ドイツ国歌を歌ってみよう![カタカナ歌詞和訳付き!]

ドイツ国歌の正式名称は「Deutschlandlied(ドイチュラントリート)」で、日本語に直すと「ドイツの歌」。

何のひねりもないタイトルですが、成立から現在に至るまでの歴史は紆余曲折があり、時代によって国歌の扱いは随分と変わりました。

そして現在この「ドイツの歌」は3番しか歌うことができません。

この3番の歌詞にカタカナの読みを付けてみましたので練習してみてください。

まずはその前に、なぜこんなことになっているのか、その歴史を簡単に説明します。

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ドイツ国歌の歴史をざっくり解説!

1番の歌詞がヤバい!

ドイツ国歌は詩よりも先にメロディーが先に成立します。

そのメロディーを作ったのが有名なフランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732-1809)。

ハイドン 出展:ウィキペディア

古典派クラシックの巨匠で、交響曲の父と呼ばれる人物です。

1797年、ハイドンは神聖ローマ帝国皇帝への国民の団結を促すため、フランツ2世に対し「神よ皇帝フランツを守りたまえ」を作曲します。

これは当時既に存在していたイギリス国歌「God save the King (神よ国王を守りたまえ)」をかなり意識して作ったと言われています。

確かにタイトルはほぼそのままです。

ホフマン 出展:ウィキペディア

1841年、アウグスト・ハインリヒ・ホフマン(1798-1874)が、「Deutschlandlied」(ドイツの歌)の歌詞を書き、ハイドンのメロディを借用しました。

彼も英国国歌の影響を受け、当時中小連邦国歌に分裂してバラバラだった、ドイツ民族の統一を願って詩を書いたと言われます。

その歌詞は次の通り。

1番
Deutschland, Deutschland über alles,
Über alles in der Welt,
Wenn es stets zu Schutz und Trutze
Brüderlich zusammenhält.
Von der Maas bis an die Memel,
Von der Etsch bis an den Belt.
Deutschland, Deutschland über alles,
Über alles in der Welt!
ドイツよ、ドイツよ、すべてのものの上にあれ
この世のすべてのものの上にあれ
護るにあたりて
兄弟のような団結があるならば
マース川からメーメル川まで
エチュ川からベルト海峡まで
ドイツよ、ドイツよ、すべてのものの上にあれ
この世のすべてのものの上にあれ

出展:ウィキペディア

2番
Deutsche Frauen, deutsche Treue,
Deutscher Wein und deutscher Sang
Sollen in der Welt behalten
Ihren alten schönen Klang,
Uns zu edler Tat begeistern
Unser ganzes Leben lang.
Deutsche Frauen, deutsche Treue,
Deutscher Wein und deutscher Sang!
ドイツの女性、ドイツの忠誠、
ドイツのワイン、ドイツの歌は
古からの美しき響きを
この世に保って
我々を一生の間
高貴な行いへと奮い立たせねばならぬ
ドイツの女性よ、ドイツの忠誠よ、
ドイツのワインよ、ドイツの歌よ
3番
Einigkeit und Recht und Freiheit
Für das deutsche Vaterland!
Danach lasst uns alle streben
Brüderlich mit Herz und Hand!
Einigkeit und Recht und Freiheit
Sind des Glückes Unterpfand.
Blüh’ im Glanze dieses Glückes,
Blühe, deutsches Vaterland!
統一と正義と自由を
父なる祖国ドイツの為に

それを求めて我らは皆で兄弟の如く
心と手を携えて努力しようではないか
統一と正義と自由は
幸福の証である
その幸福の輝きの中で栄えよ
父なる祖国ドイツ

 

この「ドイツの歌」の最大の特徴は1番の歌詞のヤバさです。これを分かりやすく言い換えると、

「東はポーランド、西はオランダ、北はデンマーク、南はイタリアまで、団結できれば全て俺たちのもの!ドイツ民族こそがこの世の最上位生物であり、世界を統べるにふさわしい!!」

この歌詞は決してナチスの時代に書かれたものではありません。あくまでホフマンは、広範囲に散らばる同じドイツ語を話す人々で統一国家を築きたかったということのようですが、これではドイツ民族と下僕たちであり、近隣諸国が黙っていないでしょう。ホフマンの願いが強烈過ぎたせいか、行き過ぎた歌詞が後に物議を呼びます。

一方で3番には「統一と正義と自由を父なる祖国ドイツの為に」という歌詞があり、ホフマンのドイツ統一への願いが込められています。

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歴史に左右されるドイツ国歌!

1871年にドイツ帝国が成立しますが、 ホフマンの詩は行き過ぎであるとの批判もあり、1918年の帝国崩壊まで別の歌を国歌として使用しました。

それがこちらの「皇帝陛下万歳」になります。

このメロディ聞き覚えありませんか?

