【20分で新約聖書】あらすじ・登場人物・内容を解説!

最後の晩餐と12使徒
新約聖書のあらすじ・登場人物・内容・そして宗教上の意味を、重要な論点に絞ってご紹介します。
なお、「あらすじ」から読んでも大丈夫ですので、お急ぎの方は目次で「あらすじ」まで飛んでいってください。
 
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ざっくり解説 聖書ってどんな本?

ざっくり言ってしまうと、聖書というのは、「ある基準」に沿って集められた、古代イスラエルの地方に存在した、様々な文書を寄せ集めたものになります。
 
期間は、大体紀元前11世紀ごろから、期限1世紀ごろにかけて書かれた文書と言われています。
 
その基準が「次の基準」だと言われています。
 
神の霊の導きの下に書かれた本。
 
人を教え戒め、義に導く訓練をする上に有益な本。
 
これは新約聖書のパウロからテモテへ宛てた手紙の一節でもあります。
 
少し抽象的で難しいですが、つまりこういうことになります。
 
「人を正しい方向へ導いてくれるもの、かつ、神を礼賛するもの。」
 
 
この基準のもとに、古代イスラエル地方に存在した、様々な文書を寄せ集めて1冊の本にしたもの。
 
それが聖書になります。
 
その結果、旧約聖書は39、新約聖書は27の文書から構成されることになりました。
 
現在の新約聖書以外にも、イエスや使徒について書かれたものなどは存在しますが、これらの基準を満たさないものは、聖書からは外されています。
 
 
なお、「新約聖書」というのは神との新しい約束という意味合いであり、「旧約聖書」神とユダヤ民族の古い約束という意味合いになります。
 
「新約聖書」はキリスト教独自の聖典になり、ユダヤ教では「新約聖書」を認めていません。
 
この「新しい約束」の意味を理解するには、旧約聖書の「古い約束」と、その後の「ユダヤ人の歴史」を理解しておく必要があります。
 
こちらの動画がわかりやすいので、少しご覧になってみてください。新約聖書の説明は5分58秒からになります。
なお、お急ぎの方は「あらすじ」まで飛ばしてもらって構いません。
 
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旧約聖書全体のおおざっぱな流れ

聖書
旧約聖書の流れを簡単におさらいしておきます。
 
「絶対神ヤハウェ」が、世界を創造し人間を作ります。
 
エジプトでの奴隷状態を脱したユダヤの民が、預言者モーセを通じて、「神ヤハウェ」との間に、「神の戒めを守る代わりにパレスチナの地を得る」契約を結びます。(これが古い約束「旧約」と言う意味になります)
 
 
そして契約通り、パレスチナの地にユダヤ王国を建設しました。
 
 
しかしやがて、「神ヤハウェ」への信仰は薄れ、ユダヤ王国は分裂し、他国から占領されてしまいます
 
 
ユダヤ人たちは自分たちが神との契約を破り、信仰を忘れたことに対して、神が罰を与えたのだと考えました。
 
 
この信仰を忘れた者たちに対して、預言者たちが次々に警告を発するようになります。
 
 
「悔い改めて神の戒めを守れ」と。
 
 
しかしユダヤ人は、他民族から迫害を受け続きます。
 
 
するとユダヤ人たちには、やがてこの世の終わりが来るという「終末思想」が蔓延します。
 
 
罪に満ちたこの世は、創造主である神によって一旦滅ぼされる。
 
 
そして神は、新しい善なる理想的の世界を作り、選ばれた人のみが導かれるだろう。
 
 
そして神は、そのための「救世主」を遣わすはずだ
 
 
その救世主は英雄「ダビデ王」の末裔から現れるだろう
 
 
ユダヤ人たちは、このように考えるようになりました。
 
 
その考えは神の言葉として、旧約聖書の預言書に刻まれていくことになります。
 
 
…そして紀元前4年頃、預言通り本当に救世主(イエス)が現れる。(新約聖書の話)
 
旧約聖書全体はこのような流れになっています
 
 
 

登場人物の紹介!

