日商簿記検定は、商工会議所が実施する簿記の検定試験になります。
資格には大きく「国家資格」「公的資格」「民間資格」がありますが、
日商簿記検定はいわゆる「公的資格」に該当します。
2級の基準は「商企業および工企業における経理担当者として必要な高校程度の商業簿記及び工業簿記に関する知識を有していること」。
いわゆる難関試験ではありませんが、難易度はかなり高い試験になります。
そして税理士、公認会計士といった難関国家資格への足掛かりにもなる、将来性も人気も非常に高い資格です。
ここでは日商簿記2級の概要と合格のコツ、独学でのおすすめ勉強方法やテキストについてご紹介します。
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目次
概要
日商簿記2級の受験科目は3級の商業簿記(60点)に加え、新たに工業簿記(40点)が加わります。
制限時間は2時間で、合格基準は70%以上。
受験料は4,720円になります。
試験の実施は毎年2月(第4日曜日)、6月(第2日曜日)、11月(第3日曜日)の年3回。
申込期間は概ね本試験日の2か月半から1月半前まで。
合格発表は本試験の約1か月後になります。
2021年度の簿記2級の実施日は次の通りです。
回数 | 試験日 | 申込期間(※目安) |
第158回 | 2021年6月13日(日) |
4月上旬頃~5月中旬頃 |
第159回 | 2021年11月21日(日) |
9月上旬頃~10月中旬頃 |
第160回 | 2022年2月27日(日) |
12月上旬頃~1月中旬頃 |
※申込方法には郵送申込・窓口申込・ネット申込がありますが、申込期間と申込方法は受験する商工会議所によって異なります。事前に必ず受験地の商工会議所をチェックしてください。
こちらで各商工会議所での申込方法と申込期間を検索することができます。
受験者数は平均で5〜6万人ほどといったところ。
過去の受験者数と合格者数はこのようになっています。
回・実施日 | 申込者数 | 実際受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
147(2017.11.19) | 63,757名 | 47,917名 | 15,075名 | 21.2% |
146(2017.6.11) | 58,359名 | 43,767名 | 20,790名 | 25.0% |
145(2017.2.26) | 78,137名 | 56,530名 | 15,075名 | 25.0% |
144(2016.11.20) | 72,408名 | 56,530名 | 7,588名 | 13.4% |
143(2016.6.12) | 58,198名 | 44,364名 | 11,424名 | 25.8% |
142(2016.2.28) | 90,693名 | 70,402名 | 10,421名 | 14.8% |
141(2015.11.15) | 76,207名 | 59,801名 | 7,042名 | 11.8% |
140(2015.6.14) | 62,473名 | 47,480名 | 16,395名 | 34.5% |
139(2015.2.22) | 71,969名 | 55,225名 | 12,054名 | 21.8% |
138(2014.11.16) | 70,235名 | 54,188名 | 14,318名 | 26.4% |
137(2014.6.8) | 54,773名 | 40,330名 | 13,958名 | 34.6% |
136(2014.2.23) | 73,679名 | 55,960名 | 23,254名 | 41.6% |
135(2013.11.17) | 77,760名 | 60,377名 | 13,601名 | 22.5% |
134(2013.6.9) | 58,206名 | 42,703名 | 5,920名 | 13.9% |
133(2013.2.24) | 76,069名 | 57,898名 | 27,538名 | 47.6% |
出典:商工会議所の検定試験
簿記2級の難易度
一般に日商簿記2級の合格率は30%前後と言われています。
