シューベルトのアヴェ・マリア(エレンの歌第3番)[ドイツ語のカタカナ歌詞と和訳付き!]

ドイツ語の「シューベルトのアヴェ・マリア(エレンの歌第3番)」にカタカナ歌詞と日本語和訳を付けてみました。歌の解説と研究です。
 
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「シューベルトのアヴェ・マリア」をちょっと解説!

この曲について簡単に説明しますが、お急ぎの方はここは飛ばしてもらって構いません。
 
シューベルトのアヴェ・マリア」はウォルター・スコット(スコットランドの詩人)が作詞した「湖上の貴婦人(The Lady of the Lake)」という叙事詩に、フランツ・シューベルト(1797年~1828年)が1825年に曲付けした作品。もともと英語の詩をドイツ語に訳した上で作曲したものであり、曲自体のオリジナルはあくまでドイツ語です。なおこの曲は「湖上の貴婦人」の中において、エレンという女性が歌う曲の3曲目にあたるため、「エレンの歌第3番」とも呼ばれています。
 
この叙事詩の内容はおおよそ次の通り。
16世紀後半、身分を隠して狩りをしていたスコットランドの若い王・ジャコモ5世が道に迷い、反乱軍のダグラス伯爵の娘エレンに出会います。王は美しいエレンに一目惚れしますが恋人マルコムの存在を知ると諦め、身分を隠したまま彼女に指輪は渡し「何かあったらこれを王に見せて願いを伝えなさい」と伝えて去りました。
その後反乱軍は国王軍に鎮圧され、エレンの父はマルコムらと囚われの身となります。それを知ったエレンが聖母マリアに父親の無事を祈って歌ったのがこの「アヴェ・マリア」でした
エレンが指輪を持って王の元を訪ねると、そこで父を捉えていた国王が以前指輪を渡した青年だと知ります。指輪を見せたエレンに対し、国王はエレンに心惹かれながらも約束を守り父と恋人を解放し、その後エレンとマルコムは結ばれました。
 
 
このような内容となっていますが、このお話はウォルター・スコットの創作であって、聖書のエピソードとは直接関係がありません。そのためこの曲は、キリスト教会が公認する「讃美歌」や「聖歌」には含まれておらず、宗教音楽とはされていません。
 
しかしその後「アヴェ・マリア」で始まるカトリックのラテン語の祈祷文をそのままこのシューベルトの曲に載せて歌われるようになったため、原曲が宗教音楽としばしば誤解されることになったそうです。
 
現在はこのラテン語バージョンを聞くことが多いですが、ここでは原曲「ドイツ語のシューベルトのアヴェ・マリア」を紹介します
 
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エレンの歌第3番 カタカナ歌詞和訳

この曲は最初の「Ave Maria」のみラテン語で、他はすべてドイツ語です。ドイツ語はインド・ヨーロッパ語族の中でも英語と同じゲルマン語派に属するため、英語と割と近いとされていますが、異なる点もいくつかあります。まず、男性名詞・女性名詞・中性名詞の存在と、「はがのにを」に相当する格の存在。それから動詞は現在形が6つに活用し、語順は動詞が2番目以外は割と自由。といったものが挙げられます。
発音に関しては、一部特殊なルールがありますが概ねローマ字読みで、英語のようにスペルと発音がずれることはほとんどありません。特殊な発音のルールは下で別個に紹介します。
 

こちらはドイツ語の「アヴェ・マリア」

こちらはミルシアさんによるラテン語の「アヴェ・マリア」
 
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カタカナ歌詞と和訳①

英語作詞:ウォルター・スコット
ドイツ語訳:アダム・シュトルク
作曲:フランツ・シューベルト
 

アヴェ マリア ユングフラオ ミルト
Ave Maria! Jungfrau mild,
こんにちはマリア!寛容な乙女(マリア)よ、

エルヘーレ アイナ ユングフラオ フレーエン
Erhöre einer Jungfrau Flehen,
一人の生娘(エレン)の嘆願をお聞き入れ下さい、

アオス ディーゼム フェルゼン シュタル ウント ヴィルト
Aus diesem Felsen starr und wild
この固く荒々しい岩壁の中から

ゾル マイン ゲベート ツ ディア ヒンヴェーン
Soll mein Gebet zu dir hinwehen.
私の祈りが貴女のもとへ届きますように。

ヴィア シュラーフェン ズィッヒャー ビズ ツム モルゲン
Wir schlafen sicher bis zum Morgen,
私たちは朝まで安らかに眠ります、

オプ メンシェン ノッホ ゾ グラオザーム ズィント
Ob Menschen noch so grausam sind.
たとえ人々がどんなに残忍であっても。

オー ユングフラオ ズィー デア ユングフラオ ゾルゲン
O Jungfrau, sieh der Jungfrau Sorgen,
おぉ乙女(マリア)よ、この生娘(エレン)の心配事を見て下さい、

オー ムッター ヘーレ アイン ビッテント キント アヴェ マリア
O Mutter, hör ein bittend Kind!Ave Maria!
おぉ聖母(マリア)よ、一人の懇願する子(エレン)を聞いて下さい。こんにちはマリア!

