【90分で古事記②】天地開闢 イザナギとイザナミ あらすじ内容を解説!

 
90分で古事記 2/9回目(約6000字)
古事記上巻のあらすじ内容を9回で解説!
天地開闢 イザナギとイザナミの国生み神生み
 
 
今回からは、古事記上巻(かみつまき)のあらすじに入ります。あらすじと言っても今回は、 いろんな神様がひたすら登場するだけです。 もちろん全部は覚える必要ありません。
 
重要なのは イザナギイザナミです。 イザナギ以前の神様が どのようにして生まれたのか。 そしてイザナギ達が何を生んだのか。 これを意識して読んでみてください。 結論から言ってしまうと、日本の国土や神様のほとんどはイザナギの子孫になります。 
もう一つ重要なことが、イザナギは先に成った先輩神様たちの命令によって、「神生み』を行っているということです。 つまりイザナギが勝手にやっているのではなく、国作りはすべて天つ神(あまつかみ)みんなの合意なんだよ」と古事記は強調したいようです。
 
 
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天地開闢 造化三神と別天神

造化三神(ぞうかさんしん)と別天神(ことあまつかみ)

 
世界が初めて生まれた時の事を「天地開闢(てんちかいびゃく)」と言います。古事記では冒頭において、その天地開闢の様子が語られます。なお、天地開闢以前の世界は天も地上もない混沌のカオス状態が 、延々と続いていたと考えられていたようです。
 
以下、古事記冒頭の記述になります。
 
 
天地(あめつち)が初めて現れた時、 初めに高天の原(たかまのはら)に現れた(成った)のは、①天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)、次に②高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)、③神産巣日神(カミムスヒノカミ)が成りました。
 
 
 この三柱の神様は独神(ひとりがみ)で、 姿形がありませんでした。
 
 
この時、国土は水に浮く油のようで固まらず、 クラゲのように漂っていました。
 
 
さらに葦の芽が成長するように、④宇摩志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒコジノカミ)、⑤天之常立神(アメノトコタチノカミ)が成ります。 
 
 
この2柱も独神で、姿形がありませんでした。
 
 

〈①②③は覚えて④⑤は忘れて!〉

①②③の三柱の神様を「造化三神(ぞうかさんしん)と言い、「宇宙そのもの」といった存在になります。偉い神様なので名前だけでも覚えておいてください。①④⑤の神様は二度と登場しません。
 
アメノミナカヌシ
この神様は誕生後何もせずに消えてしまい、 その後登場することはありません。 宇宙の根源的な存在で、いろんなところに満ち溢れている象徴的な神様だと考えられています。
 
タカミムスヒ
天つ神(あまつかみ)の偉い神様。 性別はないが男性的。高天の原で重要な意思決定に参加。姿形はありませんが、アマテラスとよくいっしょに現れ議論にも参加します。
 
カミムスヒ
国つ神(くにつかみ)の偉い神様。 性別はないが女性的。出雲を中心に活躍し、オオクニヌシを支援します。
 
④⑤の神様は二度と登場しないので覚えなくていいです。
 
①~⑤の5柱(いつはしら)(神様は 一人二人ではなく柱(はしら)という単位で数えます)の神様は 男女の区別のない一人神で、 早い時期に成った特別な神様なので、「別天神(ことあまつかみ)」と呼ばれます。姿形のない(実体のない)神様とされています。
意外に思われるかもしれませんが 、古事記によると最初に現れる神様はイザナキでもアマテラスでもなく、「アメノミナカヌシノカミ」という神様になります。
 
 
 別天神(コトアマツカミ)
天之御中主神(アメノミナカヌシノカミ)
高御産巣日神(タカミムスヒノカミ)
神産巣日神(カミムスヒノカミ)
④宇摩志阿斯訶備比古遅神(ウマシアシカビヒコジノカミ)
⑤天之常立神(アメノトコタチノカミ)
 

 

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神世七代(かみよのななよ)