「新約聖書」のあらすじと内容を見る前に、登場人物を簡単にご紹介します。こちらも飛ばしてもらって構いません。参考程度にどうぞ。
 

イエス

 イエス・キリスト
よく「ナザレのイエス」と言いますが、名前は「イエス」で、「ナザレ」は「イエス」の住んでいた地名になります。「キリスト」というのはギリシャ語で「救世主」を意味し、ユダヤ人の言語であるヘブライ語では「メシア」といいます。
「イエス」が誕生したのは紀元前4年。聖母マリアを通して「神ヤハウェ」の子として生まれたとされています。聖書によるとアダムから数えて62代目、ダビデから数えて28代目の子孫であり、旧約聖書でその出現が預言されていた救世主(キリスト=メシア)であるとされています。つまりイエスはユダヤ人でユダヤ教徒、そしてダビデの末裔ということになります。
イエスは数々の奇跡と、愛と赦しの教えで、多くの人を救済しましたが、権力者の反感を買い処刑されます。「彼が復活・昇天したことで死後の新たな世界(天国)が開かれた」「神を信じるものは平等に救われる」といった「キリスト教の教義」が、後に弟子たちによって作られていきました。
 
 

十二使徒(イエスの弟子たち)

お急ぎの方は、こちらの動画は飛ばしてもらって構いません。
 
最後の晩餐と12使徒
 
ペトロ ガラリヤの漁師。イエス第一の弟子で十二使徒の統率者。イエスから天国の鍵を授かり(イエスから教会への権限委譲の意味)、初代教皇になります。ローマで布教活動を行いますが、ローマ皇帝ネロにより逆さ十字により処刑。バチカンのサンピエトロ大聖堂は、「聖ペテロ」の意味。
アンデレ ガラリヤで漁師をしていましたが、兄ペトロに誘われイエスに同行します。後に小アジアやギリシャで布教活動行いますが、ローマ総督により投獄され、X字型の十字架で処刑。
大ヤコブ ガラリヤの漁師。ゼベタイの子でヨハネの兄。ペテロ・ヨハネとともにイエスに最も近しい人物とされています。ヤコブは使徒に2人いますが、弟子入りの早かったヨハネの兄を大ヤコブといいます。初期エルサレム教会の中心人物ですが、ヘロデ王により処刑。
ヨハネ
ガラリヤの漁師で大ヤコブの弟。イエスに最も愛され、イエスの死後は聖母マリアの世話もしました。小アジア布教中にローマ皇帝に捕まり、パトモス島に流刑。「ヨハネの福音書」と、「ヨハネの手紙一、二、三」「ヨハネの黙示録」の著書とされています。十二使徒の中で最も若く、使徒では唯一天寿を全うしました。(ヨハネ以外はかなり残酷な殉教遂げています)
フィリポ
ガラリヤの漁師で、初期にイエスに従った弟子の1人。バルトロマイの友人でイエスたちの食料調達係を担当。ギリシャなので布教活動をしますが、石打の刑で殉教します。 
バルトロマイ
フィリッポに導かれて弟子入り。聖書ではあまり語られませんが、イエスに「真のイスラエル人」と賞賛されます。広い範囲で布教活動を行いますが、アルメニアで生きながら皮を剥がされ殉教します。
マタイ
本名は「レヴィ」。小ヤコブの兄弟で徴税人。マタイは使徒であるのと同時に「マタイの福音書」の著者でもあります。各地で布教を行った後、トルコで殉教したとされています。
小ヤコブ アルファイの子で、マタイの兄弟。使徒にヤコブが2人いますが、後に弟子入りしたマタイの兄弟の方を小ヤコブと呼びます。ペテロに「主の兄弟」と呼ばれ、イエスに容姿が似ていたそうです。初代エルサレム司教になり、熱心に布教をしますが、エルサレム神殿の屋根から突き落とされ殉教。
タダイ(ユダ)
タダイの伝承は混乱しており、小ヤコブの子ともイエスの親族とも言われます。実は「ユダ」という別名がありますが、「イスカリオテのユダ」と区別するために「タダイ」と呼ばれます。「ユダの手紙」の著者。アルメニアで布教活動行いますが、斧で殺害され殉教。
トマス
ガラリヤの漁師で、ディティモ(双子)と呼ばれました。使徒でありながらイエスの復活を信じようとしない、疑り深い性格の持ち主(「トマスの不信」と呼ばれました)。東方で布教活動行い、南インドにおいて槍で刺され殉教。
熱心党のシモン
シモンも聖書では多くは登場しません。シモンという名前がこの地方に多いため、頭に「熱心党」がつけられたそうです。なお、「熱心党」というのは「反ローマ帝国の過激派組織」のこと。タダイとペルシャへ布教を行いそこでノコギリで挽かれて殉教。
イスカリオテのユダ 銀貨30枚でイエスをユダヤ教の権力者たちに売り渡した、伝説の裏切り者。直後に後悔をして自殺。イスカリオテは彼の出身地。
 

