【90分で古事記③】 黄泉の国 イザナギとイザナミ 禊と三貴子 あらすじ内容を解説!

 
90分で古事記 3/9回目(約5000字)
古事記上巻のあらすじ内容を9回で解説!
黄泉の国 イザナギとイザナミの離婚 禊と三貴子の誕生
 
 
「天つ神(あまつかみ)」の神勅を受けたイザナギとイザナミによって多くの神々が誕生しましたが、イザナミは出産の事故で死んでしまい、 イザナギは悲しみに暮れます。
今回は、そのイザナギが亡きイザナミに合いに「黄泉の国」に 旅立ち、見てはいけないものを見てしまい、離婚して帰ってくるというお話。全てを一柱で創造した西洋のゴッドと異なり、 大半を夫婦の営みによって生み出したところに、 日本の神様の暖かさがあると思います。イザナギとイザナミの「別れの言葉」に注してみてください。
そして神話の主役たち「アマテラス」や「スサノオ」が登場します。
 
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黄泉の国

 
 
主な登場神様
イザナギ(神世七代の七代目の神、親はなし)
イザナミ(イザナギとは兄妹で夫婦)
ヨモツシコメ(黄泉の国の醜女、悪霊たち)
 
 
※ある程度割愛していますが、原文に沿ったあらすじを載せてあります。
 
 
愛するイザナミに会いたくて、イザナギは「黄泉の国」に追って行きました。
(古事記原文ではいきなりこのように始まり、 「黄泉の国」までどうやってきたのかは全く語られません。)
 
 
「黄泉の国」の扉まで出迎えにきたイザナミに対し 、イザナギは「 愛するイザナミ。国作りはまだ終わっていない。一緒に帰ろう。」 と語りかけます。
(扉を挟んでの会話であって、直接対面はしてはいないようです。 古代日本人は、現代人よりも「愛を確かめ合う言葉」を大切にしていたのかもしれませんね。)
 
 
しかしイザナミは「 もっと早く来てくれればよかったのに 。黄泉の国の食べ物を食べてしまったのでもう戻ることはできません。 でも愛するイザナギが来てくれたのだから、 黄泉の国の神と相談をしてみます。 その間絶対に覗かないでください」 と答え御殿の中に 帰ってしまいました。
(死者の国の食べ物を口にすると、死者の国の住人となるのはギリシャ神話と同じです。そしてこの時点のイザナミは、まだ「黄泉の国」の女王ではないようです。)
 
 
しかし待ちきれなくなったイザナギは、 櫛(くし)の歯を折って火を灯し、 覗いてしまいます。
 
 
するとイザナミの体にはウジがたかり、 八柱の雷神が寄り付いていました。
 
 
醜い姿を見られたイザナミは「 私に恥をかかせたな!」と怒り、ヨモツシコメ(黄泉の国の醜い女)にイザナギを追わせました 。
 
 
恐ろしくなったイザナギは必死に逃げます。
 
 
イザナギが髪に巻き付けた黒御蘰(くろみかずら)を投げると、 蔓が勢いよく育ち葡萄(ぶどう)の実がなり、シコメが食らいつきます。
(時間稼ぎだと思ってください。)
 
さらに追いかけてくるシコメに対して、イザナギが櫛(くし)を投げると、 今度はたけのこが育ち、シコメが食らいつきます。
 
 
するとイザナミは、雷神に1500の黄泉の国の軍勢を率いさせ、イザナギを追わせました。
 
 
現世との境にあたる黄泉比良坂(よもつひらさか)まで逃げきったイザナギは、 桃の木から 桃の実をとり 投げつけると 悪霊たちは退散しました。
(桃には神聖な力があると考えられていました。)
 
 
最後にそこへ、イザナミが追い付きます。
 
 
 イザナギ千引の岩(ちびきのいわ)と呼ばれる巨大な岩で、黄泉の国の入り口を塞ぎました。
 
 
その大岩を挟んで、二人が最後の会話を交わします。
 
 
イザナキが離婚の言葉である「事戸(ことど)」を述べると、
 
 
イザナミは「 愛するイザナギ。 そんなことをするのであれば、 あなたの国の人間を1日千人殺しましょう。
(動画↓を見てもわかるように、かなり緊張感が漂う決別の場面です。)
 
