【30分でハムレット】あらすじ・内容・解説・登場人物・結末・感想!【シェイクスピア】

ハムレット」は、1601年頃に成立したとされるシェイクスピアの戯曲。デンマーク王子ハムレットが、父王を毒殺して母を妃とした叔父クローディアス王に復讐する物語で、「四大悲劇」の一つになります。
この「ハムレット」について、あらすじ・内容・解説・登場人物・結末・感想を書いてみました。19000字にも及ぶビッグコンテンツになってしまいましたが、最後まで読んで頂けたら嬉しいです。

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目次

まずは簡単な内容と解説!

(※ここではハムレットの成立過程と、その元となった作品について少し解説します。お急ぎの方はあらすじまで飛ばしてもらって構いません。)

ウィリアム・シェイクスピア(1564〜1616年)は、イギリスを代表する劇作家で、ダンテ、ゲーテと並ぶ「世界三大詩人」の一人。多くの傑作を世に残したことで有名ですが、彼の作品には、法律・軍事・哲学・宮廷・音楽など多くの専門知識が駆使されている他、イタリア・フランス・デンマークなどの海外の知識も豊富なため、一人の人間が書いたとはとても思えない、複数の人間によって書かれたものではないのか、といった別人説も根強く囁かれる謎多き人物でもあります。

ハムレット」「マクベス」「リア王」「オセロ」の「四大悲劇」が有名ですが、実は彼の作品は、ゼロから物語を組み立てているわけではなく、既に存在するエピソードや作品を元に翻案(海外の文学作品などの筋や内容を借りて、人名、地名などを変えて改作すること。前人の作品を趣意を言い換えて作ること。)・リメイクする手法をとっています。

この「ハムレット」は、9世紀頃のデンマークを舞台にした物語ということになっていますが、これにも元となる資料が存在し、それがデンマークの歴史歌サクソ・グラマティクスが12世紀に書いたとされる「デンマーク人の事績(じせき)」。

この「デンマーク人の事績(じせき)」は、主に北欧神話と中世デンマークの歴史について書かれたラテン語の書物であり、「ハムレット(Hamlet)」の元になったとされるデンマーク王子(アムレス・Amleth)の物語が、9世紀頃(西暦800年代)の出来事として記録されています。

この「デンマーク人の事績」によると、元となるデンマーク王子(アムレス・アムレート・Amleth)の物語は、概ね次のようになります。

オーウェンディル(本作では先王ハムレット)とフェンギ(本作ではクローディアス)という二人の兄弟が、デンマーク王ロェリックからユトランド(現在のデンマーク)を譲り受ける。オーウェンディルは、一騎打ちでノルウェー王(本作では先王フォーティンブラス)を倒し勇名を轟かせる。更にロェリックの娘ゲルータ(本作ではガートルード)を娶りアムレス(本作ではハムレット)が生まれるが、フェンギはこの結婚に反発してオーウェンディルを暗殺し、ゲルータを自分の妻とする。そしてユトランドの単独支配を宣言する。これに身の危険を感じたアムレスは、自ら狂気と愚鈍を装って身を守ろうとする。この狂気を偽りとみたフェンギは、幼い頃から知る美女(本作ではオフィーリア?)を使って誘惑するが親友の助言によって救われ、母親(本作ではガートルード)との会話の盗聴を試みるがその間者(本作ではポローニアス)を刺し殺されて失敗に終わる。フェンギは手を汚さずに殺すため、アムレスを殺すように依頼した書簡を家来(本作ではローゼンクランツとギルデンスターン)に持たせて彼をブリタニア王の元に送るが、これに気づいたアムレスは家来を殺すように書き換える。

ブリタニア王は、書簡通り家来を処刑した上で聡明なアムレスを気に入り、娘を妻に与える。1年後に帰国(本作では英国には渡らず、海賊船に乗り数週間後に帰ってくる)したアムレスは自分の葬式(本作では剣の試合)に汚物まみれで出席してみんなを笑わせ、一同を酒で泥酔させた後、火を放って皆殺しにし、寝室で叔父フェンギを刺し殺す。この時フェンギは、あらかじめアムレスの剣先を使えなくしておいたのだが、アムレスはそれを知り叔父と自分の剣を取り替えていた(本作ではレアティーズの毒剣と偶発的に入れ替わる)。

(ここからは本作には登場しないエピソード)その後妻を亡くしたブリタニア王は、気に入らない求婚者を処刑するというスコットランド女王に結婚を申し込むという危険な役割をアムレスに指名するが、女王は武勇の誉れ高いアムレスと結婚してしまう。帰国したアムレスはブリタニア王を攻め殺し、2人の妻を連れてユトランドに帰る。

デンマーク人の事績(じせき)」によると「ハムレット(Hamlet)」の元となった記録はこのような内容になっています。この話には「ハムレット」の筋立てがほとんど揃っていますが、主人公「アムレス(Amleth)」の最後の「h」を最初に持ってくるとなんて読めます?……これは完全に言葉遊び(アナグラム)ですよね。要するに「ハムレット」は、9世紀頃にデンマークであったとされる記録を元に、人名を変えて脚色を加えたもの、ということになるようです。
(※ただし彼らは皆、実在の人物と証明されているわけではなく、伝説上の人物という位置づけになります。)

ただシェイクスピアがこれを元に直接書き上げたのではなく、当時既にこの話を元にした戯曲がいくつか存在し、作者不明(一説によると英作家トマス・キッド)の「原ハムレット」(1580年代末頃・現存せず)を直接参考に、トマス・キッドの「スペインの悲劇」(1587年頃)という作品の復讐劇の要素取り入れたのではないかと見られています。

なおこの作品は、劇の台本として書かれた戯曲(ぎきょく)であって、小説ではありません。ですので内容はほぼ会話のみで、概ね3時間ほどで終わるボリュームとなっています。

 

登場人物!