福音書の著者

マタイ 福音書自体には著者に関する記述はありませんが、金銭や徴税人に関する記述が多く、旧約聖書についても詳しいことなどから「マタイ」であると推定されているようです。
マルコ 「マルコ」は「ペトロ」の通訳を務めた弟子で、「イエス」と直接面識はないとされています。「ペトロ」から「イエス」の生涯について聞き取った話を福音書に記したとされています。
ルカ 「パウロ」の布教旅行にも付き添い「ルカの福音書」と「使徒言行録」を執筆。シリア人の医者で、高い教養を身に付けていたと言われています。
ヨハネ 十二使徒最年少で「ヨハネの福音書」「ヨハネの手紙一、二、三」「ヨハネの黙示録」の著書とされていますが、否定的な学者も多い。
 

パウロ

もともとローマ市民権を持つ、ベニヤミン族のユダヤ人。熱心なユダヤ教徒で、キリスト教徒を取り締まる立場の人間だったが、その途中イエス・キリストの「パウロ、なぜ私を迫害するのか」という声とともに目が見えなくなる。しかし、キリスト教徒「アナニア」の祈りによって、再び目が見えるようになると、熱心なキリスト教徒に生まれ変わります(パウロの回心:紀元34年頃)。パウロはキリスト教初期の最大の伝道者となり、キリスト教を大きく発展させた功労者になりました。新約聖書に記載されている「手紙」の多くが「パウロ」が教団の支部へ書いた手紙になります。60年代後半に、皇帝ネロに捕まり処刑されたとされます。
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新約聖書の構成

 
新約聖書
新約聖書は27の文書から構成され、大きく4つに分類されます。
 
(1) 4つの福音書(4人の視点から見たイエスの言行録)
 
(2) 使徒言行録(イエス死後の十二使徒の伝導の様子)
 
(3) 手紙(キリスト教伝道者たちの仲間へ宛てた手紙)
 
(4) ヨハネの黙示録(ヨハネが垣間見た遠い将来の世界の終末の様子)
 
新約聖書の目次はこのようになっています。「手紙」が大半を占めているのが分かりますか?でも実際の「手紙」のボリュームは新約聖書480ページのうち、180ページほど。あくまで新約聖書の中心は最初の4つの福音書になります。
 新約聖書の目次
  

あらすじ

新約聖書のあらすじと内容を、重要な論点に絞ってご紹介します。
 
まずは個別の深いエピソードよりも、新約聖書の構造と全体の流れを掴むことを優先してみてください。
 
 

福音書(ふくいんしょ)

※福音(ふくいん)とは良い知らせの意味。イエスの生涯を4人の視点から語ったものであり、内容はほとんどが重複しています。新約聖書の中心的な位置づけになります。
 

受胎の告知

受胎の告知・ダヴィンチ
ダビデの末裔であるマリアとヨセフが婚約すると、結婚前に「天使ガブリエル」が現れ、「神の子を身ごもったこと」を伝えます有名な処女懐胎の説話です。ルカの福音書には次のように記されています。
天使ガブリエルはナザレ(地名)のマリアのところに来て言った。
 
「おめでとう、恵まれた方。主があなたと共におられる。」
 
マリアはこの言葉に戸惑う。
 
天使「マリア、恐れることはない。あなたは神から恵みをいただいた。あなたは身ごもって男の子を産むが、その後イエスと名づけなさい。…」
 
マリア「どうしてそのようなことがあり得ましょうか。私は男の人を知りませんのに。」
 
ダヴィンチの「受胎の告知(↑)」は、この場面を描いたものになります。
 
紀元前4年にイエスが誕生すると、旧約聖書で出現が予言されていた「メシア(ヘブライ語で救世主の意味)」誕生に、不安を覚えたヘロデ王は、ベツレヘムの幼児を皆殺しにします。しかし天使の知らせでそれを察知したマリアたちは、一旦エジプトへ避難します。
 
