを殺して自分がエドマンドと結婚しようと思っていたゴネリルは当然反発する。

するとアルバニーが突然爆弾発言をする。「エドマンド、反逆の大罪人として貴様を捕らえる。同時に上辺を金色に塗り飾ったゴネリルもだ。ゴネリルは既に、エドマンドとの婚約を取り交わしている。故にリーガンのエドマンドへの要求に異議を申し立てる。」
(※ゴネリルがオズワルドに託した、エドマンドへの恋文とアルバニー暗殺を依頼する内容の手紙は、エドガーがオズワルドを殺して奪い、それをエドガーがアルバニーに届けたため、アルバニーは全て知っています。)

ここでリーガンが、突然苦しみだして運ばれていく(※ゴネリルに毒を盛られたようです。間もなく亡くなります。)。そしてアルバニーが伝令にラッパを鳴らせると、鎧に身を固めたエドガーが現れる

エドガーは、名乗らないままエドマンドを「貴様は兄弟と父を裏切り、ここで侯爵の命を狙う謀反人だ。」と罵る。エドマンドは「騎士道の掟によれば、受けるに及ばぬ挑戦だが、相手になろう。」と言って、その場で決闘を行い、エドマンドが倒れる
(※騎士道の成立は11世紀以降と言われています。ですのでこの物語は、11世紀以降のイギリスを舞台にしていると思われます。)

アルバニーはエドマンドにとどめを刺さないよう指示し、手紙にゴネリルの署名が入っている所を示し「覚えがあるだろう?」とゴネリルとエドマンドに詰め寄る

ゴネリルは「だからどうだと言うのです。法は私のもの。」と開き直り怒って去っていくのに対し、エドマンドは「確かにその通りでございます。」と認めた上で、エドガーに「それにしても、一体何者だ?」と問いかける。

ここでようやくエドガーが「俺の名はエドガー、お前の父親の嫡男だ。」とエドマンドに計られ逃亡の身となった兄であることを明かす。

そしてアルバニーにこれまでのいきさつを語りだす。エドガーの話によると、エドガーは乞食の姿に身を変え素性を隠して目の見えない父グロスターを支えてきたが、つい半時間前に父に自分が息子のエドガーであることを明かした。その直後グロスターは微かな笑みを浮かべたまま亡くなった。エドガーが大声をあげて泣き叫んでいると、通りすがりの一人の男が近づいてきた。男はエドガーだと気づくと、グロスターの屍に身を掛けて大声で鳴きだし、リア王に纏わる哀れな話を語りだした。男はリア王に追放されたケント伯だった。ケントは姿を変えてひたすら王にお使いしていた

そこに紳士が飛び込んできて、たった今ゴネリルが短刀で自殺し、しかもリーガンはゴネリルが毒殺したと白状した、と報告すると、エドマンドは「俺はその二人と誓い合った男だ。」と言う。

そしてゴネリルとリーガンの遺体が運ばれてくると、アルバニーは二人に対し「天の裁きだ、憐れみの心はない。」と突き放す。

 

更にケントが現れ「リア王はここにおいででは?」と尋ねると、アルバニーはエドマンドにリア王とコーディリアの所在を尋ねる。するとエドマンドは「少しはお役に立ちたい。私の名で王と姫君の命を奪えと指図書を送った。城へ急使を、早くせぬと間に合いませぬ!」と二人を殺害しようとしたことを白状し、それをと取り消そうとする。

そこへリア王が既に息のないコーディリアを抱えて登場し嘆く。「泣け、泣け、泣け!ああ、お前たちは石でできているのだ!どいつもこいつも人殺しだ!娘はもう二度と戻ってはこぬのだ。コーディリア、コーディリア、まだ行ってはならぬ!」これを見て一同は心を痛める。

ほとんど正気を失っているリア王だが、奇跡的にその場にいるのがケントだと分かる。しかしケントが道中付き添っていたことや、上の二人の娘が亡くなったことを告げても噛み合わない。そして傷を負っていたエドマンドも息を引き取る

アルバニーは「私は直ちに身を引き、リア王ご存命の限り、今より全権力をその手にお預けする。」と宣言するが、直後にリア王は「お前にはこれが見えるか?この顔を見ろ!見ろ!この唇を!それを!」と絶叫して息絶える

 

アルバニーはエドガーとケントに対し、旧領を返し、この度の功労にふさわしい褒賞を与える旨を約束した上で、「この国の政を預かり、重傷を負った国家を立ち直らせていただきたい。」とお願いし、二人はこれを承諾する。


こちらはアンソニーホプキンスのリア王 2018年

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感想!