ハムレット
デンマーク王子で前王の息子。現王の甥。父の亡霊から父が毒殺されたことを告げられ、叔父のクローディアスに復讐を誓う。狂気を装い王暗殺の機会を伺うが、逆に王に恐れられ、イギリスに送られ処刑されそうになる。最後は王の謀略によりレアティーズの毒剣で斬られるが、レアティーズから王の謀略を暴露され、命が尽きる寸前に王を殺す。
クローディアス
デンマーク王でハムレットの叔父。先王を暗殺して王位に就き、その妃を自分の妻とした。ハムレットに王暗殺の劇を見せられたことでハムレットを恐れ、イギリスに派遣してイギリス王に処刑させようとするが看破される。さらに帰ったハムレットをレアティーズに殺させようとするが、企みは暴露しハムレットに殺される。
ガートルード
ハムレットの母親。先王の妃で先王の死後はクローディアスの妃となるが、ハムレットはそれを快く思っていない。最後はハムレット暗殺用の毒杯を誤って飲んで死ぬ。
ポローニアス
デンマーク王国の宰相で王の右腕。娘にハムレットと会うことを禁じ、ハムレットとオフィーリアの会話を盗聴する。ハムレットの狂気の真相を探るため、ハムレットとガートルードを盗聴しようとして殺される。
レアティーズ
ポローニアスの息子でオフィーリアの兄。王の戴冠式のためにデンマークに帰るが、すぐにフランスに戻る。その後オフィーリアの死を知って再びデンマークに帰り、ハムレットとの剣の勝負の際に自らの毒剣で死ぬ。
オフィーリア
ポローニアスの娘でハムレットの恋人。父にハムレットに会うことを禁じられ、狂気を装ったハムレットに「尼寺に行け」と言われる。父ポローニアスの急死により発狂し、最後は川に流されて死ぬ。
レナルドー
ポローニアスの従僕。
ホレイショー
ハムレットが一番信頼している親友で、唯一父の亡霊や劇の内容、それから国書偽造などの秘密を打ち明ける良き相談相手。最後はハムレットの遺言を承り、フォーティンブラスに国を託す。
ローゼンクランツギルデンスターン
ハムレットの古い学友。王の命令によりハムレットの狂気の真相を探ろうとする。王命によりハムレットをイギリスに派遣する際、ハムレット処刑を要請する書簡を持って随行するが、道中ハムレットに随行者を処刑するよう書簡を偽造され、二人は英国で処刑される。
オズリック
ハムレットとレアティーズの剣術試合で審判を務める。軽薄な伊達男。
フォーティンブラス
先代のノルウェー王フォーティンブラスの子でノルウェー王子。血の気の多い勇敢な若者で、当初はデンマークに取られた領地の奪還を目指していたが、外交交渉の結果ポーランドへ侵攻することになる。ハムレットの死後はデンマークの統治を託される。
ヴォールティマンドコーニーリアス
ノルウェーへの使節。
マーセラス バーナードー フランシスコー
見張りの従臣。
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あらすじ!

あらすじに入る前に、少し時系列の話をしておきます。物語中に年代を特定できる記述はありませんが、先ほど説明した通り9世紀頃のデンマークを舞台としたお話とされています。物語中に大きく時間が経過する所が2箇所あり、それが第一幕第5場と第四幕第4場の直後。ここでどちらも数週間経過したことになっていますが、その他では場の切れ目であっても、時間的には連続していたり、経過しても1日だけだったりで、ほとんど時間が経過しません。ですので物語の最初から最後まで、正確にどれだけの時間が経過しているのかは分かりませんが、おそらく1月から長くても4月以下、といったような時間の経過になるのではないかと思われます。

 

第一幕

第一幕 第1場 亡きハムレット王の亡霊現れる

星のきらめく寒い夜の0時頃
場所はデンマークのエルシノア城。
城壁の上の狭い回廊を、従臣のバーナードーとフランシスコーが見張りに就いていると、同じく見張りの従臣マーセラスとハムレットの親友ホレイショーが見張りに加わる。

バーナードーらの話によると、この場所で深夜1時頃、一昨日・昨日の二晩続けて恐ろしい亡霊を見たと言い、ホレイショーは今夜それを確かめにここへ来た。

するとそこに亡霊が現れる亡霊は亡くなったデンマーク・ハムレット王の出陣姿そのままだった

ホレイショーは恐れながらも「何者だ。答えろ。待て。何か言え。」と問いただすが、亡霊は何も答えず消え失せる。ホレイショーは不吉な胸騒ぎを覚えた。

実は最近この国の様子が騒がしい。外国から武器を大量に仕入れ、毎晩の警備も厳重で物々しい。そのことについてマーセラスとホレイショーが話をしている。何でも事の起こりは、亡くなったハムレット王(剛勇無双として世界にその名を轟かせた人物)がノルウェーの先代王フォーティンブラスを一騎打ちで打ち取ったことに始まるらしい(※原話「デンマーク人の事績(じせき)」でも、アムレスの父がノルウェー王を一騎打ちで打ち取っています。)。これにより敵の領地をこちら(デンマーク)が没収したのだが、最近この討ち取られたフォーティンブラス王の子フォーティンブラス(親と同じ名前・血の気の多い世間知らずの若者)が、無鉄砲なあぶれ者どもをかき集めてノルウェーの辺境に出没し、父親が失った領地を取り返そうと企んでいるらしい。そしてそれに備えるために国中が物々しい雰囲気となっている。

彼らがこんな話をしていると、亡霊が再び現れる。ホレイショーがなんとか亡霊を止めようとして「分かっていれば避けられるこの国の災いを知っているならば言ってくれ!」と頼むが、亡霊はまた何も言わずに鶏の鳴き声とともに消えた。

ホレイショーは、亡くなったハムレット王の息子・ハムレット王子にならば何か言うかもしれないと思い、ハムレット王子に知らせることにした

 

第一幕 第2場 叔父で新国王のクローディアスと母で妃のガートルードの関係

翌日。デンマーク王の戴冠式(王位就任の儀式)の直後らしい。
場所は城内の会議の間。
デンマーク王クローディアスと妃ガートルードが玉座に座り、重臣たちが立ち並び、今後についての会議が始まる。