 
それに対してイザナギは「 愛するイザナミ。 そうするのであれば、 私は1日1500人の 命を誕生させよう。
(…にもかかわらず、「愛するあなた」と呼びかけるイザナギとイザナミに、古代日本人の美徳を感じます。)
 
 
このようにして日本最初の離婚が成立しました。
(日本が、こんな時でも相手に配慮できる「心やさしい二柱」から始まったことがちょっと嬉しいです。)
 
 
そしてイザナミ黄泉津大神(ヨモツオオカミ)と呼ばれるようになりました。
(以後イザナミが「死者の国」の女王になったと考えられます。)
 
 
黄泉比良坂は出雲のイウヤサカという場所になります。
 
 
 
● 古事記の物語②黄泉の国と再開
 
● 古事記の物語③黄泉の国と脱出
 
● 古事記の物語④黄泉の国と決別
制作Rakinasuchi さん
古事記の原文に忠実ないい動画です。 動画の方がイメージしやすいと思います。よろしければご覧になってみてください。
 
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〈 人の寿命はイザナミの呪い?〉

神話上では、 この出来事によって人間に寿命が設けられたとされています。つまり 私たち人間は、 イザナギの霊力によって命を授かり、 イザナミの霊力によって命を落とす、 ということになるようです。 おそらく古代日本人は、こうやって理不尽に迫りくる死を受け入れていったのでしょうね…
21世紀に入り、日本の人口は減少に転じました。古事記的に言うのであれば、 イザナギの霊力をイザナミの霊力が上回った、 ということになるのかもしれません。
なお、神の子孫とされる天皇家に寿命が発生するのは、山の神の呪いという別の理由になります。 (ニニギノミコトがイワナガヒメを断ったから)
 
 

〈 そもそも人間はいつ登場したの?〉

聖書」では人は神によって造られたことが明示されていますが、「古事記」においては そのような記述はなく、 人間はいつのまにか存在していたことになっています。 「ギリシャ神話」では プロメテウスという神様が、土と水から人間を作り出したことになっています。
 
 

〈 ギリシャ神話にもそっくりな話が…〉

実は「ギリシャ神話」にもこれとそっくりな話があります。冥界に妻を迎えにいったオルフェウスも、「振り向くな」と言われているのに、あと一歩のところで 振り向いてしまいます。そして生きて妻に会うことは、永遠に叶わなくなりました。(古事記とギリシャ神話には多くの共通点があります。)
洋の東西を問わず、 男ってダメですね… 気持ちわかりますけど…
 
 

〈 黄泉の国ってどんな国?〉

古事記には、死後の世界や黄泉の国がどのような国なのか、ほとんど書かれてはいません。しかし、黄泉の国の入り口である「黄泉比良坂(よもつひらさか)」は、出雲の国の伊賦夜坂(いふやさか)である、とはっきり書いてあります。※ 現在の 島根県東出雲町の揖屋(いうや)神社
意外と身近に「あの世の入り口」があったのですね。
 
なお、 後に登場する「根之型州国(ねのかたすくに)」も、この黄泉比良坂を経由して 行くことができるようです。
黄泉の国=死者の国=根之型州国とする説と、違うとする説があります。
死者の国が2つあると思っていただいてもいいかもしれません。(ハッキリしたことが分かりません)
 
 
 

禊と三貴子

 
黄泉の国から帰ったイザナギは 、死の世界の汚れを落とすために「禊(みそぎ)」を行います。「」とは神事の前に 川や海の水につかり 、体の汚れや罪を落とし洗い清めることを言います 。
 
 
※ 以下、かなり割愛したあらすじになります。
 
 
イザナギは禊のため、筑紫の日向(ひむか)のアワギハラへ向かいました。
(古事記にはイザナギが禊を行ったとされる沼が、現在の「宮崎市阿波岐原町」であるとハッキリ断定されています。)
 
 
イザナギが禊を行うために身につけていたものを 投げ捨てると杖や帯、袴、腕輪などから次々と神が誕生しました。
 
 
そして水に入って 禊を行う と次々と新しい神が誕生します。
 
 
そして最後に顔を清めると、神話の主役「三貴子(さんきし)」が 登場します。
 
 
左目を洗った時に成った神の名は天照大御神(アマテラスオオミカミ)
 
右目を洗った時に成った神の名は月読命( ツクヨミノミコト)
 
鼻を洗った時に成った神の名は建速須佐之男命(タケハヤスサノオノミコト)
 