しかし試験のたびに難易度が大きく変動し、当たり外れが大きいのも特徴です。
合格率が50%近くまで優しくなることもあれば、10%前後まで難化することもあります。
平成14年以降もっとも優しかったのが、
平成25年2月の47.6%
逆に最も難しかったのが、
平成16年6月の5.7%
ここまで合格率が変動してしまう理由は、簿記検定は相対評価ではなく、あくまで絶対評価(70点を超えたかどうか)だからということになります。
合格には運の要素も少なからず働くようですね。
できれば、上位10%に入るほどの実力をつけた状態で、試験に挑みたいところです。
簿記検定のススメ
一般に特に明確な目標もなく、とりあえず資格を取得しようとするのは、あまりおすすめできません。
本来資格は自分の目指すべき将来をしっかり考えて、そのキャリアプランに応じて、必要なものを取得すべきです。
しかしこの簿記検定に関しては、少し事情が異なります。
明確な目標がなくても、とりあえず取得しておいてもいい資格、と言っていいと思います。
その理由を一言で言ってしまうと、
「つぶしがきくから」
例えば、自分の進むべき道がまだ決まっていない学生さんなどの場合、自分がどの分野に進むにせよ、必要となる可能性の高い知識を学ぶことができるといえます。
同じくつぶしのきく資格として、ITパスポートや秘書検定などもおすすめです。
また簿記を早い段階で勉強しておけば、税理士や会計士といった、会計系の難関国家資格への足がかりにもなります。
ITパスポートと合わせて中小企業診断士という道もありますね。
いずれにせよ簿記の知識は、社会人の必須知識です。
早い段階で習得する事は、社会に出たときに大きなアドバンテージになるだけでなく、その後の人生の可能性を大きく広げてくれることになると思います。
簿記2級は、まだ明確な目標が決まっておられない学生さんや、手ごろな自己啓発を考えておられる社会人の方に、特におすすめしたい資格です。
必要勉強時間
必要勉強時間は、勉強開始時点においてどの程度簿記の力があるかによっても変わってきます。
一般的には全くの初学者であれば、合格に必要な時間は200時間前後が目安。
以前簿記を少し勉強したことがある方、もしくは3級を受験されたことがある方であれば、150時間程度でも合格可能と言われています。
しかし簿記2級の合格率の変動は激しく、高い確率で合格へ持っていくには、上位10%に入るほどの実力まで高めておきたいところです。
一発で合格するためには、250時間以上の勉強時間を用意して、処理速度と正確性を可能な限り高めておくことをおすすめします。
ただし、これは「サボらなければ」「勉強がすべて予定通りに進めば」の話です。
何らかの受験を経験されたことがある方であれば、これを予定通りこなすことが、どれだけ難しいことか想像に難しくはないと思います。
少し早めに勉強始めて、遅くとも試験開始の1週間前までには、合格ラインの学力に到達しておきたいところです。
余裕を持った学習計画を組んでください。
独学は可能?
可能です。
しかしスクールに通った方が、確実に勉強時間が短縮でき、合格率も高められると思っていただいていいと思います。
プロに任せた方が、効率が高まるのは当然です。
独学で勉強する場合は、少なからず非効率的な勉強に走らざるをえないことを自覚しておいてください。
非効率になる部分は、勉強時間でカバーです。
スクール組よりも、勉強時間を多めに用意する必要があると心得ておいてください。
それが独学者の運命です。
遅くとも3ヶ月前、できれば4〜6ヶ月前から勉強を開始することをおすすめします。
特に独学は、なかなか予定通りには進みませんから。
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独学用のおすすめテキスト
スクールやテキスト選びのポイント2つ。
- 簿記、会計に強い学校であること
- 簿記検定の合格実績とノウハウを持っていること
スクールやテキストを選ぶ際はこれを基準にしてみるといいと思います。
オススメは大原とTACです。
会計系の難関資格である税理士や公認会計士は、この2校が2強です。