新しくデンマーク王に就いたクローディアスは最近亡くなった先王ハムレットの弟だが、クローディアスはその先王の妃ガートルードを早くも自分の后としていた
(※原話「デンマーク人の事績(じせき)」でも、弟が暗殺した兄の妃を妻としています。)

最初の話題はノルウェーの王子フォーティンブラス。最近領民をかき集めて大軍を組織し、デンマークの先王ハムレットが一騎打ちで獲得した領地を還せと使者をよこしてきた。現在のノルウェー王はフォーティンブラスの叔父にあたるが、最近は老病で甥の企みもよく知らないらしい。そこでノルウェー王に手紙を書いて、これを抑えてもらいたいと思っている。そのための使者としてコーニーリアスとヴォールティーマンドが任命され、早速出発する
(※数週間後に帰ってきます。)

次の話題は宰相ポローニアスの子レアティーズ。彼は戴冠式参列のためにデンマークに帰国したが、その務めを果たしたのでフランスに戻りたいと主張し、クローディアスの許しを得てフランスへ帰ることになる
(※数週間後のさらに数週間後にデンマークに戻ってきます。)

ハムレット王子だけは、父の死から2月も経つのに未だに喪服を着て伏し目がち。そしてクローディアス王に不信の目を向けている。しかしそんな悲しみの殻に閉じこもるハムレットを、クローディアスはわからず屋で男らしくないと叱り、自分を父と思ってくれと頼む。さらにウィッテンバーグ大学には戻らず、ここに重臣として留まるよう指示する

その後、一人になったハムレットは思い悩む。父ハムレット王が亡くなってまだ2月も経っていない。立派な国王だった父は母親のことをとても想っており、母ガートルードも泣きながら父の棺に寄り添い、墓場まで後を追っていった。ところが父が亡くなって一月も経たないうちに、叔父クローディアスに身をゆだねた。ハムレットはその母の早業・あさましさを許せないでいる

そこに親友のホレイショーと見張りのマーセラス、バーナードーが現れ、昨夜まで3晩続けて国王(ハムレットの父)の亡霊が物見の城壁の上に現れたことをハムレットに伝える。甲冑に身を固めた国王は、ひどく青ざめて悲しみに沈んだ表情をしていた。
(※亡霊の説話は原話にはありません。)

これはただ事ではないと思ったハムレットは、今夜11時から12時頃の間に城壁の上に行き、見張りに参加することを申し出る。同時に3人に、今夜何が起ころうとも人に言わないことを約束させる。

 

第一幕 第3場 ハムレットとオフィーリアの関係

前場のすぐ後
場所は宰相ポローニアス邸の一室。
フランスに旅立つ兄レアティーズが、妹オフィーリアに別れを告げている。

ハムレットはオフィーリアに好意を寄せているようだが、どうやらレアティーズはハムレットのことはあまり信頼しておらず、「ハムレット様の気持ちは、一時の気まぐれだから長続きはしない。ハムレット様には一国の存亡がかかっており、お妃選びも国民全体の賛否に左右されることになる。お前を愛していると言われても、ほどほどに信じておけ。くれぐれも用心するように。」とオフィーリアに注意を促す。

そこに父ポローニアスが入ってくる。ポローニアスは、息子のレアティーズに旅先での生活態度について細かい注意を与え、レアティーズはフランスへと旅立った

宰相のポローニアスも若いハムレットのことを信用していない。オフィーリアにハムレットとの仲を尋ね、オフィーリアが「度々お心のこもった優しいお言葉をいただく。」と答えると、「そんな誓いは、からっぽででたらめな罠だ。真に受けるでない。」と否定し、今後オフィーリアにハムレットと話すことを禁じた

 

第一幕 第4場 ハムレット亡霊に合う

その日(亡霊にあった翌日)の深夜0時頃
場所はエルシノア城の城壁の上の狭い回廊。
ハムレット王子、親友のホレイショー、見張りのマーセラスの3人が、身を切るような寒さの中、昨日と同じ場所で亡霊が現れるのを待ち受けている。城からは王が催す徹夜の酒宴の乱痴気騒ぎが聞こえてくる。

するとそこへ、亡くなったハムレット王の亡霊が現れる。ハムレット王子が「デンマーク王、父上!さあ、答えてくれ、死んで棺に手厚く葬られたものが、なにゆえこの地上に?その理由を言え、どうしてだ?」と亡霊に尋ねると、亡霊はハムレット王子を手招きした。

ホレイショーとマーセラスが危険だと言って止めるのを制し、ハムレット王子は亡霊が消えていった櫓へと向かい、二人もハムレットを追う

 

第一幕 第5場 亡霊の告白とハムレットの決意

第4場の直後
場所は城壁に沿った空き地。
ハムレット王子が亡霊に対し「さあ、口をきけ。」と言うと亡霊が語りだす。「聞けば、復讐の義務から逃れられなくなるだろう。父ハムレットの亡霊は、夜はあてどなく地上をさまよい、昼は地獄の業火で生前犯した罪を浄められ苦患に耐えている。父は庭で昼寝の最中に毒蛇に噛まれて死んだことになっているが、本当は弟のクローディアスが小瓶に入った毒液を耳の穴にたらし込んだのだ。しかも女を惑わす才に長けた畜生にも劣る弟(クローディアス)は、操(みさお)正しき妃(ガートルード)をたぶらかし、邪淫の床に誘った。こうして父は、実の弟の手にかかり、命ばかりか、王位も妃も奪い取られた。仮にも父を思う心あらば、デンマーク王家を不義の淫楽の輩に踏みにじらせることなく、この無残な殺人の恨みを晴らしてくれ。だが卑劣な振る舞いはするな。母に危害を加えてはならぬ。父を忘れるな。父の頼みを。」

これだけ語ると亡霊は大地に消えうせ、ハムレットは跪(ひざまず)いた。そして父の言葉を記憶と手帳に刻み込み、クローディアスへの復讐を誓う

そこへホレイショーとマーセラスがやってくる。何があったのか聞こうとする二人に対し、ハムレットはホレイショーのみに「さっきの亡霊はこちらの味方だ。それだけ言っておく。どんなことがあったか知りたいだろうが、我慢してくれ。」と言い、クローディアスの悪事と復讐については語らなかった。