 
その後も次々と神が成り立ちます。
 
 
今度は⑦だけ覚えてください。
 
 
①②代目は 独神(ひとりがみ)ですが、③~⑦代目は男神と女神のセットになります。
 
 
それぞれ兄弟でありながら、夫婦という関係にもなります。
 
 
神世七代(かみよのななよ)
①代 国之常立神(クニノトコタチノカミ)
②代 豊雲野神(トヨクモノカミ)
③代 宇比地邇神(ウヒジニノカミ) / 須比智邇神(スヒチニノカミ)
④代 角杙神(ツノグイノカミ) / 活杙神(イクグイノカミ)
⑤代 意富斗能地神(オオトノジノカミ) / 大斗乃弁神(オオトノベノカミ)
⑥代 於母陀流神(オモダルノカミ) / 阿夜訶志古泥神(アヤカシコネノカミ)
⑦代 伊邪那岐神(イザナギノカミ) / 伊邪那美神(イザナミノカミ)
赤字の神様は非常に大事。オレンジの神様はちょっと大事です。
 
 
ここまでを神世七代(かみよのななよ)といい、 特定の親神を持たず自然発生的に成り立った神様になります。
 
 
一応名前を載せておきますが、 7代目以外は覚えなくていいです。
 
 
⑦代目のイザナギイザナミの神がとても重要なので、この神様だけは覚えておいてください。
 
 
日本の国土(葦原中国)も、 そこに住まう神様も 、イザナギイザナミの営みによって生み出されていくことになります。
 
 
最高神であるアマテラスも含め、この先に登場する神様の多くが、イザナギイザナミの子孫になります。
 
 
 
↓ ここは興味ある方だけどうぞ。 読み飛ばしても構いません。

〈つくる、うむ、なる、の違い〉

世界の創世神話によると世界や神の成立過程は微妙に異なります。それは「つくる、うむ、なる」という動詞の違いとして現れます。
旧約聖書では神(ゴッド)により世界が「創られる」様子が描かれています。人も動物も、この世のあらゆるものが神によって「創造」されています。「つくる」も「うむ」も 誰かが主体となって行う必要があります。
 
それに対し 古事記の「成る」は、 主体者がなく 自然発生的に現れる意味合いが大きいとされます。最初の神様も草や木の実が「なる」ように、自然発生的に「成り」立ちます。誰かによって作られるという考え方は取りません。
 
この考え方の違いは、住んでいる気候の違いが影響していると言われています。西洋のゴッドが誕生したとされる、生存競争の厳しい砂漠地帯では、生き物が自然発生するという考え方は生まれませんでした。この神様が「成る」という考え方は、 温暖で雨と太陽に恵まれ、生き物が次々に生まれるモンスーン地帯特有の発想のようです。 インドや日本に輪廻の思想が根付いたのと、似た理由になるのかもしれません。
 
 

イザナギとイザナミ

 
天津神(あまつかみ)の先輩神々の命令により、まず オノゴロ島(現実には存在しない島)を作って、 そこを拠点に日本の島や神様を生んでいくという流れになります。
 

オノゴロ島

※古事記をちょっと抜粋
 
天つ神( 高天の原の神々)はイザナキイザナミに対し、「 この漂っている国を固めて完成させなさい 」と命じ、天の沼矛(あめのぬぼこ)を与えます。
 
 
この命を受けてイザナキイザナミによる「国生み」と「神生み」が始まります。
 
 
まず2柱が天の浮橋(アマノウキハシ)に立って、あめのぬぼこでコオロコオロと下界の海をかき回して引き上げると、矛の先から塩が滴り落ち、島ができます。
 
 
これが「オノゴロ島」になります。
 
 
二柱は オノゴロ島に降り立つと、アメノミハシラと神殿を作りました。
 
 
以後2柱は このオノゴロ島を拠点に 「国生み」と「神み」を行っていくことになります。
※ 後に誕生する島々と異なり、この島だけは現実に存在しない島になります。
(下の動画を見ていただいた方が分かりやすいと思います)
 