 

 

実はこのメロディーこそがハイドンやホフマンが影響を受けた「God save the King(Queen)」であり、現在の英国国歌になります。

しかしイギリス国歌のパクリとの批判もあり、この歌はドイツ帝国では人気がありませんでした。

というか、どのみちイギリスの真似をするのですね。

 

その後ワイマール共和国時代(1919-1933)1922年に「ドイツの歌」は正式な国歌に制定されますが、ナチス政権時代(1933-1945)に 2番3番を禁止し、「1番と旗を高く掲げよという曲」のセットを実質的な国歌としました。

ナチスのドイツ民族優越と領土拡大主義が、「ホフマンの願い(1番)」と絶妙にシンクロしたようです。

そして45年にドイツが戦争で負けると、ドイツは東西に分断され、「ドイツの歌」は人種差別と世界制覇の象徴として連合軍に全面禁止されます。

しかし52年、ドイツ人のこの歌に対する愛着が強く、祖国統一を願う歌詞が書かれていることから、西ドイツのオリンピック復帰にあたり「ドイツの歌3番」だけが国歌として認められました。

そして90年の統一後も引き継がれて現在に至ります。

このような経緯があるため、現在国歌として歌えるのは「ドイツの歌の3番」のみとなります。

確かに3番には「統一と正義と自由を祖国ドイツの為に」という統一を願う歌詞があるため歌うことが許されましたが、1番が歌える日は永遠に来ないでしょう。

なお、2番は女性差別と解される可能性があったため正式には採用されなかったそうです。

 

作曲はしたものの別の曲が国歌として採用された時代、1番から3番までフルで歌えた時代、1番だけしか歌えなかった時代、そしてすべてを歌うことが禁じられた時代を経て、現在3番だけが歌える時代をとなっています。

これだけ時代によって扱いが変わった国歌も珍しいです。

波乱万丈のドイツの歴史をそのまま反映しているかのようです。

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ドイツの歌3番の歌詞と意味!

Einigkeit und Recht und Freiheit
Für das deutsche Vaterland!
Danach lasst uns alle streben
Brüderlich mit Herz und Hand!
Einigkeit und Recht und Freiheit
Sind des Glückes Unterpfand.
Blüh’ im Glanze dieses Glückes,
Blühe, deutsches Vaterland!
統一と正義と自由を
父なる祖国ドイツの為に
それを求めて我らは皆で兄弟の如く
心と手を携えて努力しようではないか
統一と正義と自由は
幸福の証である
その幸福の輝きの中で栄えさせよ
父なる祖国ドイツを栄えさせよ
Einigkeit :協調、団結、統一(アイニヒカイト)
und :~と、そして(英語のand)(ウント)
Recht :権利、正義(英語のright)(レヒト)
Freiheit :自由(英語のfreedom)(フライハイト)
Für :~のために(前置詞:英語のfor)(フューア)
「ü」はウーウムラウトと言い[y]「ユ」と発音
das : 定冠詞(英語のthe)(ダス)
deutsche  :ドイツの(ドイチェ)
Vaterland :祖国、父なる国(ファーターラント)
Vater :父(ファーター)
land :国(ラント)
Danach :それを求めて(ダナーハ)
lasst :~させる(助動詞:英語のlet)(ラスト)
uns :私達に(英語のus)(ウンス)
alle :すべての(英語のall)(アレ)
streben :努力する(シュトレーベン)
Brüderlich :兄弟のような(ブリューダーリヒ)
mit :~と、を持って(前置詞:英語のwith)(ミット)
Herz :心(英語のheart)(ヘルツ)
und :~と、そして(英語のand)(ウント)
Hand :手(英語のhand)(ハント)
Sind :~である「1,3人称複数」(英語のbe動詞are)(ズィント)
des :定冠詞(英語のthe)(デス)
Glückes :幸運、幸福の(グリュッケス)
Unterpfand :制約、印(ウンタープファント)
unter :「下に」を意味する接頭辞(英語のunder )(ウンター)
pfand :保証、印(プファント)
Blüh’ :栄えよ(Blühen:栄えるの命令形)(ブリュー)
im :~の中で(前置詞inと定冠詞demの融合系)(イム)
Glanze :栄光、輝きの(グランツェ)
dieses :その、この(指示冠詞:英語のthese)(ディーゼス)
Blühe :栄えよ(Blühen:栄えるの命令形)(ブリューエ)
deutsches Vaterland :ドイツの祖国を(ドイチェスファーターランド)
※一部自信ありません、違ったらごめんね。

(ベルリンの分断と統一のシンボル「ブランデンブルク門」1791年ラングハンス作  4頭馬車に乗るのは「勝利の女神ビクトリア」シャドウ作)

 

「ドイツの歌」を歌ってみよう!

 

Nationalhymne der Bundesrepublik Deutschland.svg
出展:commons.wikimeddia.org

Einigkeit und Recht und Freiheit
   アイニッヒカイト・   ウント・    レヒト・   ウント・   フライハイト
Für das deutsche Vaterland!
 フュア・ ダス・     ドイチェ・       ファーターラント
Danach lasst uns alle streben
   ダーナハ・      ラスト・   ウンス・  アレ・   シュトレーベン
Brüderlich mit Herz und Hand!
   ブリューダーリヒ・  ミット・  ヘルツ・  ウント・   ハーント
Einigkeit und Recht und Freiheit
  アイニッヒカイト・   ウント・    レヒト・   ウント・    フライハイト
Sind des Glückes Unterpfand.
 ズィント・デス・   グリューケス・   ウーンタープファーント
Blüh’ im Glanze dieses Glückes,
ブリュー・ イム・   グランツェ・  ディーゼス・  グリューケス
Blühe, deutsches Vaterland!
 ブリューエ・      ドイチェス・        ファーターラント

ドイツ国歌楽譜

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