単語の意味と発音①

Ave Maria:「こんにちはマリア、おめでとうマリア」(アヴェマリア)マリアはイエスの母マリアのこと。ここだけラテン語で他は全てドイツ語。
Jungfrau :「乙女、処女」(ユングフラオ)独語では「au」の綴りで(アオ)と発音。この単語は祈り手の「エレン」を指すこともあるが、祈られる側の「マリア」を指すこともあるため注意が必要。
mild :「寛容な」(ミルト)「b,d,g」の後に母音が続かない場合は濁らず清音(×ミルドとはならない)
Erhöre :「願いを聞き入れる」(エルヘーレ)「ö」は「オーウムラウト」という独語特有の発音で「オの口でエと発音する感じ」
einer :「一人の」(アイナー)不定冠詞(英語のa)。独語では「er」で(アー)と発音。
Flehen :「嘆願、懇願」(フレーエン)独語では「母音+h」で「長母音化」。
Aus :「~から」(アオス)独語では「au」の綴りで(アオ)と発音。
diesem :「この」(ディーゼム)英語のthis。独語では「s+母音」で濁って(zズ)の音、母音がなければ濁らず(sス)の音。
Felsen :「岩壁」(フェルゼン)
starr :「硬直した」(シュタル)
und :「~と」(ウント)「b,d,g」の後に母音が続かない場合は濁らず清音
wild :「荒々しい、野生の」(ヴィルト)独語の「w」は(ヴェ)の音。「b,d,g」の後に母音が続かない場合は濁らず清音。
Soll :「~してほしい」(ゾル)独語では「s+母音」で濁って(zズ)の音、母音がなければ濁らず(sス)の音。
mein :「私の」(マイン)独語では「ei」で(アイ)と発音。
Gebet :「祈り」(ゲベート)
zu :「~に」(ツ)
dir :「君に」(ディア)
hinwehen :「吹き飛ばす」(ヒンヴェーン)独語では「母音+h」で「長母音化」。
Wir :「私達は」(ヴィア)
schlafen :「眠る」(シュラーフェン)
sicher :「安全な」(ズィッヒャー)
bis :「~まで」(ビス)
zum :「~のために、~に」(ツム)前置詞zuと定冠詞demの融合形。
bis+zumで「~まで」
Morgen :「朝」(モルゲン)
Ob :「例え~であっても」(オプ)
Menschen :「人間」(メンシェン)
noch :「また、なおも」(ノッホ)
so :「そのように」(ゾ)
grausam :「残酷な」(グラオザーム)
sind :「ある、いる、です」(ズィント)英語のbe動詞「b,d,g」の後に母音が続かない場合は濁らず清音。
O :「おお」(オー)
Jungfrau :「乙女、処女」(ユングフラオ)
sieh :「見る」(ズィー)
der :「その」(デア)定冠詞。英語のthe。
Sorgen :「心配事」(ゾルゲン)独語では「s+母音」で濁って(zズ)の音、母音がなければ濁らず(sス)の音。
Mutter :「母、生母」(ムッター)聖母マリアのこと。
hör :「聞く」(ヘーレ)「ö」は「オーウムラウト」という独語特有の発音で「オの口でエと発音する感じ」。
ein :「一人の」(アイン)不定冠詞。英語のa。
bittend :「頼む」(ビッテント)「b,d,g」の後に母音が続かない場合は濁らず清音(×ビッテンド)。
Kind :「子供」(キント)「b,d,g」の後に母音が続かない場合は濁らず清音(×キンド)。

ドイツ語の発音についてはこちらのページにもう少し詳しくまとめてあります。

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カタカナ歌詞と和訳②

アヴェ マリア ウンベフレクト
Ave Maria! Unbefleckt!
こんにちはマリア!汚れのない女よ!