そしてハムレットは二人に、今夜のことを決して口外しないことを、ハムレットの剣に誓わせる。すると亡霊も地下から「誓え。」と囁く。
(※つまりこの先、亡霊はハムレットの行動を監視しているものと思われます。そしてこの日を境に、ハムレットの様子が変貌していくようです。)

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第ニ幕

第二幕 第1場 ハムレットの変貌

数週間後
場所は宰相ポローニアス邸の一室。
ポローニアスは、数週間前にフランスに旅立った息子レアティーズの行状を探るために、金と手紙を届ける名目で従僕レナルドーを遣いに出す。

レナルドーが出発すると、入れ違いに娘のオフィーリアが入ってくる。オフィーリアは、ポローニアスにハムレットの変貌ぶりを伝える。ハムレットは、顔が青ざめ上着がはだけた状態で、いきなりオフィーリアの部屋に入ってきた。そして悲しそうなため息をついて、オフィーリアの顔をじっと見つめたまま立ちつくしていたらしい。
(※原話「デンマーク人の事績」でも、アムレスは王への復讐の疑いを逸らすために狂気と愚昧を装います。)

これを聞いたポローニアスは、オフィーリアにハムレットと話すことを禁じたがゆえに、恋に気が狂ったと思い込み、ハムレットの現場をクローディアス王に報告に行く

 

第ニ幕 第2場 ハムレットの狂気と芝居を使った計略

第1場の直後と思われる
場所は城内の謁見の間。
王と妃の前に、ハムレットの古い学友ローゼンクランツとギルデンスターンの他、廷臣たちが立ち並ぶ。

実は最近ハムレットの様子が、見た目も心も昔とはすっかり変わってしまっていた。そこで王は、ハムレットを子供の頃から知る学友ローゼンクランツとギルデンスターンを呼び寄せ、ハムレットの心を慰めさせると共に、深入りしてハムレットが何を考えているのかを探るよう命じる

二人が命令を受けて退場すると、今度はポローニアスが数週間前に出したノルウェーへの使者ヴォールティマンドとコーニーリアスを伴って登場し、ノルウェーの件とハムレットの狂気について報告する

ヴォールティマンドによると、ノルウェー王は、甥のフォーティンブラスの募兵をポーランド遠征のためと思い込んでおり、こちら(デンマーク)の申し入れと調査により、それがデンマーク侵攻のためと判明。ノルウェー王は直ちに募兵を中止させ、既に集めたその兵でポーランド攻略を命じた。ただそのためには、ノルウェー軍がデンマーク領内を通過する必要があるため、その承認を求める書類を預かってきた、とのこと。王にその書類を渡すと二人は退出する。
(※数週間後、このポーランド侵攻に向かうフォーティンブラスの勇姿をハムレットが見て、改めて復讐を決意することになります。)

続けてポローニアスは、ハムレットの狂気の真相が分かったとして、王に報告する。ポローニアスは、娘オフィーリアにハムレットへの接触を禁じたところ、ハムレットは悲しみのあまりすっかり憔悴して発狂してしまったと言い、ハムレットがオフィーリアに宛てた手紙を王に読み聞かせる。

これに対し王は、ポローニアスを忠義ものと褒め称える。更にポローニアスは、娘をハムレットに合わせ、その様子を一緒に隠れて伺ってみましょう、と王クローディアスに提案する

ハムレットがだらしない格好で大廊下で本を読んでいると、古い学友のローゼンクランツとギルデンスターンがやってくる。ハムレットは懐かしみ世間話をするが、二人が王の命令でここに来て、自分を探りに来たことに感ずく。二人はハムレットに、昔贔屓にしていた都の悲劇役者たちが旅回りの末にここに戻ってくることを伝える。

懐かしい旅の役者たちが到着すると、ハムレットは第一の役者に即興で得意な芝居を演じさせる。これを見て満足したハムレットは、明日の夜クローディアスの前で、ハムレット王殺しをほのめかす「ゴンザーゴ殺し」の芝居をすることを依頼し、更に本来ないセリフをいくつか追加する

ハムレットは、数週間前に現れた亡霊をまだ完全には信じきれていないところがあり、クローディアスが父を殺害したもっと確かな証拠が欲しいと思っている。そこで父の死をあてつけた芝居を叔父の前で演じてもらい、その時の顔色を確認することで父殺害の確信を得ようと考えた
(※この王の前で劇をするエピソードは、原話にはありません。)

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第三幕

第三幕 第1場 ハムレットの狂気の理由を探れ

前場の翌日
場所は会議の間に続く大廊下。
王と妃の前にローゼンクランツ、ギルデンスターン、ポローニアス、そして娘のオフィーリアがいる。

ローゼンクランツとギルデンスターンは、ハムレットがなぜ狂気に走ったのか結局分からなかった、と王に報告している。そして今夜旅の役者たちの芝居があるから、王と妃もご覧いただくように、とのハムレットの言葉を伝える。

すると王は、自らの目でハムレットの狂気の理由を探ろうとする。ハムレットを呼び、オフィーリアと二人だけになったところを王とポローニアスの二人で隠れて様子をうかがい、ハムレットの気違いの理由が、恋のためなのか、それとも他にあるのか、自分の目で確かめたいと言う。
(※王はハムレットに後ろめたいものがあって、狂気の本当の理由を探りたいようです。原話「デンマーク人の事績」でも、叔父フェンギがアムレスの狂気を暴露するために、幼い頃から知る美女を使って誘惑することを企みますが、失敗に終わります。)

そして呼び出したハムレットが、独り言をつぶやきながらオフィーリアの元にやってくる。「生か、死か、それが疑問だ。じっと身を伏せ不法な運命を耐え忍ぶのと、それとも剣を取って押し寄せる苦難に立ち向かうのと、一体どちらが。」
(※これはハムレットの有名な名言ですが、父の復讐という任務を背負いながらも、まだ自分の死を覚悟しきれていない、ハムレットの心の迷いを表現している、と言われています。)

