【5分で舞姫】あらすじ・内容・解説・感想【森鴎外】

「舞姫」は1890年に発表された森鴎外(1862-1922)のデビュー作で代表作。彼が1884年から医学を学ぶためにドイツへ留学した際の体験を踏まえた小説であり、主人公のエリート官僚「太田豊太郎」が、手記によってドイツでの恋愛経験を綴る形式をとっています。その日本人と外国人が恋愛関係になるという近代的な内容と、漢文調と和文調とを組み合わせた斬新な文体、この新しい組み合わせによって、当時大変な評判となった作品です。
この舞姫についてあらすじ、内容、解説、感想を書いてみました。

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まずは簡単な内容と解説!

19世紀末、5年間ドイツ留学に行っていたエリート官僚太田豊太郎が、帰国の途中船内客室で留学中の事を回想して記録したものになります。大学卒業後官僚となった豊太郎は、5年前にベルリンに赴くが、そこで下級階層の若い踊り子エリスに出会い恋をする。父の葬儀代を工面し交際を始めるが、仲間の讒言により豊太郎は免職される。新聞社の通信員の職に就いた豊太郎は、エリスと同棲し、やがて彼女は妊娠する。豊太郎は友人の相沢謙吉(けんきち)の紹介で大臣(天方伯あまがたはく)のロシア訪問に随行し、これにより信頼を獲得した豊太郎は、復職と日本への帰国が実現する。しかし豊太郎はエリスに帰国することを伝えられず、相沢からそのことを知らされたエリスは発狂する。回復の望みのないエリスを残して豊太郎は日本に帰国した。というのがざっくりとした内容になります。
(※下でもう少し詳しいあらすじを紹介します。お急ぎの方は次の解説は飛ばしてもらっても構いません。)


森鴎外 出典︙ウィキペディア

森鴎外は東大医学部卒業後、陸軍軍医となり、ドイツ留学を経て、最終的には軍医総監、軍医のトップにまで昇進しました。そして医学博士で文学博士。つまり彼は文学者である以前に完全なエリートです

そのエリートの鷗外さん、随分モテたようです。実は1888年に森鴎外がドイツから帰国した後、エリーゼ ・ヴィーゲルト(1866-1953)というドイツ人女性が彼の後を追って来日したという出来事がありました。日本人が外国人と恋愛すること自体がまだ珍しく、まして有色人種が白人に強烈に差別されていた時代、ドイツ人女性と交際して、彼女は実際に日本まで追いかけてきたわけですからね。

二人は国際結婚を考えていたようですが、鴎外の家族に反対され破局エリーゼは約1ヶ月後にドイツに帰らされてしまいました。この物語は、森鴎外の実際のドイツ留学中の恋愛にもとづいており、このエリーゼがエリスのモデルになっていると見られています。その後鷗外は、家族の勧めにより赤松登志子という女性と結婚することになりますが、これらに対する反発として、この「舞姫」(1890年)を書いたとも言われています

この日本人と外国人が異国の地で恋愛関係になるというそれまでにない近代的な内容と、漢文調と和文調とを組み合わせた斬新な文体、この新しい組み合わせが読者の心を掴み、当時「舞姫」は大変な評判となりました。

…ですが実はこの話にはまだ続きがあります。20年後の1910年、森鴎外は「普請中」という短編小説を発表しました。これは「築地のある普請中(工事中)の西洋料理店に参事官(こちらもエリート)の渡辺が行くと、ドイツ留学時代の愛人が渡辺に会いに来る。しかし女性が接吻やドイツ時代の思い出話を楽しもうとしても「日本はまだ普請中(発展途上)で進んでいないから」とアメリカ行きをすすめ、終始冷淡に扱い女性は寂しく去っていく。」という話。
(※森鴎外は自分自身を一般大衆とはかけ離れた高等人種と見ていたようで、小説の主人公にもいわゆる「高尚な人物」を多様しています。)

主人公も異なり完全に別の小説なのですが、どう見てもエリーゼさん来日の話が元ネタですよね

でも鷗外さん、あまりそれをネタに本を出すと、女性から嫌われますよ…どちらも結局振ってるし…
ちなみに「舞姫」では後ろ髪ひかれつつ振っているのに対し、「普請中」では冷淡に振っています。

お話としては面白いけど、実際に交際した女性をフル活用して小説のネタにする鴎外さんを、僕はあまり好きにはなれない…

女性目線で見てどう思います…?