「西暦」というのはイエスが生まれた翌年を元年となるように作った暦なりますが、実はイエスが生まれてから500年以上経ってから作られたものになります。その後、資料の解釈に誤りがあり、誕生年に間違いがあることに気づきましたが、暦を修正することができなくなったため、イエスの誕生年を紀元前4年にずらすことになりました。なお、12月25日はイエスの誕生日を記念する日であって、誕生日ではありません。イエスの死から300年以上経ってから強引に推定した日であって、誕生日はだれも知りません。
 
※福音書には、イエスの幼少期から20代の記録はほとんどありません。
 
 

洗礼と悪魔の誘惑

30歳を超えたイエスは、ヨルダン川において洗礼者ヨハネ(使徒ヨハネとは別の人物)から洗礼を受けます。これによりイエスに神の聖霊が宿ったとされます。
 
洗礼を受けるとイエスは、荒野で40日間の断食を行い、悪魔から3つの誘惑を受けます。 
1 「神の子ならば石をパンに変えてみろ」
2 「私(悪魔)を拝むなら、この国の一切の権力と繁栄を与えよう」
3「神の子ならばエルサレムの神殿から飛び降りてみろ」
 
悪魔は聖書の言葉を用いてイエスを誘惑しましたが、イエスも聖書の言葉を巧みに用いて悪魔の誘惑を退けました。そして自らが救世主(メシア)であることを証明したとされます。
※カラマーゾフの兄弟にも引用される有名な場面です。
 
 
 

イエスの教えと奇跡

悪魔の誘惑を退けたイエスは、愛の教えと奇跡による人々の救済の旅を始めます。
 
そしてイスラエル各地を回り、信者や弟子を増やしていきました。
 
イエスが行った代表的な説教と奇跡をご紹介します。
 
説教
イエスの説教
イエスの愛の教えと思想がよくわかる、有名な「山上の説教」をご紹介します。
 
心の貧しい人々は幸いである、天の国はその人たちのものである。
 
悲しむ人々は幸いである、その人たちは慰められる。
 
中略
 
心の清い人々は幸いである、その人たちは神を見る。
 
平和を実現する人々は幸いである、その人たちは神の子と呼ばれる。
 
義のために迫害される人々は幸いである、天の国はその人たちのものである。
 
私のためにののしられ、迫害され、見に覚えのないことであらゆる悪口を浴びせられた時、あなた方は幸いである。喜びなさい。大いに喜びなさい。天には大きな報いがある。あなた方よりも前の預言者たちも、同じように迫害されたのである。
 
このようにイエスは「愛と赦しと天の国の教え」によって人々を救済しようとしました。
 
 
 
奇跡
詳しく見てみたい方は、動画をご覧になってみてください。
 
イエスが行ったとされる代表的な奇跡をご紹介します。
 
1 病気を治した
高い熱にうなされる女性の枕元に立ち、熱を叱りつけると、熱は去り彼女は立ち上がった。
重い皮膚病にかかった人に、イエスが触れ「 よろしい。清くなれ」というとたちまち皮膚病が去った。
 
2 嵐を沈めた
弟子たちとともに湖を船で渡る際、湖に激しい嵐が起きます。イエスは風と湖を叱ると、すっかり静かになった。
 
3 盲人を治す
イエスが2人の盲人の目に触り「あなた方の信じているとおりになるように」と言われると、2人は目が見えるようになった。
 
4 耳が聞こえない人を治す
イエスが、耳が聞こえず下の回らない人の両耳に指を差し入れ、唾をつけてその人の舌に触れ、「開け」というと、たちまち耳が開け、舌のもつれが解け、はっきり話すことができるようになった。
 