話しかけてくるオフィーリアに対し、ハムレットは狂気を装って「尼寺へ行け。もし結婚するなら呪いの言葉をくれてやろう。」と言って去っていく。変わり果てたハムレットを嘆いたオフィーリアは、あの方をお救い下さいと神に祈る。

これを隠れて覗いていた王は、「これは恋でも狂人でもない。ハムレットは腹に何か企んでいる。いずれ取り返しがつかないことになるだろう。その前に先手を打たねばならぬ。すぐさまあれをイギリスに遣いにだそう。」と言う。

これに対し一緒に覗いていたポローニアスは、やはりオフィーリアへの片思いが原因だと思ったまま。そこでポローニアスは更にハムレットの心を探るため、芝居の後ハムレットを妃の部屋に呼び、悩みを打ち明けさせるように仕向け、それを自分が隠れて観察し、それでもハムレットの心が分からない時は、イギリスに派遣させるか監禁することを王に提案する。

 

第三幕 第2場 王殺しの劇で叔父の動揺をあぶり出す

第1場と同日の夜
場所は舞台のある城内大広間。
ハムレットは、第一の役者に今夜の劇に追加するセリフを教え、自然にさりげなく言うことを指示する。

そこにホレイショーがやってくると、ハムレットは語りかける。「このハムレット、ホレイショーこそは真の心の友と固くを思っている。これから王の御前で芝居があるが、実はその中に、いつか話した父の最後の模様を盛り込んでおいたのだ。そこで叔父の心の動きを見抜いてもらいたい。もし心の罪悪が明るみに飛び出してこなければ、この間の亡霊は悪魔の仕業だ。芝居が終わったら相談して結論を出そう。」

王、妃、そしてその他の廷臣たちが入ってくると、ハムレットは再び狂気のふりをする。そして劇が始まる。劇は「ゴンザーゴ殺し」という悲劇で、内容は次の通り。ゴンザーゴ王とバプティスタ妃は仲睦まじかったが、ある時王が外で昼寝している最中に妃はその場を去り、まもなく別の男が現れ王の耳に毒液を流し込んで去る。妃が戻ると王は死んでおり、妃は激しく悶える。しばらくすると毒害者は贈り物を手に妃を口説く。妃はしばらくこれを拒むが、ついに男の愛を受け入れる。(※要するに、クローディアスが先王とガートルードに対してやったことを、そのまま劇として演ずるということです。)

そしてゴンザーゴ王の甥ルシアーナスが、王の耳に毒液を注ぐ場面になると、クローディアス王は顔面蒼白になってよろめくように立ち上がり、大広間から退場していく。そしてこれを見たハムレットとホレイショーは、亡霊の言葉を確信する。

王は大変機嫌が悪くなって引きこもり、妃はハムレットと話がしたいと言って彼を居間に呼ぶ

 

第三幕 第3場 ハムレットのイギリス派遣と王殺しの機会

第2場の直後
場所は場内の大廊下。
ハムレットを恐れたクローディアスは、彼をイギリスに派遣することに決め、ローゼンクランツとギルデンスターンに同行を命じる。そして二人は急いで出発の準備に取り掛かる。ポローニアスは、妃とハムレットの会話を探るため、妃の場所へと向う

クローディアスは、兄殺しの罪の意識に追い詰められ、神に救いを求めて祈ろうとしていた。それを見かけたハムレットは、やるなら今だと剣を抜く。しかし祈って心の汚れを落としている最中に殺してもやつは天国へ行ってしまうのではないか、救いようのない悪行に耽っているところを切り捨ててこそやつはまっしぐらに地獄に落ちるだろう、このように考えてハムレットは剣を鞘に収める。

 

第三幕 第4場 ポローニアスの盗聴と殺害、そして亡霊再び

第3場のすぐ後
場所は妃ガートルードの居間。
ハムレットが母に会いにくると、ポローニアスは壁掛けの後ろに隠れる

妃がハムレットに、王がお前に大変怒っていると告げるが、ハムレットは妃(母・ガートルード)の不貞に腹を立てている。噛み合わないと感じた妃は人を呼ぼうとするが、ハムレットは妃の腕を押さえて放さない。恐怖した妃が「誰か、誰か!」と声をあげると、壁掛けのかげからポローニアスが「大事だ!誰かおらぬか!」と叫ぶ。クローディアスが潜んでいると思ったハムレットは、剣を抜いて壁掛けの上から突き刺し、ポローニアスは息絶える
(※原話「デンマーク人の事績(じせき)」でも、叔父フェンギがアムレスの狂気を暴露するために、母親との会話を盗聴させ、アムレスに気づかれ殺されるエピソードがあります。しかし殺されるのは宰相などではなく、間者(スパイ)と書いてあります。)

そしてハムレットは妃に対し「夫婦の誓いをいい加減なものにしてしまわれた。神に誓った神聖な儀式を、空々しい道化芝居に化するに等しい所業だ。」と言い、母ガートルードの父への不義不貞を徹底的に糾弾する。
(※原話でも間者を殺した後、アムレスが悪罵の限りを尽くして母親を責め立てたと記載されています。)

たまらず妃が「もう何も言わないで。もう許して。」と悶え苦しんでいると、そこに父の亡霊が夜着姿で現れる。亡霊はハムレットに「クローディアスへの復讐の頼み忘れるなよ、ハムレット!それから恐れおののき、悶えている母親に手を貸してやれ。」と伝える。ところがハムレットには亡霊が見えるが、妃にはこれが見えず、何もない空中に向かって話しかけるハムレットを見て気が狂ってしまったと思い込む。そして亡霊は消える。ハムレットは自分は気違いではないと言い、母に懺悔を勧める。

その後少し話題を変えて、ハムレットのイギリス行きの話をする。古い学友のローゼンクランツとギルデンスターンもイギリスに行くことになったが、ハムレットはこの二人をマムシのように嫌な奴といい、少しも信頼していない。