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もう少し詳しいあらすじ!

1 秀才豊太郎の回想、東大、官僚、そしてドイツ留学へ

 

幼い頃から厳しい家庭教育を受けてきた太田豊太郎は、東京大学法学部(※大学としか書かれていませんが、当時大学といえば東大を指したそうです。)に進学し、優秀な成績をもって19歳で卒業しました。(※実は森鴎外も年齢を偽って入試を受けており、19歳にして東大医学部を卒業しています。彼は早熟の秀才です。)某省に出仕して故郷の母を呼び寄せ3年ほど経った時、ドイツ留学を命じられベルリンに赴きました(22歳)。そしてドイツ滞在を終え、日本に帰る船の中(27歳)でこの5年間のドイツ滞在を回想する形で物語が始まります。彼はドイツに残してきた恋人エリスが気がかりで、憂い悩んでいました。

 

2 エリスとの出会い、エリートから挫折へ

ベルリンに赴任した豊太郎は、大学で政治学を真面目に勉強しました。しかし3年も経つ(25歳)と、ヨーロッパの自由な空気や歴史文学の影響を受け、勉強がおろそかになり、上司との関係は悪化していきます。
(※つまり目標を見失って、心に隙があったようです。)

そんなある日と豊太郎(25歳)がクロステル街の教会の前で、泣いている16,7歳の少女に出会います。彼女がヴィクトリア座の踊り子(舞姫)「エリス」でした。豊太郎が少女にその理由を聞いてみると、「父が亡くなって明日葬式を行うが、そのためにお金がない。」という。これを聞いて可哀想に思った豊太郎は、手持ちの銀貨と時計を渡して費用を援助してあげました
(※豊太郎には男性の下心があったと思われます。)

こうして豊太郎とエリスは接近して交際が始まります。読書などを通じた清い交際ではありましたが、豊太郎が頻繁に女優に会いに行って学問をおろそかにしていることを知った同僚は、これを上司に報告。当時は日本人が外国人と恋愛・結婚するなど考えられなかった時代である上に、彼は国の金で留学しているわけです。なんと豊太郎は解雇されてしまいました。しかも日本からは母が亡くなった旨の手紙が届き、さらに落ち込みます。
(※豊太郎も交際がバレたらクビになる可能性があることは知っていたはずです。それを承知の上で自ら近づいたので、自業自得な面は大きいと思います。)

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3 エリス妊娠!エリスを取るか?復職を取るか?

留学生の身分を剥奪され公費を止められた豊太郎は、生活に困りエリスの家に身を置きますが、大学の同級生だった友人の相沢謙吉(けんきち)が豊太郎を助けてくれます。相沢は、ベルリンで政治学芸などを日本へ報道する新聞社の通信員の仕事を紹介してくれました。収入は少なかったですが、エリスとは楽しい月日が流れます。そしてエリスは妊娠し、つわりで倒れてしまいました。

豊太郎がエリスの看病をしていると、その豊太郎宛に天方伯の秘書官をしている相沢から「大臣(天方伯)がベルリンに来ているから来い」と郵便が届きます。豊太郎が馬車でベルリンのホテルへ駆けつけると、天方伯(あまがたはく)にドイツ語の翻訳の仕事を頼まれます。しかし同時にエリスとの交際を断つことを要求され、それに対し豊太郎は拒否することができませんでした。エリスの愛を選ぶのか、天方伯のもとで復職し失った名誉を取り戻すのか、豊太郎は決断できずに悩みます(※つまりエリスには何も言ってません)。エリスは体調不良で舞台に立つことも難しくなっていました。