5 5千人に食べ物与える
「5つのパンと2匹の魚」だけを取り、賛美の祈りを唱え、5,000人の群衆に与えると、全ての人が満腹した。
 
6 湖の上を歩く
イエスが湖の上を歩いていた。それを見たペトロは真似をするが溺れてしまう。イエスは「信仰の薄いものよ。なぜ疑ったのか」といった。
 
7 復活
イエスは十字架で処刑されますが、3日後に復活し、40日間弟子たちと過ごした後、天に登っていったと言われます。
 
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ユダヤ社会からの反感と迫害

イエスは弟子たちを引き連れ、3年ほどイスラエル各地を回り、説教と救済の旅を続けました。
 
そしてユダヤ、非ユダヤにかかわらず、人を愛し相手の罪を許すイエスの教えは、多くの人から指示されました。
 
さらには形式主義に陥っていた当時のユダヤ教も批判し、民の支持を集めます。
 
しかしその行いは時の権力者の反感を買いました。
 
イエスたちは、次第にユダヤ社会から迫害の対象になっていきます。
 
 
 

最後の晩餐と処刑

権力者たちのイエスに対する包囲網が強まるなか、イエスは覚悟を持ってユダヤ教の本拠地エルサレムに入ります。
 
エルサレムに入って5日目の木曜日の晩、弟子たちともに過越(ユダヤ人の祭日)の食事(最後の晩餐)を取りました。
 
その席でイエスが口を開く。
 
「あなた方のうちの1人が私を裏切ろうとしている。」
 
弟子たちは、心を痛めて
 
「主よ、 まさか私の事では」
 
と代わる代わる言い始めた。
有名なダヴィンチの「最後の晩餐(↑)」はこの場面を描いています。
 
イエスは
 
「人のことを裏切るそんなものは不幸だ。生まれなかった方が、そのもののためによかった。」
 
と言いました。
 
 
その晩、イエスのもとに祭祀長や長老たちとともに、大勢の群衆が武器を持って訪れてきた。
 
その中にはイスカリオテのユダもおり、ユダはイエスに近づき接吻をする
 
すると群衆はイエスを捉えて連れて行きました。
 
「イスカリオテのユダ」は銀貨30枚でイエスを祭祀長たちに売り、接吻はイエスを確かめるための合図でした。
 
この時弟子たちは皆、イエスを見捨てて逃げてしまいました。
 
 
翌日の金曜日、イエスはゴルゴダの丘において十字架にかけられ亡くなりました。
 
この死をもって、世の中の人々が生まれながらに持つ罪を贖ったと言われています。そしてそれが救世主としての使命だったとされています。
 
 
 

復活と昇天

墓に葬られたイエスは3日後に復活し弟子たちの前に現れます。
 
イエスは40日間地上にとどまり、神の国について弟子たちと語り合い、天へ昇っていきました。
 
ここまでが福音書のお話になります。
 
 
 

復活と昇天の意味

この復活によって、イエスを信仰する全ての人々を対象とする、「人と神」の「新たな契約」が結ばれたとされています。
 
つまり、イエスの死によって死後の世界である「天国」への扉が開かれた。
 
イエスの教えを信じ、イエスを信仰するものは、その罪が許され「天国」へ行くことができる。
 
このような教義が、後に弟子たちによって作られていくことになります。
 
 
 

使徒言行録

「使徒言行録」は「ルカの福音書」の続編としてルカが書いたものとされています。
その内容はキリスト教の最初期の様子であり、特に2人の使徒「ペテロ」と「パウロ」の活躍を中心に描いています。
 
 
イエスは40日間地上にとどまり、神の国について弟子たちと語り合い、天へ昇っていきました。
 
ペトロは各地で次のような説教を行い、布教活動を行います。
 
イエスこそが、預言者たちによって到来が預言された「救世主(キリスト)」である。
 
イエスが十字架によって処刑され、復活することによって、「救世主メシア」となった
 
神はイスラエルを悔い改めさせ、その罪を許すためにイエスを復活させた。
 
イエスを信じるものであれば、異教のものであっても洗礼を受け、罪の許しを受けることができる。
 
しかし旅先では、ユダヤ人にたびたび妨害され、迫害されます。
 
 
キリスト教徒が取り締まりに行った厳格なユダヤ教徒「パウロ」は、失明しますが、イエスの弟子のアナニアの祈りで、視力を回復します。すると熱心なキリスト教伝道者となり(パウロの回心)、初期キリスト教布教における最大の功労者となりました。
 
 
 

手紙

使徒たちは各地の教会に宛て手紙を書きました。信仰心を確かめあったり、お互いを励ましたり、正しい教義を確認しあったりした他、間違いの指摘やアドバイスなども手紙で行いました。
 