ハムレットは、殺害したポローニアスの死骸を引きずって去っていった

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第四幕

第四幕 第1場 ポローニアス殺害の後始末

第三幕第4場の直後
場所も同じ妃の居間。
王クローディアスが入ってくると、妃ガートルードはハムレットが宰相ポローニアスを刺し殺したことを伝える。

王はハムレットの狂気に恐れ慄き、すぐにでもハムレットを船に乗せて出港させろと喚く。そしてローゼンクランツとギルデンスターンを呼び寄せ、ハムレットが引きずり出したポローニアスの死骸を探し出し、礼拝堂に納めるように命令する。王は自分たちの名に傷がつかないように、不祥事を丸く収める事に必死な様子。

 

第四幕 第2場 死骸の行方

前場のすぐ後
場所は城内の一室。
ハムレットがポローニアスの死骸を処分すると、そこへローゼンクランツとギルデンスターンが駆けつける。

ローゼンクランツが、死骸を礼拝堂へ運ばなければならないから場所を教えてくださいと頼むが、ハムレットは答えない。逆に二人のことを、王様のご寵愛・褒美・権勢その他なんでもかんでも吸い取る「海綿」と揶揄する。

するとローゼンクランツは、「死骸の場所を教えていただけないのであれば、王様の前に出ていただきます」と言って、ハムレットを連れて行こうとするが、ハムレットは「かくれんぼだ。もういいぞ。」と言って突然駆け出し、二人は後を追う。

 

第四幕 第3場 ハムレットのイギリス行きとクローディアスの陰謀

前場のすぐ後
場所は場内の広間。
王がすぐにでもハムレットを追い払おうと考えていると、衛兵に護衛されたハムレットを連れてローゼンクランツとギルデンスターンが入ってくる。

王がポローニアスの場所を尋ねると、ハムレットは「廊下に出る階段の辺りを嗅ぎまわってみるがいい。」と答え、王は早速従者に捜索させる。

そして王は、既に準備はできているとして、ハムレットに直ちにイギリスに出航するよう要請し、ハムレットもこれを承諾して出発する。そしてローゼンクランツとギルデンスターンを呼び寄せ、すぐにハムレットの後を追って今夜中に出航させろと命令する。

デンマーク王クローディアスがイギリス王にしたためた親書には、「到着したら、即刻ハムレットを亡き者にするように。」と記されていた
(※原話「デンマーク人の事績」でも、フェンギはアムレスを英国に派遣し、随行する二人の男にアムレスを死刑に処すように記した書簡を持たせた、記載されています。)

 

第四幕 第4場 フォーティンブラスのポーランド侵攻とハムレットの決意

話の流れから前場(ポローニアス殺害)の夜か翌日と思われる
場所はデンマークの港に近い荒野。
ノルウェーの王子フォーティンブラスが、ポーランド征服のため2万の軍隊を率いている。フォーティンブラスは、デンマーク領内通過を知らせるためにデンマーク王に使者を出したが、その使者がデンマークの港へ向かうハムレット(※ローゼンクランツ・ギルデンスターンらとともにイギリスへ向かっている)に呼び止められる。

使者は「これからノルウェー軍はポーランドの征服に向かうが、正直この土地を奪っても名ばかりで何の利益も上がらない。」と言う。これを聞いたハムレットは、フォーティンブラスたちの自らを死の危険にさらしてまで幻の名誉のために戦いに行く姿に感銘を受ける。そして父を殺され母を汚されたにも関わらず、それを眠らせようとしてしまっている自分を恥じ、「今からはどんな残忍なことも恐れない。」と復讐を決意する

 

第四幕 第5場 オフィーリアの狂乱とレアティーズの怒り

数週間後
場所は城内の一室。
宰相ポローニアスの死は内外に知られたが、ハムレットに殺されたという真相は伏せられたため、国内ではいろんな憶測が飛び交っていた。そして父ポローニアスの死以降、娘のオフィーリアは、父の死についてどうも怪しいと言いちらし、癇癪を起こしてはわけのわからないことを口走るようになっていた

そんなオフィーリアが、王や妃、ホレイショーなどの元に呼ばれるが、彼女は髪の乱れた半狂乱の様子で、終始歌を口ずさんでおり、一同がその姿に驚く。

そこへ父の死に疑いを抱いたレアティーズが、暴徒を率いてフランスから戻ってくる。暴徒たちは「レアティーズを国王に!」と叫んでいる。

武装したまま王の元に飛び込んできたレアティーズは明らかに怒っており、「極悪非道の国王。なぜ父は死んだのだ?言いくるめようとしても駄目だ。父の復讐をするため、後へは引かぬぞ。」と王を威圧する。そしてオフィーリアの狂乱ぶりを見て嘆く。

王は「真相を聞いて、もし私に罪がないと納得したら私の言うことに耳を貸してもらいたい。それならば父の死因についての真相を語ろう、思う存分こちらも復讐に手を貸そう。」とレアティーズに提案し、レアティーズは承諾する。

 

第四幕 第6場 ハムレットの手紙

前場のすぐ後
場所は城内の一室。
ホレイショーの元に、ハムレットの手紙を持参した船乗りたちが現れる。ホレイショーが手紙を読んでみると、なんでもハムレットはデンマークの港を出て二日も経たぬうちに海賊船に襲われ、もみ合ううちにハムレットだけが海賊船に乗り移って捕虜になってしまったが、海賊たちには大事にしてもらっているらしい。そして国王(クローディアス)宛の手紙をこの船乗りたちに持たせておいたので、すぐに彼らを国王に取り次いでもらいたいとのこと。それからホレイショーに話があるから、できるだけ早くハムレットのもとに来てもらいたいとのこと。もう一つ、ローゼンクランツとギルデンスターンは今イギリスへの航海を続けている、との旨がハムレットのホレイショー宛の手紙には書かれていた。
(原話「デンマーク人の事績」によると、アムレスはそのまま英国に渡り、英国王に気に入られて王女を妻とし、1年後にデンマークに帰り復讐を果たす、となっています。)