ヴェン ヴィア アオフ ディーゼン フェルス ヒンズィーンケン
Wenn wir auf diesen Fels hinsinken
私たちがこの岩盤の上に倒れる時

ツム シュラーフ ウント ウンス ダイン シュッツ ベデクト
Zum Schlaf, und uns dein Schutz bedeckt
眠りのために、そして貴女の保護で私たちを覆い下さっている時は

ヴィルト ヴァイヒ デア ハルテ フェルス ウンス デュンケン
Wird weich der harte Fels uns dünken.
私たちには固い岩盤も柔らかく思われるのです。

ドゥ レヒェルスト ローゼンデュフテ ヴェーエン
Du lächelst, Rosendüfte wehen
貴女が微笑むと、バラの香りがそよぎます

イン ディーザー ドゥムプフェン フェルゼンクルフト
In dieser dumpfen Felsenkluft,
この岩壁の隙間に、

オー ムッター ヘーレ キンデス フレーエン
O Mutter, höre Kindes Flehen,
おぉ聖母(マリア)よ、子の嘆願を聞いて下さい。

オー ユングフラオ アイネ ユングフラオ ルーフト アヴェ マリア
O Jungfrau, eine Jungfrau ruft!Ave Maria!
おぉ乙女(マリア)よ、一人の生娘(エレン)は呼んでいます!こんにちはマリア!

単語の意味と発音②

Ave Maria :「こんにちはマリア」(アヴェマリア)マリアはイエスの母マリアのこと。ここだけラテン語で他は全てドイツ語。
Unbefleckt :「真っ白」(ウンベフレクト)
Wenn :「~する時に」(ヴェン)独語の「w」は(ヴェ)の音。
wir :「私達が」(ヴィア)
auf :「~の上に」(アオフ)独語では「au」の綴りで(アオ)と発音。
diesen :「この」(ディーゼン)独語では「s+母音」で濁って(zズ)の音、母音がなければ濁らず(sス)の音。独語では「ie」で(イー)と発音。
Fels :「岩盤」(フェルス)
hinsinken :「深みにはまる」(ヒンズィンケン)
Zum :「~のために、~に」(ツム))前置詞zuと定冠詞demの融合形。
Schlaf :「眠り」(シュラーフ)
und :「~と」(ウント)「b,d,g」の後に母音が続かない場合は濁らず清音。
uns :「私達に」(ウンス)
dein :「君の」(ダイン)独語では「ei」の綴りで(アイ)と発音。
Schutz :「保護」(シュッツ)
bedeckt :「覆われた」(ベデクト)
Wird :「~だろう、~になる」(ヴィルト)「b,d,g」の後に母音が続かない場合は濁らず清音。
weich :「柔らかい」(ヴァイヒ)
der :「その」(デア)定冠詞。英語のthe。独語では「er」で(アー)と発音。
harte :「硬さ」(ハルテ)
Fels :「岩盤」(フェルス)
uns :「私達に」(ウンス)
dünken :「~と思われる」(デュンケン)「ü」は「ユーウムラウト」という独語特有の発音で「ウの口でイと発音する感じ」。
Du :「君が」(ドゥ)
lächelst :「微笑む」(レヒェルスト)「ä」は「エーウムラウト」という独語特有の発音で「アの口でエと発音する感じ」。
Rosendüfte :「バラの香り」(ローゼンデュフテ)「ü」は「ユーウムラウト」という独語特有の発音で「ウの口でイと発音する感じ」。
wehen :「吹く」(ヴェーエン)独語では「母音+h」で「長母音化」。
In :「~の中に」(イン)
dieser :「この」(ディーザー)独語では「s+母音」で濁って(zズ)の音、母音がなければ濁らず(sス)の音。
dumpfen :「鈍い」(ドゥンプフェン)
Felsenkluft :「岩の隙間」(フェルゼンクルフト)
O :「おお」(オー)
Mutter :「母」(ムッター)聖母マリアのこと。
höre :「聞く」(ヘーレ)「ö」は「オーウムラウト」という独語特有の発音で「オの口でエと発音する感じ」。
Kindes :「子供」(キンデス)
Flehen :「嘆願、懇願」(フレーエン)独語では「母音+h」で「長母音化」。
Jungfrau :「乙女、処女」(ユングフラオ)独語では「au」の綴りで(アオ)と発音。
eine :「一人の」(アイネ)独語では「ei」の綴りで(アイ)と発音。
ruft :「呼ぶ」(ルフト)
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カタカナ歌詞と和訳③

アヴェ マリア ライネ マークト
Ave Maria! Reine Magd!
こんにちはマリア!純潔な乙女(マリア)よ!