「リア王」を読んで、まず僕が注目してみたいと思ったのが、リア王に父親、国王としての資質が本当にあったのか、というところです。

「リア王」は、シェイクスピア悲劇の最高峰と言われています。確かに頭の衰えた一国の王が、何もかも剥ぎ取られて、気違いの乞食同然の姿でさまよう姿は常軌を逸しています。終わり方も酷く、唯一信じてくれた末娘を殺され、悲しみのあまり悶え死ぬという信じられない結末です。

あまりの転落ぶりに確かに同情はしますが、僕はそれ以上にリア王自身にも非があったのではないかと感じてしまいます。結局子供は施した教育以上のものは基本的には身に付きませんし、自分の施した以上に恩を感じることもありません。これだけ虐待を受けるのは、それに相応する父親だったということなのではないだろうか、と思ってしまいます。

「お前たちのうち一番父のことを思っておる者に最大の贈り物を与えよう。」と娘に提案し、あからさまな追従をした人間だけに土地を与える。頭が衰えたとは言え、こんなに浅はかな行いを子供にしてしまう時点で、この人は「土地と財産を守る」以外の父親としての務めを果たしてどれだけやってきたのだろうか?と勘ぐってしまいます。

それからリア王の態度も傲慢に感じます。統治権を譲った後に100人連れで面倒を見ろ、というのは王云々以前に常識のある人の行いではないです。このようなわがままと無駄遣いは国の財政を傾けるだけです。ゴネリルたちの言うとおり、下で支える人間が納得するわけがありません。現代人の感覚で見てしまうからこのように感じるのかもしれないですが、国を預かる立場にある人間としての自覚が足りないと思います。国を思う気持ちが少しでもあるのであれば、上皇陛下のように慎ましくしていただきたいです

 

 

もう一つ注目してみたいと思ったのが、「リア王の悲劇」は「一人の老人の悲劇」に留まらず、「国家レベルの悲劇」に発展するところ。ブリテンは王族と重臣を失っただけでなく、お家騒動による人心の乱れにつけ込まれ、フランスに領土まで奪われそうになります。

僕がこの戯曲を読んで真っ先に頭をよぎった人物が、ロシアのプーチン大統領。彼は建前上選挙で選ばれる大統領であって、世襲でもなければ終身国家元首でもありませんが、現実的には帝国主義の専制君主に近いように思います。

問題は彼にも老いの兆候があり、まともな判断力を失っている可能性があるにも関わらず、その行いを誰にも止められないこと。多くの専門家が、ロシアがウクライナに侵攻などするわけがない口を揃えていました。まず衛星により戦争準備が丸見えで相手に警戒されすぎ。それから大義名文と正義がなさすぎる上に、犠牲を払って勝っても得るものが小さすぎる。

それにもかかわらず侵攻に踏み切りました。その結果ウクライナは焦土となり、世界は第三次世界対戦と核戦争の危機。そして世界の大半を敵に回して経済制裁と四面楚歌。更に出口の見えない泥沼化。戦費と戦死者の増加に国力衰退。虐殺に戦争犯罪……。

まともな人物の判断とは思えない。この時期の彼の見た目の変化も大きい。ちょっと前までフェイスラインがもっとシャープだったような気がするのですが……。世界中のかなり多くの人が感じています。この人は大丈夫なのか……?と。

この人の場合、その「老いによる悲劇」が、「個人レベル」「国家レベル」を飛び越えて、「地球レベル」にまで発展しています。

完全にリア王の「国家レベルの悲劇」を超えています。

この本の解説には「リア王の悲劇は、宇宙全体がどよめくような崇高で激烈な悲劇となっており……」と書いてありました。

……

……宇宙全体???

……なにを大げさな……さすがにそれは言い過ぎだろ……

と僕は思いましたが、少なくともプーチン大統領の悲劇は確実に「地球全体がどよめくような激烈な悲劇」へと発展しています。

 

老いてなお国を顧みずにわがままを通したリア王と、同じく老いながらも欲しいものを屁理屈と核兵器をてこに無理矢理手に入れようとするプーチン大統領が、僕には重なって見えます。

僕は欲しいものを力ずくで手に入れようとするだけのプーチン大統領に、世界のリーダーである常任理事国の元首を務める資格があるとは思えない。国の財政を顧みずわがままを通したリア王に、国を預かる資格がないように。

結局リア王の最後はシェイクスピア最高峰と言われるほどの大悲劇となるわけなのですが、僕はこれだけの悲劇を世界中に撒き散らしたプーチン大統領にいったいどんな最期が待ち受けているのか……とても気になっています

あなたはどう思われましたか?

それでは。

 

他のシェイクスピアの作品についても書いていましたので、お時間があったら読んでみてください。いずれも2万字級のビッグコンテンツです。
 
それとも他の本を読んでみる?

 

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