 

第四幕 第7幕 ハムレット暗殺計画

前場のすぐ後
場所は城内の一室。
王がレアティーズに、父ホレイショー殺しの犯人がハムレットだと語ると、レアティーズは納得し、父を殺し妹を変貌させたハムレットへの復讐を決意する

そこへハムレットの手紙を持参した使者が現れる。王が手紙を読むと、ハムレットはたった今デンマーク領内に上陸し、明日には王に拝謁に来ると書いてある

王は、イギリスに旅立ったはずのハムレットがなぜ突然デンマークに帰って来るのか理解できないでいるが、レアティーズは復讐に燃える。そしてそれを見た王は、レアティーズに前から考えていた謀りごとを提案し、二人で策を練る

実はハムレットは、レアティーズの優れた剣術馬術に嫉妬しており、一度勝負したがっていた。そこでフランスから帰ったレアティーズの腕前を口々に褒め讃え、ハムレットの嫉妬を誘い、二人の勝負へ持っていく。その時レアティーズだけが先止めのない剣を使い、剣には猛毒を塗っておく。さらにより確実にハムレットを仕留めるために、勝負の最中に口にする飲み物に毒入りの杯を用意しておく。これならば必ず上手くしとめられる上に、母親も気づくことなく世間のそしりも封じられるだろう、と王は企む。

そこへ妃が泣きながら入ってきて、オフィーリアが小川で溺れ死んだことを伝える。オフィーリアは、狂乱のまま作った花輪を柳の木の枝にかけようとして川に落ちた。そして人魚のように川面を漂い、祈りの歌を口ずさみながら死んでいったらしい。

この知らせにレアティーズは悲しんで去り、王はその怒りを鎮めさせようとレアティーズを追っていく。

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第五幕

第五幕 第1場 オフィーリアの埋葬

前場の翌日
場所は墓場。
二人の道化がオフィーリアの墓を掘っているが、道化たちは彼女の死を入水自殺だと思っており、それにもかかわらずキリスト教の葬式が行われることに不満を言っている。
(※当時キリスト教では自殺者の葬式が禁じられていたらしい。オフィーリアは身分が高いから葬式が行われると道化は思っている。)

そこに船乗り姿のハムレットとホレイショーが現れる。ハムレットは昔馴染みのあった道化ヨーリックの頭蓋骨を手に取り、みんな土に帰るものだと語っていると、オフィーリアの入った棺と王やレアティーズたちの行列が入ってきて、二人は身を隠す。そして簡易な葬式が始まる。

それがオフィーリアの葬式だと分かったハムレットは、「デンマークのハムレットだ。」と言って墓穴に飛び込む。するとレアティーズは「畜生、悪魔に食われてしまえ!」とハムレットに掴みかかるが、王は二人を廷臣たちに引き離させる

ハムレットは怒って去って行き、王はレアティーズに昨日話した計画をすぐに進めようとささやく。

 

第五幕 第2場 ハムレットの復讐と悲劇

前場のすぐ後
場所は城内の広場。
ハムレットがホレイショーに、イギリスへの船旅の様子を語っている。その内容は次のようなものだった。

ハムレットは、船室で同行したローゼンクランツとギルデンスターンの持ち物を探り、イギリス国王宛の国書を発見する。封を切って中身を確認すると、そこには「即刻ハムレットの首をはねるべし。」という厳しい指令が書かれてあった。そこでハムレットは、「この書を御一読の後は、持参者2名(ローゼンクランツとギルデンスターン)を直ちに死刑に処すべし。」と書いた国書を偽造し、元の場所に戻しておいた。そしてその翌日、海賊に襲われ捕虜となり、その後一人でデンマークに帰ってきた。ギルデンスターンとローゼンクランツは、追従者にふさわしい最期を迎えているだろう。
(※原話「デンマーク人の事績」でも、アムレスを処刑するようにと書かれた国書を随行者を処刑するようにとアムレスが偽造し、その偽造した書簡通り随行者2名が処刑された、と記載されています。)

二人がこんな話をしていると、廷臣のオズリックが入ってきて王の伝言を伝える。なんでも剣をとっては天下無双という評判のレアティーズが、ハムレットに挑戦したいとのこと。勝敗は12回勝負で、レアティーズが3本取ればレアティーズの勝ち。そして試合は今すぐにでも。
(※原話では、剣の試合ではなくアムレスの葬式に汚物まみれで現れみんなを笑わす、とあります。そこでアムレスは一同を酒で泥酔させた後、火を放って皆殺しにし、寝室で叔父フェンギを刺し殺す、となっています。)

ハムレットが軽い気持ちでこれを受けると、直ちに試合の準備が始まり、王、妃、そしてレアティーズが入ってくる。審判はオズリック。

 

試合前にハムレットは、レアティーズに「許してくれレアティーズ。ハムレットが悪かった。ひどい精神錯乱に悩まされているのだ。」と父ポローニアスを殺したことを謝罪する。するとレアティーズも「一途に復讐をと思い込んでいたのですが、今のお言葉で心が静まりました。」と謝罪を受入れるが、「しかしこのまま引退っては、名が立ちません。」とすべて水に流すわけにもいかない様子。

二人はオズリックから剣を受け取るが、レアティーズは直後に毒を塗った先止めのない剣に取り替える

そして第1回戦が始まる。一本目はハムレットが勝った。

ここで王は、酒の入った杯を飲み、真珠をその中に落としてハムレットに差し出す。ところがハムレットは「この一番を済ませてからにいたしましょう。」と一旦お預けにする。
(※毒が入っています。)

そして第2回戦が始まる。二本目もハムレットが勝った。ところ事情を知らない妃が、ハムレットの幸運を祈って勝手にその杯を飲んでしまい、王もそれに気づく

そして第3回戦が始まる。一旦勝負なしとなり、二人は離れるが、その後ろを向いているハムレットにレアティーズは毒の剣で斬りかかり傷を負わせる。これに逆上したハムレットは、レアティーズに襲いかかりつかみ合いの喧嘩が始まる。この時、偶然二人の剣が取り変わってしまった