 
 

二神の国生み

国生み」というのは 日本の国土を作ることになりますが、その「国生み」にあたって 二人の間にこのような会話がなされます。
 
 
イザナギ「 あなたの体はどうなってるの?」
 
 
イザナミ「 私の体には一箇所成り合わない(くぼんでいる)ところがあります。」 
 
 
イザナギ「 私の体には 一箇所成り余っている(出っ張っている)ところがある。 それでは私の成り余っているところを、あなたの成り会わないところに押し入れて、国を産んでみよう。 」
 
 
イザナミ「それはいいですね。」
 
 
 
なんとも生々しい表現ではありますが、 つまり日本列島というのは、 イザナギとイザナミの性行為によって生まれたことになります。
(でも表現がいやらしくないのが微笑ましいですよね。)
 
 
2柱の神は 次々と島を産んでいき、 大八島国(おおやしまのくに)と呼ばれる国土など、合計14もの島々を生み出しました。
(下の動画の方が分かりやすいと思います。)
 
 
イザナギとイザナミが生み出した国土
 
大八島
淡道之穗之狭別島(あわじのほのさわけのしま)→ 淡路島
伊予之二名島( いよのふたなのしま)→四国
隠伎之三子島(おきのみつごのしま)→隠岐諸島
筑紫島(つくしのしま)→九州
伊岐島(いきのしま)→長崎県の壱岐島
津島 (つしま)→長崎県の対馬
佐渡島(さどのしま)→ 新潟県の佐渡島
大倭豊秋津島(おおやまととよあきづしま)→畿内地域 もしくは本州
 
 
大八島の後に生まれた島
吉備児島→ 岡山県の児島半島
小豆島→ 淡路島の西の小豆島
大島→ 山口県の 周防大島
女島→ 大分県の姫島か
知訶島→ 長崎県の五島列島
両児島→ 五島列島南の男島と女島か
 
 
ここは北海道や東北を除く日本列島の主要な島が、イザナギとイザナミによって産み出されたことが分かっていただければ十分です。 細かい名前は覚える必要ありません。当時はまだ東北より北側には、統治が及んでいなかったのですね。日本列島にはもっと多くの島々が存在しますが、古事記ではこの14の島のみイザナギイザナミによって生み出されたことになっています。
 
 
● 古事記のものがたり①国生みとイザナミの死
制作Rakinasuchi さん 4分
古事記の原文に忠実ないい動画です。 動画の方が詳しくイメージしやすいと思います。よろしければご覧になってみてください。
 
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二神の神生み

 
国生み」を終えると、イザナギイザナミの神は、 大八島 に住まう神々を生んでいきます。二柱が共同(性行為)で生んだ神様は次の通り。住居や自然、生産に関する神様がメインになりますが、葦原中国(あしはらのなかつくに=地上)に住まう神様なので、すべて「国つ神(くにつかみ)」ということになります。色を変えた神様は少し重要です。
 
 
「神生み」によって生まれた神様
大事忍男神(オオコトノオシオノカミ)→ 神々の誕生の前触れの神
石土毘古神(イワツチビコノカミ)→ 岩と月の神
石巣比売神(イワスヒメノカミ)→ 岩と砂の女神
大戸日別神(オオトヒワケノカミ)→門の神
天之吹男神(アメノフキオノカミ)→屋根の神
大屋毘古神(オオヤビコノカミ)→家の神
風木津別之忍男神(カザモクツワケノオシオノカミ)→風神
大綿津見神(オオワタツミノカミ)→海神
早秋津日子神(ハヤアキツヒコノカミ)→河口の神
早秋津比売神(ハヤアキツヒメノカミ)→河口の女神
 志那都比古神(シナツヒコノカミ)→風神
久久能智神(ククノチノカミ)→木の神
大山津見神(オオヤマツミノカミ)→山神
鹿屋野比売神(カヤノヒメノカミ)→野の神
天鳥船神(アメノトリフネノカミ)→舟の神
大宜津比売(オオゲツヒメ)→穀物の神
火之迦具土神(ヒノカグツチノカミ)→火の神
※さらにハヤアキツヒコとハヤアキツヒメの間に八柱、オオヤマツミとカヤノヒメの間に八柱の神が生まれます。
 