1月後、大臣はロシアに向かうことが決まり、豊太郎も通訳として付き従うことになりました。このロシアでの仕事ぶりに大臣の信頼を獲得した豊太郎は「語学だけでも十分世の役に立つ、ともに日本に帰ろう」と大臣に誘われ、豊太郎も承諾してしまいます。エリスにはまだなにも説明していないのに…

エリスに何と説明したらいいのかわからない豊太郎は、悩みすぎてエリスを目の前に気を失ってしまいます。数週間後に意識を取り戻すと豊太郎は、エリスの変わり果てた姿に驚く。相澤から豊太郎が日本へ帰ることを告げられたエリスは、痩せて頰は落ち、血走った目はくぼみ、発狂していました

豊太郎の裏切りを知ったエリスは、彼の名を呼んで罵り、髪をむしり、布団をかんで泣き叫んでいた。エリスは、治癒の見込みのないパラノイアという精神分裂病と診断されます。しかし豊太郎はエリスの母にわずかな生活費を与え、狂女となったエリスと胎児を残し、大臣に従って日本へ帰りました
(※発狂した原因は豊太郎にあります。そして母に生活費を出したのは相沢さんです。)

このような出来事を豊太郎は帰りの船の中で回想し、エリスが気がかりで憂い悩んでいます。豊太郎は「相沢は得難いよい友だが、一点だけ彼には恨みがある」と今でも思っている
(※相沢のおかげで仕事と名誉を取り戻せた。しかし相澤のおかげでエリスは精神的に壊れ、豊太郎はエリスと子供を失った、と言いたいようです。)

 

感想

当時は日本人と外国人の恋愛・結婚など認められてはおらず、まして豊太郎は公費で留学をしている身でした。

それにも関わらず自らの気の緩みと下心(たぶんあった思う)で、貧しい踊り子エリスに声をかけ交際をしてしまいました。

でも僕は豊太郎を避難することができない

なぜなら男なんてそんなもんだから(笑)。
どんな人間でも目標を見失ってしまうことはあるし…男の子は誰だって女の子にモテたいし…

ですがそれが上司にバレると、代償として豊太郎は社会的地位と将来を全て失います。
でも鷗外さんが処分を受けていないところを見ると、鷗外さんとエリーゼさんはバレなかったみたいですね(笑)。

そしてそのままベルリンで新聞社の通信員の職につき、エリスとは同棲し、彼女は妊娠するわけですが、権力者天方伯爵に気に入れられ、復職をちらつかせられるとしっぽを振ってついていてしまう。妊娠したエリスを捨てて…

それでもやはり僕は彼を責められない。
なぜなら僕もそんなもんだから(エリスごめん…)。
確かにエリスは気の毒だけど、「僕だったらそんなことは絶対しない!」とは僕には言いきれない。そんなことになる前に、最大限の自制はしたとは思うけど…

…男どもにとって、地位と名誉はそれだけ魅力的なのだ。

逆にこの豊太郎の行いを、堂々と責められる男が世の中にどれだけいるだろうか。

「俺は絶対そんなことはしない!」と胸を張って断言できる男は、少ないのではないかと思う。

女性の読者さん、こんな感じでごめんね…

 

でもどうしても納得できないところがある。

「エリスを目の前に説明できずに気を失って、数週間後に目を覚ます。」ってそんなこと本当にあるのか???
嘘をつくな豊太郎!!!
何の病気だ?言ってみろ!
そもそもお前の下心が原因だろ!
それだけは自分でやれよ!
しかも自分の代わりに説明させといて、生活費まで出させておいて「相沢を今でも恨んでる」って何言ってんの?
エリスが発狂したのはお前の裏切りだろ?
というか実際その説明通り帰ったよな?
せめて自分の尻は自分で拭け!!

…と僕は思いました。

森鴎外の他の作品についても書いてみましたので、お時間があったら読んでみてください。
 
それとも他の本を読んでみる?

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