直後に妃が倒れる。同時にハムレットが、毒の剣でレアティーズに深手を負わせ、レアティーズも倒れる

ハムレットが倒れている妃を心配すると、妃は「ああ、ハムレット、お酒、お酒に!毒が!」と言って息絶える
ハムレットが「陰謀だ!反逆だぞ!犯人は誰だ!」と叫ぶと、
レアティーズは「ハムレット様、その持っておられる剣こそ、切っ先の尖った毒を塗った剣。もう半時間も持ちません。私ももう二度と立てません。お母上は毒殺。罪は王にあります。」と全ての陰謀を白状する

全てを悟ったハムレットは、その毒剣で王を刺し、更に毒杯を王の口にあてがい無理矢理飲ます。そして王は息絶えた
(※原話では、叔父がアムレスの剣先をあらかじめ使えなくしておいたが、それを知ったアムレスは叔父の剣と取り替えて復讐を果たした、となっています。)

もう自分が死ぬことをわかっているレアティーズは、「お互いに許し合おう、ハムレット様。レアティーズの死も、父の死も、あなたの罪にはならぬよう。そしてあなたの死もレアティーズの罪にはならぬよう。」こう言って息絶えた
(※罪を残したまま死ぬと、地獄に落ちるなどあの世で制裁を受けると考えられていたため、お互い罪を許すことにこだわっているのだと思われます。)

ハムレットは「天もその罪をお赦しになろう!後から行くぞ……」と答え、彼も毒で倒れる。そしてホレイショーに最期の言葉を託す。「生きて伝えてくれ、事の次第を、このハムレットの物語を、何も知らぬ人達にも納得行くように。ありのままに。このままでは、後にどのような汚名が残るかわからない。」

そこにノルウェー王子フォーティンブラスの軍隊が、ポーランド遠征から戻り、更にイギリス使節の到着の礼砲が聞こえる。これを知ったハムレットは「次の国王にはフォーティンブラスにするように、それがハムレットの遺志だ。」と言い残して息絶えた

 

屍の山の中にイギリス使節団が到着すると、ローゼンクランツとギルデンスターンを命令通り処刑した旨をホレイショーへ伝える。それに対しホレイショーは、ハムレットの遺言通りイギリス使節に一部始終をありのままに伝える。

更にホレイショーは、遺言通りフォーティンブラスに時期国王を託すと、フォーティンブラスのこれを受け、ハムレットを弔う礼砲を放つ
(※要するに国家を丸ごとよその国に無償で渡してしまったことになりますが、原話では復讐を果たした直後にアムレスが死ぬことはありません。再び英国に渡り、スコットランド女王と結婚した後に英国王を殺し、二人の妻を連れてデンマークに帰る、という結末になっています。)

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こちらは藤原竜也さん主演の舞台「ハムレット」

 

解説と感想!

一般的にギリシア悲劇が運命の劇であると言われるのに対し、シェイクスピアの悲劇は性格の劇であると言われます。それではシェイクスピアの劇は登場人物の性格や心理に着目すればいいのかと言うと、必ずしも性格や心理に重きが置かれているわけでもないようです。

例えば主人公ハムレットの性格について見てみると、憂鬱で慎重なところもあれば、勇敢で情熱的なところもあり、軽薄なところもあれば、残酷で疑り深い側面もあります。つまり一人の人格としては一貫性に欠けているところがあるようです。

多くの人がこのような多面性を持っており、現実的には決して不自然ではないのですが、一つの劇の登場人物としてはやや違和感も感じます。

ですがそれは、シェイクスピアが登場人物の性格描写や心理描写を目的に劇を作っているのではなく、あくまで舞台の上で、怒りや悲しみ、嫉妬、愛欲などの情熱を刺激し、浄化する劇的効果というものを最優先に劇を組み立ているからだと言われています。そしてこの刺激と浄化の組み合わせによる劇的効果という点において、シェイクスピアは天才的にうまかったとされています。

現代劇などに多いそうですが、作者が登場人物の性格や心理の合理性にこだわりすぎると、劇としては逆につまらなくなってしまうそうです。

つまりシェイクスピアの作品は、登場人物の性格の矛盾などは気にしないほうがいい、そんなものを目的には作っていない、劇的効果を楽しみなさい、そのためには実際の劇を見なさい、ということになりそうです。

 

最初の解説で紹介した「デンマーク人の事績(じせき)」と「シェイクスピアのハムレット」を比較してみると、概ね原話に沿っていますが、明らかに違うところもあります。

例えば、亡霊が実の子に無念を訴える、亡霊の言葉の真偽を確かめるために劇に先王殺しのエピソードを仕込む、原話では英国で1年過ごすが本作では英国には渡らず数週間で帰ってくる、ハムレットが復讐を果たした直後に命を落とす、最後にノルウェー王子に国を譲ってしまう、といったところなど…。

シェイクスピアが直接参考にしたとされる「原ハムレット」は現存していないため、彼が正確にどのような変更をしたのかはよく分かりませんが、基本的にこれらは、物語の面白さや劇的効果を追求したための変更だった、ということになるようですね。

 

ただ少し残念に思ったことが、原話となる「デンマーク人の事績」の登場人物たちが、伝説上の人物であって実在の人物と証明できないこと。妃ガートルードの系譜を辿ってみると、彼女は北欧神話の主神オーディンのひ孫ということになっています。

僕はこの種の物語を見ると、どこまで実話に基づいているのか調べてみたくなるのですが、シェイクスピアの作品は歴史的事実云々よりも、あくまで劇として楽しむべきものなのだ、と割り切るべきなのかもしれませんね。

シェイクスピアの劇は、やはり実際に見て楽しむべきものだと思います。色々調べているうちに、僕もこのハムレットの劇を実際に見てみたくなりました。あなたももし機会があったら、現実の劇にトライしてみてください。

それでは。

 

他のシェイクスピアの作品についても書いていましたので、お時間があったら読んでみてください。いずれも2万字級のビッグコンテンツです。
 
それとも他の本を読んでみる?

 

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