手紙はキリスト教初期における、各地の教会同士の情報伝達や布教活動に、とても大きな力を発揮したと考えられています。なお、手紙の大半はパウロにより書かれたとされています。
新約聖書27文書のうち21文書が手紙になります。
 
 

パウロ書簡

 
ローマ信徒への手紙
コリントの信徒への手紙一
コリントの信徒への手紙二
ガラテヤの信徒への手紙
エフェソの信徒への手紙
フィリピの信徒への手紙
コロサイの信徒会の手紙
テサロニケの信徒への手紙一
テサロニケの信徒への手紙二
テモテへの手紙一
テモテへの手紙二
テトスへの手紙
フィレモンへの手紙
 以上13の書簡がパウロにより書かれたとされたとされています。
これに加え「ヘブライ人への手紙」もパウロが書いたと言う説があります。
 

その他の手紙

ヤコブの手紙(主の兄弟ヤコブ)
ペトロの手紙一・二(ペトロ)
ヨハネの手紙一・二・三(ヨハネ)
ユダの手紙(タダイ)
 ※「福音書」はイエスの言行録が中心になりますが、「使徒言行録」「手紙」の内容は弟子たちによる布教活動が中心となります。しかし各地で激しい迫害を受け、動画にもあるように、ヨハネ以外の使徒は全員非業の死を遂げることになりました。
 
 

ヨハネの黙示録

新約聖書最後の文書になります。
十二使徒の中で唯一生き残った、使徒ヨハネが、迫害を受けパトモス島に島送りにされている最中(最晩年)に書いたとされています。ヨハネは将来に起こるとされる、終末の様子を見ることを許されました。「ヨハネの黙示録」はその様子を描いた「新約聖書」唯一の「予言書」になります。
そこにはイエスの再臨、サタンとの激しい戦い、神の裁き、サタンに支配された邪悪な王国と悪の滅亡、イナゴの襲来、そして地球の歴史の最後に起こる出来事などが書かれています。神の救いを拒否した人たちは、永遠に苦しむことになり、神の救いを受け入れた人たちは新天地で、神と共に生きることができる。このようなことが書かれています。
 
以上が「新約聖書」のあらすじになります。この後は、旧約聖書・新約聖書・コーランの位置付けと、各宗教の成り立ちを簡単に解説します。お時間のある方は、続きもどうぞ。
 
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旧約聖書・新約聖書・コーランの位置づけを整理!

 
ユダヤ教・キリスト教・イスラム教の成り立ちをざっくり解説します。
 

ユダヤ教

 
「旧約聖書」によると、ユダヤ民族と「神ヤハウェ」が、モーセを通じて契約を結びます。(紀元前14世紀頃)
 
 
神の戒律を守る代わりに、パレスチナの地を与える、といった契約です。
 
 
ユダヤ教では、ユダヤ人こそが神ヤハウェに選ばれた特別な民族であると考えるため、最終的に神に救われるのもユダヤ民族だけと考えます。
 
 
あくまでユダヤ人だけが救われる民族宗教であるため、世界中に広まる事はありませんでした。
 
 
 
 

キリスト教

 
これに対しユダヤ人であるイエスは、「神を信じさえすれば誰でも平等に救われる」と説きました。(紀元30年頃)
 
 
後に、このイエスの言行録などを記録したものが「新約聖書」となります。
 
 
キリスト教では、ユダヤ教のヤハウェとイエス・キリスト、そして精霊を合わせて神とする三位一体という考えを取ります。
 
 
「神(イエス・キリスト)」を信じさえすれば誰でも救われるため、場所や民族を問わず世界中に広まり、世界宗教となりました。
 
 
なお、ユダヤ人たちはイエスを救世主とは認めておらず、「新約聖書」も認めていません。
 
 
ユダヤ人たちは、今でも「救世主メシア」を待ち続けています。
 
 
 

イスラム教

これに対し預言者ムハンマド(マホメット)は、さらに神(アッラー)の言葉を預かります。(紀元610年頃)
 
