富士山は傘をかぶることで有名です。
富士山のふもとでは「富士山が傘をかぶると、翌日雨が降る」といった話もあります。
本当なのでしょうか?
なぜそのようなことが起こるのでしょうか?
ここでは富士山に「笠雲」と「つるし雲」が発生するメカニズムを、ご紹介します。
そして本当に雨は降るのか、天気の予測はできるのか、これについても検証してみたいと思います。
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富士山の笠雲のできかた
約1年ぶりのドーン!巨大傘雲付き。。 #富士山 pic.twitter.com/xkCPoasZGJ
— カゴノトリ (@notori_ys) 2018年2月10日
「笠雲」(かさぐも)とはレンズ雲の一種で、山頂付近に現れる帽子をかぶったような形の雲のこと。
気流が山を越えるとき、強制的に上昇することにより、冷却され雲が発生します。
気流が山頂を越えて山麓に降りてくる時は、逆に温度が上がり雲が消滅します。
そのため山頂付近では雲が止まって見えますが、常に新しい雲に入れ替わっています。
主に富士山のような孤立峰でよく発生します。
図で説明するとこのようになります。
こちらの動画を見ると、実際に雲が入れ替わっている様子がよくわかると思います。
投稿者:beaphoto1
富士山に笠雲ができやすい理由
富士山はきれいな円錐形をした単独峰です。
日本列島に低気圧が接近し、暖かく湿った空気が入ってくると、
湿気を含んだ風は、周りの山に遮られることなく、富士山に直接ぶつかります。
富士山にぶつかった湿気を含んだ風は、その時の気象条件により、様々な形の雲に姿を変えます。
その富士山に発生する代表的な雲が、「笠雲」と「つるし雲」です。
富士山にぶつかって強制的に冷やされた湿気を含んだ風は、山頂付近にのみ「笠雲」となって現れます。
この時山頂を通り過ぎた上昇気流が、ロール状に回転して、風下に雲を作ることがあります。
これが「つるし雲」になります。
こちらの動画を見ていただいた方が、分かりやすいと思います。
投稿者:AQUA Geo Graphic
「つるし雲」は、巨大な凧(たこ)が空高く舞いあげられたように同じ場所に浮かぶ雲で、円筒状、楕円状、翼状など、さまざまな姿を見せてくれます。
このつるし雲が観測されるのは平均で月1回程度、発生する時間も長くて数分程度と言われています。
麓の方でもあまり見られないそうです。
出典:富士山測候所御殿場基地事務所
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笠雲の天気への影響
富士山の周辺では、こんな言い伝えがあります。
「富士山が傘を被れば明日は雨」
「1つ傘は雨」「二重傘は風雨」
つまり富士山が傘を被れば、近いうちに雨が降ることをほのめかしているわけですが、
本当にその通りなるのでしょうか。
実際このような統計が残っているそうです。
「笠雲」がかかった場合 | 24時間以内に雨が降った確率は70〜75%。 |
「笠雲」と「つるし雲」が同時に現れた場合 | 24時間以内に雨が降った確率は80〜85% |
信頼性はかなり高いようです。
統計的に気象庁発表の天気予報の的中率は約80%と言われています。
天気予報といい勝負みたいですね。
この信頼性の高さから、富士山にかかる雲は、古来より「観天望気」(かんてんぼうき)の指標として使われてきました。
「観天望気」というのは、風や雲など大気の状態を観測して、天気を予測すること。
富士山に発生する雲は、とても珍しい現象を示すため、地元の住民たちは、富士山の雲を見て天気を予測しました。
なお、富士山のふもとでは「笠雲」は大変縁起の良いものとされています。
高い確率で雨が降ってしまうんですけどね…
地震雲との噂も…
「富士山に笠雲が発生すると地震が起きる」
どこかでこんなことを聞いたことはありませんか?
東日本大震災の5日前に富士山で傘雲見た北海道で起きたM6.5の地震の何週間か前に富士山で笠雲を見た
といったようなお話です。
つまり富士山の傘雲は「地震雲」なのではないか、とする説です。
これに関してはいろんな説がありますが、よくささやかれているのが、
「地震の直前は断層に圧力がかかり、その圧力で電磁波が発生して、何らかの雲が発生するのではないか」
といったものになります。
本当にそんなことがあり得るのでしょうか。
現在地震の予兆と雲の発生については、科学的に根拠は認められていません。
それどころか「地震雲」という言葉すら、気象学にはありません。
特に富士山の傘雲については、既にここでもご説明したように、気象的に説明ができるので、地震とは関係ないと考えるのが一般的です。
…でも100%否定しきれているわけでもないのも事実ですよね。
今後どうなるのでしょうか。
近い将来、巨大地震の予測のため、富士山の「観天望気」(かんてんぼうき)が行われる日は来るのでしょうか…
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