迷ったらどちら、このどちらかにしていいと思います。
ネットスクールもわかりやすく無駄のないテキストでした。
ここでは分かりやすさで定評があり、かつコスパも高い、TAC出版の「すっきりわかるシリーズ(滝澤ななみ著)」をご紹介します。
スッキリわかる日商簿記2級商業簿記(すっきりわかるシリーズ) [ 滝澤ななみ ] 1540円(税込)
スッキリわかる日商簿記2級商業簿記講義DVD(120分×7本) 5500円(税込)
スッキリわかる日商簿記2級工業簿記(すっきりわかるシリーズ) [ 滝澤ななみ ] 1540円(税込)
スッキリわかる日商簿記2級工業簿記講義DVD(120分×5本) 5500円(税込)
スッキリとける 日商簿記2級 過去+予想問題集 1540円(税込)
TACから出版されている、滝澤ななみさんの「すっきりわかるシリーズ」がおすすめです。こちらのテキストの特徴は、ストーリー仕立てで分かりやすい説明とお手頃価格。とても人気の高いシリーズになります。別売りとなっているDVD(5500円)は、それぞれのテキストに準拠したものになっています。講師はTACの高橋靖明(やすあき)先生。必ずしも購入する必要はありませんが、このお値段で通信講座に近い環境を実現でき、勉強の負担軽減と勉強時間の短縮、さらには挫折のリスクも減らしてくれます。TACで簿記2級の講座を受講すると10万円近くかかります。決して高いとは思いません。無理をせずDVDをご活用されることをおすすめします。
※参考までにTACに通学された場合のお値段も紹介しておきます(時期により若干変動します)。以下合格のための一般的なコースの比較になります。
3級(全19回) | 2級(全57回:簿記初学者対象) | |
教室講座 | 24,300円 | 89,000円 |
web通信講座 | 19,900円 | 78,800円 |
DVD通信講座 | 34,800円 | 95,000円 |
ここではTAC出版の「すっきりわかるシリーズ」をご紹介しましたが、TAC、大原、ネットスクールであればどの教材であっても、教材による失敗はないと思います。ただし、商業簿記と工業簿記で違う教材を使ったり、途中から教材を変えるようなことはしないでください。非効率な上に失敗受験になる可能性が高いです。1度教材を決めたら、その教材を信じて、徹底的に反復練習してください。全体をまんべんなく回すことを意識すると、苦手項目が生まれにくく、合格の確率も高まります。
日商簿記3級の教材と勉強方法についてはこちらで紹介しています。
短期合格のコツは基礎にあり!
これは簿記に限った話ではありませんが、どんな勉強も基礎が大事です。
途中で分からなくなって挫折する人の多くは、基礎をおろそかにしているケースが少なくありません。
基礎が固まっていない上に、さらに応用的な知識を上積みしようとすると、高い確率で途中でわからなくなり挫折します。
合格への1番の近道は、基礎をしっかり固めること。
基礎の習得に時間をかけることだと思っていただいていいと思います。
これは中小企業診断士、税理士、公認会計士試験といった難関試験でも同じです。
このような難関試験で、いわゆる短期合格される方は、ほぼ例外なく最初に徹底的に基礎固めを行います。
試験慣れしている彼らは、それが1番の近道だということを知っています。
短期合格の秘訣は基礎固めです。
まず基礎の習得に時間と集中力を割いてください。
それが合格への1番の近道になります。
簿記の勉強は理屈よりも慣れることが大事!
一般的に簿記の試験というと、電卓を叩く計算のイメージが強いかと思います。
ですが簿記の勉強において大切な事は暗記。
反復練習でやり方を丸ごと覚えてしまうことです。
簿記などの制度会計の分野は、理屈よりも慣れることが大事です。
特に独学の場合、理解にこだわると、いつまでたっても勉強が進まないといったジレンマに陥ることがあります。
極端なことを言うと、理解をしていても仕分けが浮かばなければ問題は解けません。
逆に理解はイマイチでも、仕分けさえ浮かべば問題は解けてしまいます。
理解がいらないわけではありませんが、理屈よりもまずはやり方を覚えてしまった方が、上達は早いです。
テキストを回すこと! 反復練習のススメ!