 
モーセやイエスがもたらしたメッセージはそれ自体は確かに楽しかった。
 
 
しかしユダヤ教徒もキリスト教徒も、神の言うことを全く聞いていない。
 
 
だからこそ預言者ムハンマドを通じて、神(ヤハウェ=アッラー)の言葉を伝える。
 
 
そしてムハンマドが受けた預言を、後に編集したものが「コーラン」になります。
 
 
これらの宗教はこのような位置づけになります。
 
 
なお、それぞれ神の呼び名は異なりますが、原則として同じ神様(ユダヤ教のヤハウェ)を指します。
 
 
 

キリスト教のその後

度重なる迫害にもめげずに、布教活動を続けた結果、313年キリスト教は「ミラノ勅令」によりローマ帝国公認の宗教となります。
 
その後、キリスト教はローマ教皇をトップとするヒエラルキー体制を固め、権威集中と布教拡大路線を取ります。
 
その結果教会は腐敗し、聖書の解釈は次々と歪められていきます
 
神の偶像崇拝(宗教画)に始まり、聖母マリアや殉教した聖人の崇拝、罪を清める死後の世界「煉獄」の設定、しまいにはお金で罪を軽くできる「免罪符」の販売まで始めます。
 
それに待ったをかけたのが、「ルターの宗教改革」でした。
 
 
ルターは「そんなこと聖書のどこにも書いてないじゃないか!」と主張し、聖書に忠実な宗派であるプロテスタントが生まれます。
 
キリスト教は、このように「聖書の解釈」をめぐって次々と分裂していきました。
 
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聖書のおすすめの読み方!

そこで聖書を読むときは、次の点に注意して読んでみてください。ルターの言うとおり、確かに書いてないですから、面白いと思いますよ。
 
  1. ローマ教皇をトップとするヒエラルキーを作れとは書いていない。
  2. 布教活動のために殉教した聖者を敬えとは書いていない。
  3. 神曲に描かれている罪を清めるための場所、煉獄(れんごく)については何も書かれていない。
  4. お金で罪を軽減できる「免罪符」についてはもちろん書かれていない。
  5. モーセが受けた十戒(旧約聖書出エジプト記の話)では偶像崇拝が禁止されいる※。(原則としてユダヤ人だけでなく、キリスト教徒も守らなくてはいけないとされています)
 ※5に「偶像崇拝禁止」とありますよね。つまりここで紹介した「受胎の告知」も「最後の晩餐」も、本当は描いてはダメなんですよ。
 
 

聖書のボリューム

新共同訳の聖書を数えてみたところ、旧約聖書が1,502ページ(約4分の3)、新約聖書が480ページ(約4分の1)で合計1,982ページになりました。
 
ただ聖書は、1ページあたりの字数が多いです。
 
計算してみると、1ページの文字数が1104字もあり、一般的な文庫本の2倍近くの文字数があります。
 
単純計算をすると次のようになります。
 
新約聖書の文字数
1,104字 × 480ページ= 529,920文字
旧約聖書の文字数
1,104字 × 1,502ページ= 1,658,208文字
 
聖書全体では
1,104字 × 1,982ページ= 2,188,128文字
 
ボリュームはかなり大きいです。
 
仮に1日中読書した場合でも、新約聖書で2日間、旧約聖書で6日間、合計8日間ほどの日数がかかることになると思います。
 
 

漫画版がオススメ

聖書には文字しか書いていません。
 
登場人物も多く、話も複雑な上、現代の日本人にはなじみのない話ばかりです。
 
とても難しいので、漫画版をあわせて読んでみることをおすすめします。
 
こちらの「まんがで読破 新約聖書」は値段もお手頃で、要点も絞ってくれていて分かりやすかったです。
 
よろしければどうぞ。
 

 おわり

「新約聖書」のあらすじと内容を、重要な論点に絞って解説しました。
 
 
しかしこれだけ膨大な量の聖書を、たった1日で理解するのは、そもそも無理なある話です。
 
 
よろしければブックマークをして、何日かに分けて、ゆっくり整理してみるようにしてみて下さい。
 
 
そしてもし余裕があるのであれば、実際に読んでみることをおすすめします。
 
こちらでは旧約聖書や神曲についても解説しています。全体像を把握してみたい方や、これから読んでみようと考えておられる方におすすめです。
管理人ハクの大好きな本をご紹介します。興味ある方はこちらもどうぞ。
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