 
イザナギは「私は多くの子供たちを生んできたが 、ついに最も尊い3柱の神(三貴子)を得た」 と大変喜び、 それぞれに重要な任務を与えます。
 
 
太陽の神「アマテラス」は「高天の原」を知らせ(治めろ)
 
月の神「ツクヨミ」は「夜の世界(根の国)」を知らせ (治めろ)
 
嵐の神「スサノオ」は「海原」を知らせ(治めろ)
 
この禊によって、合計27柱の神様が誕生したと言われています。
 
名前 洗った場所 性質 治める場所 ギリシャ神話の対応神
アマテラス 左目 太陽の神 高天の原 ゼウス
ツクヨミ 右目 月の神 夜の世界(根の国) ハデス
スサノオ 嵐の神 海原 ポセイドン
 
 
● 古事記のものがたり⑤禊と三貴子
古事記の原文に忠実な動画です。 動画の方が詳しいです。 よろしければご覧になってみてください。
 
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〈イザナミの苦労は一体…〉

古事記の世界では、神様はアメノミナカヌシのように、何もない所から突然成り立つこともあれば、父神と母神の間からうまれることもあり、アマテラスのように神が単独で生み出すこともあります。さまざまな誕生のパターンがあることになります。
 
「… 一人で生めるの?
…ではイザナミはなぜ命を落としたの?」
と思われました?
一人で生めるみたいです。
しかも最も尊い神様まで…
理由は…わかりません。
 
ただ、全てをたった一柱で創り上げた絶対的な西洋のゴッドと違い、大半を夫婦の営みによって作り上げたところに、日本の神様の暖かさと家族的な一体感を感じます。 深い理屈追求しない方がいいのかもしれませんね。
 
なお、 「日本書紀」では三貴子(さんきし)はイザナミとの共同で生んでいます。 イザナミが黄泉の国の女王(ヨモツオオカミ)となり穢れたため、「古事記」では三貴子と切り離されたのでは、とする説もあるようです。
 
〈イザナギとイザナミの国生み神生みのまとめ〉
 

〈 スサノオはイザナミの子ではない?〉

アマテラスやスサノオは、イザナギ単独で生み出した神様であって、イザナミの子ではないことになります。 実はこれが結構重要になってきます。次回からスサノオが主役となるいくつかの物語が始まりますが、 旅本来の目的は、あくまで「根之型州国の母に合行くこと」になっています。
 
……スサノオの母親って誰?
 
古事記を読む限りスサノオに母親はいないのですが、スサノオはイザナミのことを母親と思っているようです。 これから語られるいくつかの物語は、すべて根之型州国(ねのかたすくに)へ行く途中でのいってみれば道草話です。 にもかかわらず肝心の母親に会いに行く場面が全くありません。 オオクニヌシ編において、いつの間にか根之型州国の住人となって登場します。 神話に矛盾はつきものなのですが、スサノオの物語はこのあたりがちょっとひどいです…

 

〈世界の分け方がギリシャ神話そっくり〉

実はこの3つに分ける世界の分け方、 ギリシャ神話の世界の分け方にとても似ています。
ギリシャ神話にも 神々の住まう天上の世界 「オリュンポス」が存在し、そこの統治者が 有名な「ゼウスになります。
そして海を統治する「ポセイドンと。
冥界を統治する「ハデス
こちらの3人も兄弟です(クロノスとレアを親とする6人兄弟)。
 
偶然にしてはできすぎた話ですよね。古事記とギリシャ神話には、世界の成り立ちも含め不思議なほど多くの共通点があります。 一説によると、大陸を経由して伝わったギリシャ神話を、古代日本が参考にしたという説もあります(古代によく伝わりましたよね。驚きです。)。
違いを挙げるとすれば、日本は最高神が女性であることとその末裔が今なお君臨しているところ。特にアマテラスは現在でも皇室の祖神として伊勢神宮に祀られ、日本国民の総氏神ともされています。
 
 
次回第4回は海原を追放されたスサノオが高天の原で迷惑の限りを尽くし、アマテラスが「天岩屋戸」へ引きこもってしまう有名な エピソードになります。
 
 
 
〈おすすめ書籍〉
竹田恒泰さんの「現代語古事記」がおすすめです。
旧皇族という独特の立場からの解説があり、 日本と皇室に対する愛に満ちた本です。
日本と皇室がきっと好きになると思います。
 
 
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