「処理方法」を覚えるためには反復練習が不可欠です。
テキストの1周目の勉強では、必ず2日以上に分けて最低3回は反復練習をしてください。
この「処理方法を反復練習によって覚える」という作業は、どんなに頭のいい人でも必ず時間がかかります。
ここに近道はありません。
ここで手を抜くと、次から次へと入ってくる新しい知識に対応できなくなり、勉強するのが嫌になります。
典型的な挫折のパターンへ入ります。
テキスト1周目の反復練習は、必ず時間をかけて、知識に定着させてください。
簿記の勉強には必ず時間がかかります。
たまに1ヵ月未満の短期合格をされたと言う話も聞きます。
がむしゃらに勉強することによって、結果的に短期合格をすることもあります。
諦めずに最後まで粘る事は大切ですが、それでは結局運まかせの博打になってしまいます。
万人に再現性のある方法でもなく、まして狙ってやるようなことではありません。
試験までまだ時間があるのであれば、まずは勉強時間を十分に確保すべきです。
その上で、テキストの反復練習にじっくりと時間をかけてください。
そしてできれば本試験1週間くらい前までには、合格レベルに到達することを目標にしてください。
特に独学者の場合、結局消化不良のまま本試験を迎えてしまうケースが非常に多いです。
充分注意してください。
処理速度と正確性を上げる方法
処理速度と正確性は必ず低下する!最低3回はテキストを回すこと!
簿記の処理速度や正確性は、様々な要因によって変動します。代表的なものは次の通り。
- 知識の量や理解度
- 反復練習した量
- 最後に問題やテキストを確認してから経過した時間
仮に合格レベルまで簿記の力を高めたとしても、
時間の経過とともに処理速度や正確性は確実に低下します。
どんなに頭のいい人であっても、必ず低下します。
簿記の勉強は忘れては覚え直すの繰り返しです。
一度反復練習をして「身に付けた処理方法」は、定期的にテキストを回して知識の最定着を図る必要があります。
本試験までにテキストは最低3回、できれば4回以上回すことを目標にしていただきたいです。
問題やテキストから遠ざかると、処理速度や精度は必ず低下します。
個別問題と総合問題のバランスが大事!
もう一つ注意しておきたいのが、個別問題と総合問題のバランス。
総合問題は個別問題の集まりです。
ある程度慣れてくると模擬試験でも合格点を取れるようになります。
総合問題さえ解いていれば、とりあえず現状の力は維持できるだろう、と考えがちですが、実はこれが大きな落とし穴です。
総合問題ばかり解いていると、気づかないうちに処理速度と正確性が低下してしまいます。
個別問題もバランスよくといてください。
そして必ずテキストに戻って、個別の処理方法の最定着を測って下さい。
これは多くの人がはまる罠です。
本試験の1週間前(できれば3日前)からテキストの最終チェックと基本的な個別問題(この時点で難解な問題に手を出して時間を消耗するのはNGです)の最終チェックを必ず行ってください。
そのためには普段テキストを回しているときに、「最後の3日間でチェックすべき個別問題とテキストの内容」をすべてピックアップしておくことです。
これが本試験において「処理速度と正確性をピークにもっていくコツ」です。
まとめ
簿記検定はつぶしが効き、税理士などの難関試験への足がかりにもなります。
独学は可能ですが、スクールに通うよりも非効率的になり、多くの時間を用意する必要があります。
スクール、テキストは簿記試験の実績の高い大原、TACがおすすめ!ネットスクールもわかりやすい。
極端な短期合格は目指すべきではありません。
十分な時間を設けて、まずは基礎を固めることが大事。
テキストの1周目は、2日以上に分けて、3回以上反復練習してください。
テキストは本試験までに最低3回転以上回すこと。
個別問題と相互問題のバランスも大事です。
テキストと個別問題のチェックを怠ると、力は必ず低下します。
最後の三日間でチェックすべき個別問題とテキストの内容をピックアップしておき、最終チェックを行うことが、「処理速度と正確性をピークにもっていくコツ」です。
独学は孤独で長い戦いなります。
モチベーションの維持もとても難しいです。
自分の学力に不安を感じて、多くの方が途中で勉強やめてしまいます。
誰でも1度や2度は勉強をやめたくなる時期は必ずやってきます。
でもあきらめないで踏みとどまってください。
計画通りにコツコツと続けていれば、力は必ずついていきますから。
最後は根性も大事です。
ラスト1週間に学力と集中力がピークを迎えるように、うまくコントロールしてがんばり抜いてください!
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