デア エアデ ウント デア ルフト デモネン
Der Erde und der Luft Dämonen,
大地や空中の悪魔らは、

フォン ダイネス アウゲス フルト ファーヤークト
Von deines Auges Huld verjagt,
貴女の瞳の恩顧によって追い払われ、

ズィー ケンネン ヒーア ニヒト バイ ウンス ヴォーネン
Sie können hier nicht bei uns wohnen,
彼らは今や私たちの近くに住むことができないのです。

ヴィア ヴォルン ウンス シュティル デム シックザール ボイゲン
Wir woll’n uns still dem Schicksal beugen,
私たちは平穏な運命に屈服しましょう、

ダー ウンス ダイン ハイルジャー トロースト アンヴェート
Da uns dein heil’ger Trost anweht;
私たちに貴女の神聖な慰めを与える時、

デア ユングフラオ ヴォレ ホルト ディヒ ナイゲン
Der Jungfrau wolle hold dich neigen,
貴女はこの生娘(エレン)に身を屈めさせて下さい、

デム キント ダス フューア デム ファーター フレート アヴェ マリア
Dem Kind, das für den Vater fleht.Ave Maria!
父のために嘆願するこの子(エレン)に。こんにちはマリア!

 

単語の意味と発音③

Ave Maria :「こんにちはマリア」(アヴェマリア)マリアはイエスの母マリアのこと。ここだけラテン語で他は全てドイツ語。
Reine :「純潔な」(ライネ)独語では「ei」の綴りで(アイ)と発音。
Magd :「乙女、処女」(マークト)「b,d,g」の後に母音が続かない場合は濁らず清音。
Der :「その」(デア)独語では「er」で(アー)と発音。
Erde :「大地」(エアデ)
und :「~と」(ウント)「b,d,g」の後に母音が続かない場合は濁らず清音。
Luft :「空中、空気」(ルフト)
Dämonen :「悪魔」(デモネン)「ä」は「エーウムラウト」という独語特有の発音で「アの口でエと発音する感じ」。
Von :「~のせいで」(フォン)
deines :「君の」(ダイネス)
Auges :「目、瞳」(アウゲス)
Huld :「恩寵」(フルト)「b,d,g」の後に母音が続かない場合は濁らず清音。
verjagt :「追い払われた」(ファーヤークト)
Sie :「彼らは」(ズィー)独語では「ie」で(イー)と発音。独語では「s+母音」で濁って(zズ)の音、母音がなければ濁らず(sス)の音。
können :「~できる」(ケンネン)「ö」は「オーウムラウト」という独語特有の発音で「オの口でエと発音する感じ」。
hier :「ここに」(ヒーア)
nicht :「~ない」(ニヒト)
bei :「~の近くに」(バイ)独語では「ei」の綴りで(アイ)と発音。
uns :「私達に」(ウンス)
wohnen :「住む」(ヴォーネン)独語では「母音+h」で「長母音化」。
Wir :「私達は」(ヴィア)独語の「w」は(ヴェ)の音。
woll’n :「~するつもりだ」(ヴォルン)
still :「平穏な」(シュティル)
dem :「その」(デム)定冠詞。
Schicksal :「運命」(シックザール)
beugen :「屈服する」(ボイゲン)独語では「eu」で(オイ)と発音。
Da :「その時」(ダー)
uns :「私達に」(ウンス)
dein :「君の」(ダイン)独語では「ei」の綴りで(アイ)と発音。
heil’ger :「神聖な」(ハイルジャー)
Trost :「慰め」(トロースト)
anweht :「吹く」(アンヴェート)独語では「母音+h」で「長母音化」。
Der :「その」(デア)定冠詞。
Jungfrau :「乙女、処女」(ユングフラオ)独語では「au」の綴りで(アオ)と発音。
wolle :「~するつもりだ」(ヴォレ)
hold :「優美な」(ホルト)「b,d,g」の後に母音が続かない場合は濁らず清音。
dich :「君を」(ディヒ)
neigen :「傾ける」(ナイゲン)
Dem :「その」(デム)定冠詞。
Kind :「子供」(キント)「b,d,g」の後に母音が続かない場合は濁らず清音。
das :「それ、これ」(ダス)
für :「~のために」(フューア)「ü」は「ユーウムラウト」という独語特有の発音で「ウの口でイと発音する感じ」。
den :「その」(デン)定冠詞。
Vater :「父」(ファーター)
fleht :「嘆願する」(フレート)独語では「母音+h」で「長母音化」。
 
 
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