〈重要度の高い神様だけご紹介〉

オオワタツミ(海の神)
ホオリ(山幸彦)の釣り針を探しを手伝う海の宮殿に住む神様。 トヨタマヒメやタマヨリヒメの父。血統上、初代神武天皇の祖父にあたります。
 
オオヤマツミ(山の神)
ニニギやスサノオなどに娘達を嫁がせるやり手の神様。 コノハナノサクヤやアシナヅチの親。山に関わる神の総元締めで、影響力の強い神様。 天皇家の寿命が短くなるのはこの神様の呪いだとされています。
 
オオゲツヒメ(穀物の神)
スサノオに食事を出してあげるも、難癖をつけられ殺される、恩を仇で返される神様。
 
ヒノカグツチ(火の神)
母イザナミの出産死の影響で、父イザナギに生まれた直後に殺されるかわいそうな神様。
 
 
色を変えた神様たちは少し重要なので、余裕のある方は覚えておいてください。 それ以外は二度と出てこない神様ばかりなので、覚えなくて結構です。
古事記ではこのように次々と神様が誕生し、全体では300柱ほどの神様が登場するそうです。
 
 

ヒノカグツチノカミ

 
イザナミヒノカグツチノカミを産んだ時に時に、 女性器に 深刻なやけどを負い、 その傷が元で命を落とします。
 
 
その死の直前のイザナミが、病床において嘔吐物、便や尿から六柱の神様を単独で生みます。
 
 
イザナギは「 愛する妻を 一人の子供によってなくしてしまうとは」と泣き、怒ってこのヒノカグツチを首を斬り、殺してしまいます。
 
 
このヒノカグツチを切ったとき、飛び散った血液や体からも多くの神様が生まれました。
 
 
この後に登場する 神様の多くが、イザナギかイザナミの子孫になります。
 
 
〈イザナギとイザナミの国生み神生みのまとめ〉
アマテラス、ツクヨミ、スサノオの三貴子(さんきし)は、次回「黄泉の国」から帰った後の「」で誕生します。
 

〈ちょっと大事な神様の紹介〉

タケミカヅチ(武神 雷神)
ヒノカグツチの飛び散った血液から生まれた神様の一柱。 出雲の国譲りで逆さまにした剣先にあぐらをかいて威圧する武闘派の神様。 藤原氏や中臣氏の祖神となる神様です。
 
 

〈我が子を殺すイザナギ… ちょっとひどい〉

ヒノカグツチは生まれてきただけで、 故意に悪さをしたわけではありません。 一応自分の子供です。 ちょっとひどい話です。 日本を作った神様なので、もう少しいいエピソードにしていただきたかったです。なお、古事記における神々は、不老ではありますが、不死ではありません。 
 
 

〈国作りは中断 再開はオオクニヌシ〉

天つ神(あまつかみ)の先輩神々の命令によって「国作り」を行っていたイザナギとイザナミですが、 イザナミの死により この後しばらく中断されることになります。 根之型州国(ねのかたすくに)から帰ったオオクニヌシによって引き継がれて「国作り」は完成し、 それを高天原の天つ神の御子に譲らせる(オオクニヌシの国譲り) という流れになります。
 
 
次回第3回目は イザナギが黄泉の国へ旅立ち、神話の主役達「アマテラス」「スサノオ」が誕生します。
 
 
 
〈おすすめ書籍〉
古事記は漫画から入るのが一番です。難解な字ずらだけを追っかけても、なかなかイメージが湧きません。里中満智子さんの漫画が原文に忠実で、かつ分かりやすくてオススメです。
 
 
 
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